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サブタイトルを3.5にするか悩みました。

 少女は目を覚ました。一張羅である着物が所々破けているのに気付き、眠っていた間の記憶を遡る。

 彼はまだ状況があまりわかっていないようだ。苦労をかけて申し訳ないと心の中で謝った。詫びも兼ねて僅かに戻った妖力で着物の修繕を始める。

「私が直接説明してやれれば……」

 しかしそれは叶わない。今の彼女には彼に何かを伝えるだけの力はない。

「申し訳ないがまだまだ苦労をかけるだろうな」

 ちょうど着物の修繕が終わったので、彼が行こうとしてた場所まで移動しておこうと思い立ち上がる。

「やっぱり(ゆき)やん。久しぶりやな」

 背後から声がかかる。聞き覚えのある声だと思い振り返ると、数十年ぶりに見る顔があった。

 焦茶に茶色で模様が描かれた浴衣に身を包み、艶のある茶色い髪に混ざった猪の耳と腰のあたりから覗く尻尾がぴょこぴょこと動いている。一見すると少女のようであるが、本人曰く雄らしい。

「やはりあれは猪緒(いお)だったか」

「えっ、気付いてたん? 実はボクも一瞬雪がいた気がしてんけど雪ほどの妖がこんなとこ来るわけないし、雰囲気もなんかちょっとちゃうかったから違うと思ってん。でもやっぱり気になってな。見に来たら大当たり!」

「相変わらずよく回る口だな。私も猪緒がこのような場所に来ているとは思わなかった」

「久しぶりに恋人に会えたんやから饒舌になるのはしゃあないやん。ところでなんでこんなとこに来たん? 雪が遅れを取るようなやつおらんやろ?」

「恋人になった覚えはない。数年前この身体の主である少年に恩ができてな。守るために憑いていたのが裏目に出てしまった」

「……へぇー、なるほどな」

 ふと思い立つ。猪緒に彼の手助けを頼めばいいのではないか。妖は気まぐれなやつが多いが、猪緒のことは信用している。

 それにこの森でふらふらしてるのだから暇を持て余してるに違いない。

「それはさておき、今私は力のほとんどを失っていてな。もうじき眠る。次に目を覚ます時は少年だ。彼はここが日本だと思っているようだから状況を説明して生活の手助けをしてやってくれないか?」

 返答がないので猪緒のほうを見ると、何やら難しい顔をしている。

「どうした?」

「え? いや、何でもない。雪が寝てる間危なくなったら助けたらええんやろ。任せといて! 大船に乗ったつもりでいてくれてええよ!」

「本当に聞いて……」

 急な眠気が襲う。

「すまない、頼んだ」

 そう言って彼女は眠りについた。



「人間助けるのはあんま気が進まんけど雪の身体やしな。まあでもそんな危ないことにはならんやろ」

「……よし! 人里まで連れていくか! 人間ならたぶん人里行ったほうがええやろし。疚しいことはなんもない」

 そう言って、眠っている少女を背負い暗闇に消えていった。

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