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プロローグ(2)

「やっと見つけたぞ! 観念しろ!」

 背後から聞き覚えのある声が聞こえた。

 振り返ると朝の2人組が険しい顔をしてこちらを見ている。辺りを見回すが他に人の気配はない。

 こんな場所でこの2人組といる今の状況が怖くなり、俺は逃げようと踵を返した。

「逃がすか!」

「正体を現せ!」

 男達は訳の分からないことを言っているが無視する。不審な人間には関わりたくない。

 そのとき何か軽いものが背中に当たった。それと同時に胸のあたりが疼く。身体の奥から何かが出てくるような感覚を覚え、立っていられず膝をついた。

 痛みと不快感で喉の奥から声にならない叫びが漏れる。

(このまま死ぬのかな)

 そう思ったとき、急に身体が勝手に動き出した。ふらりと立ち上がり男達の方へ歩いていく。

 男達はそれに気付き慌てた様子でこちらを向いた。

「貴様らはどうして私たちを狩ろうとする。何も害していないではないか。」

 少女のような声が自分の口から発せられたことに驚く。意識を向けるとさらに自身の身体の変化に気付いた。

 髪が伸びているせいか頭が少し重く、視線は低くなっている。さらには服も着物のようなものになっており、胸のあたりが重く圧迫感があった。

(なんだこれ……!?)

 しかし俺の叫びは声にならず、眼前では俺の身体を動かしている誰かと男達が睨み合っている。

「貴様ら妖は存在自体が害悪! 害悪を滅ぼさんとする我らが正義だ!」

「左様、その少年から離れて消えるがよい!」

 以前ならこの男達のことを頭のおかしい人達だと思い流していただろう。しかし今この状況で流すことはできなかった。

 こいつらの言ってることが嘘じゃないなら、俺の身体は妖に乗っ取られているということだろうか。

「呼び起こし、無理矢理乗っ取らせて力を使わせた挙句、今度は離れろだと? そんな一度にできるわけないだろう。力が戻ったら離れてやるから、暫く待っておれ。」

「戻ってからでは力を使わせた意味がなくなるだろう。妖の頭ではそんなこともわからないのか。」

「離れられぬというなら仕方あるまい。その少年ごと封印させてもらう。殺されないことをありがたく思うんだな。」

 耳を疑う。この男は今何と言っただろうか。俺ごと封印するだと? 封印とはどのようなものなのだろう。暗い祠に閉じ込められるのか。それとも地中に埋められるのか。

 いずれにせよ仕方ないで済むわけがない。

(やめろ! やめてくれ!)

 やはり声は届かない。しかし代弁するように妖が声を荒げた。

「貴様ら正気か! この子は人間だぞ! 力が戻ったら離れてやるから……っ! 身体が動かない……何をした!?」

「妖の言うことなんぞ信用できるか。命が取られないことに感謝して大人しく封印されろ。」

 その瞬間男達の方から強い光が発せられ、その光は身体を刺すような痛みに変わった。

(このようなことになってしまい申し訳ない)

 意識を手放す直前、少女の声が聞こえた気がした。

次話から本章になります。

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