表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/20

8

 案内された部屋の広さは6畳ほど。畳まれた布団、姿見、小さな座卓と座椅子が置かれている。

 抱いていたウリを下ろすと、部屋の隅のほうに歩いて行き腰を下ろした。

 自身の姿が気になり姿見の前に立つ。そこに映った姿に思わず見入ってしまう。

 癖のない長い黒髪。綺麗な白い肌にぱっちりとした二重の目。唇はふっくらとしており鼻筋は通っている。

「綺麗……」

 思わず声が出てしまう。

(当たり前やん)

 背後から声が聞こえた気がして振り向く。しかし当然ながら、そこには大きな欠伸をするウリしかいなかった。

 やることもないので座椅子に座ってウリを撫でる。その手触りの良い毛並みを撫でていると心地がよく、うつらうつらとしてしまう。



「昼餉の用意ができたわよ」

 声が聞こえて目を覚ます。うつらうつらとしている間に眠っていたようだ。

「ごめんなさい。おやすみだったかしら」

「いえ、そんなことないです! すぐに向かいます」

 口元に涎が垂れていることに気が付き、慌てて手で拭う。

「焦らなくて大丈夫よ。ウリちゃんの分もあるから一緒にいらっしゃい」

「すみません……。ウリの分もあるって。ほら行こう」

 伏せて目を閉じていたウリを軽く揺する。ウリは身体を起こすときこそ面倒くさそうであったが、良い匂いがしたのかすぐに軽い足取りで部屋を後にした。

 コハクさんについて居間へ行くと、ちゃぶ台の真ん中に土鍋がある。端には2人分の茶碗と散蓮華、床には大きめの器が置いてあった。

「雑炊を作ったの。沢山あるから好きなだけ食べてくれて構わないわ。もし余っても兄さんが帰ってきたら食べるし、なくなったらまた作るから。あと、ウリちゃんが食べる分はその器に取ってあげてね」

「わかりました。……わぁ、美味しそう」

 蓋を開けると沢山の野菜と卵が入った雑炊があった。思わず生唾を飲み込む。

「そのお玉でよそってね」

「はい」

 よく見ると鍋の横、小皿の上にお玉が置いてあった。お玉と床に置いてある器を手に取り少し多めに雑炊をよそう。それをウリの前に置くが、俺とコハクさんがよそうのを待つように行儀良く座っている。

 自分の分を取った後、コハクさんの器を取り、雑炊を入れて渡した。

「このくらいでいいですか?」

「ええ、ありがとう」

「じゃあ、いただきます」

 れんげで雑炊を掬い口に運ぶ。

おいひい(おいしい)!」

 ご飯はさらさらで香りがよく、煮込まれた野菜と卵はとても柔らかい。さらに薄すぎず、かといって濃すぎない味付けが食を進ませる。



「ご馳走様でした」

 結局、2人と1匹でほとんど平らげてしまった。土鍋に残っているのは辛うじて茶碗一杯分程度である。

 コハクさんに部屋に戻っていて良いと言われたので、ウリと一緒に部屋に戻り座椅子に腰を下ろす。だが本当に良いのだろうか。寝食を提供してもらうのみで自身は何もしない。このままでは人として駄目な気がする。

 しかし今はお腹がいっぱいで動きたくない。少し休憩したらコハクさんに何か手伝えることがないか尋ねようと決意した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ