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プロローグ(1)

 そこは白銀の世界だった。

 辺り一面を覆い風吹いているそれはまるで吹雪のようであったが、寒さや痛さを感じなかったのでこれは雪ではないのだと思った。

 耳を澄ますと人の声のようなものが聞こえてきた。その声はどんどん近づいてきてついにその姿を現した。

 それは30人ほどの人間だった。多くが男性のようだが女性らしき人も数人いるようである。彼らは全員鎧を着ており槍や刀を持っているように見えた。

 こんな風の強い日に狩りにでも行くのかと眺めていると、1人の男が彼のほうに向けて大声で何か怒鳴り始めた。その怒鳴り声はやがて彼ら全員に伝染していく。

 彼の知っている言語には聞こえなかったので困って首を傾げる。すると彼らは鬼のような形相で彼に向かって走り出し、やがて1番前にいた1人が彼の肩に刀を振り下ろした。



 身体に痛みを感じて目を覚ます。辺りを確認すると見慣れた自室。そのベッドから上半身が落ちていた。

 痛みの原因がはっきりして少し安心する。額には冷や汗が流れ、心臓は鼓動が激しかった。

「夢か……」

 やけに現実感があったように思えた。目を覚まして少し経った今でも、あの白銀の景色と自分に何か怒鳴っていた人々、そして目の前まで迫った刃が鮮明に脳裏に焼き付いている。

 夢というのは楽しかったような気がするものはすぐに忘れるのに、忘れたいものほど頭にこびりついて離れないのは何故だろうと考えていると、ふと時計が目に入った。

 針は普段家を出る時刻を指している。

「やば、遅刻する」

 急いで身支度を済ませリビングへ向かうと母がいた。いつもなら父と弟もいるがもう出かけてしまったのだろう。パンが置いてあったので口へ突っ込み玄関へ走る。

 後ろから「ちゃんと食べなさい!」と聞こえてくるがそんな余裕はない。「行ってきます」と声をかけ学校へ向かった。急げばまだぎりぎり間に合いそうだ。

 俺の通う高校は自宅から徒歩で15分ほどのところにある。朝1分でも長く寝ていたくて選んだ高校だ。

 信号に引っかかったのでスマホを取り出し時刻を確認する。少しペースを早めないとまずいなと思っていると、奇妙な服装の2人の男が走っているのが見えた。

 信号が変わったので急ぎめに歩く。すると何故か2人の男は顔を見合わせ、俺の前で立ち止まった。

「そこの少年、少し止まれ。」

「この街の良からぬ気配、お主が元凶だな?」

 よくわからないけど壺とか売ってる人達なのかもしれない。そう思った後の俺の行動は早かった。

「すみません、急いでるんで失礼します!」

 そう言って全力で走った。2人組は何か言いながら追いかけてきていたが、動き辛そうな格好をしていたのが災いしたのかいつのまにかいなくなっていた。

 全力で走ったせいで汗だくになったが、そのおかげで始業には少し余裕を持って到着した。

 汗だくになりながらも教室に入り、席に座ったところでやっといつもの日常に戻ってこれた気がした。

 今日は夢見が悪く、寝坊して、さらには怪しい男に追いかけられた。朝から良くないことしかなかったが、きっとこれ以上悪いことなんてないだろう。

 期待通り学校では普段と変わらず平和に過ごすことができた。


 あまりにいつも通りで朝の2人組のことを忘れてたのがいけなかったのか。それは放課後、友人と別れ1人で帰路についているときだった。

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