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第一話 まだ~FIN~じゃない

 乾いた銃声が響くと、エリサのみぞおちの辺りから血液が()み出した。息ができない。肺を撃ち抜かれたのであろう。


――こ……ここまでか……。


 息を吸うほど、息苦しくなる。肋骨の内側が痛くなる。

 こんなに痛いなら、はやく楽になってしまいたいと思った。


 エリサが目を閉じると、激痛にうかされてた体がフワッと軽くなった。


 ~FIN~



――――――第一話『まだ~FIN~じゃない』――――――



「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「うわぁぁぁぁぁぁ!」


 布団から飛び起きたエリサの叫び声と共鳴するように叫んだのは、濃緑の着物をまとう中年の女性。

 その驚きようといったら、まるで突然ピストルに胸を撃ち抜かれた人みたいだった。


「あちゃ~……驚かしちゃってすみません」

「い、いいのよ。無事に起きてくれてよかった」


 こわばった愛想笑いを浮かべる女性。額に浮かんだ汗がお気の毒である。

 エリサは、そのふくよかな顔にどこかで見覚えがあるような気がした。


 身体を起こしてはじめて周りを見回すと、その空間の異質さに気付いた。

 畳に(ふすま)。壁には掛け軸。純和風ではないか。洋風の家に住んでいたエリサにはなじみのないものばかりだ。


 なにより不思議なのは、膝にかかっている布団がコットンではない。――和紙だった!


――和紙布団⁉ 江戸時代かよっ!


 処理しきれない情報が一気に入ってきて、頭がパンクしそうだった。

 江戸時代までは和紙の掛け布団は当たり前のように使われていたけど、現代において和紙の布団なんて歴史博物館にしかないはず。

 だが、ここはおそらく博物館ではない。


「こっ……ここはどこですか⁉」

朱雀門(すざくもん)呪術(しゅじゅつ)学校よ」

「朱雀門呪術学校……?」

「ええ。近所で血まみれで倒れていた貴女が運び込まれてきたの。――そしたら貴女、入学許可証を持っているじゃない。新入生だったのね」



 朱雀門呪術学校……。


「うっそぉ……。まじで……? あたしが?」


 その名前を聞いて確信した。

 エリサがよくプレイしていた乙女ゲーム『肇国桜吹雪』の舞台となる学校も朱雀門呪術学校といった。まったく同じ名前である。


 あまりの動揺に固まっていると、


「あの~、大丈夫?」


 着物の女性が心配そうにのぞき込んできた。体のどこか(特に頭)の調子がおかしいんじゃないかと疑っているのだろう。


 エリサは、その女性の顔をどこで見たのかも思い出した。


――朱雀門呪術学校の呪術医・包見(つつみ)さんだ!


 ゲーム中でも、怪我してこの部屋に運び込まれ、呪術で傷を治してもらうイベントがある。


「もしかして……」

「え?」

「もしかして、あたし転生してる~~~~~~~⁉」


 けたたましい叫び声が学校中に響き渡った。包見は再び怯えた表情を浮かべた。

 包見は、エリサの体(特に頭部)に異状がないか入念に確認した。不思議なことに、頭部に外傷はなかった。


「内部の問題かしら……」


 と呟いた。


最後まで責任を持って完結させます。

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