僕ピクこれ
その日、僕とピクシーのちーちゃんは一緒にテレビを見ていた。
「彼との絆はとても深いものでして、最近は年を取らなくなってきました。」
30代後半くらいの女性だろうか。司会者であるタレントのインタビューに答えて、自信満々にこう答えていた。
そう、ここは人と魔族が共存する世界。こうやって人と魔族がテレビに一緒に出演することなどは日常茶飯事なのだ。
「そういえばお若く見えますね。全然30代後半には見えませんよ。」
タレントは機械のように固定した笑顔でそう答えていた。
まあ、これをどういう状況なのか説明すると、
『魔族と契約に至り、一定以上の絆を築いたものは「永遠の命」を得る』と昔から言われている。
そのため、この女性は自分が不老不死になり、永遠の若さを手に入れたと自慢をしている状況なのである。
「彼とはもう2年以上の付き合いになります。言葉では話せなくてもお互い通じあっており、もう家族以上の存在ですよ。」
「なるほど~。毎週ここに来ていただくゲストさんからもお聞きしてますが、やはり言葉とは違ったコミュニケーションを図るんですね。人間同士では到底できないことなので、うらやましいです。」
この後も、この女性は自分とケルベロスの絆について、自慢話を延々と続けた。
「最近こういう人増えてるけど、ちーちゃんはどう思ってるの?」
僕は肩の上にちょこんと座ってテレビを見つめている羽の生えたかわいいパートナーにそう尋ねてみた。
「うーん。たぶんこの人、絆どころか、近いうちにケルベロスさんから別れを切り出されると思うよ。」
「あ~、やっぱりそうかあ。2年が分かれ目っていうもんね。」
そう、この世界、人と魔族は簡単に仲良くなることができるが、別れるのもあっという間なのだ。付き合いは永遠であるはずもなく、ほんの一部を除いては大体2~3年で別離を迎えると言われている。
そしてそのサインは簡単。その間に契約ができているかどうかなのである。
このインタビューを受けていた女性、自分は契約を結び、さらに絆を深めたといっていたが、恐らく契約すら結べていない。今までテレビに出演していた人たちもそうであったが、一緒に生活を送っているだけで契約が成立していると勘違いをしている人が大半なのだ。
そしてそのほとんどが、パートナーが去ってから初めて、絆どころか実は契約すらできていなかったことに気づくのだ。
色々と上から目線で偉そうに言ってきたが、それには訳がある。実は僕とちーちゃんは契約ができている。出会ってから2年後のある日、ちーちゃんが小さな花を持って僕の目の前に差し出し、「契約をしませんか」と照れながら言ってくれたのだ。かわいかったなあ。もちろん、速攻でOKを出しました!
そう、魔族は契約をする相手にはきちんと言葉でコミュニケーションをとってくれるのだ。思わせぶりな態度ではなくてしっかりとした言葉で。
だから、さっきテレビに出演していた女性のように「言葉はなくともわかりあっている」というような人は、契約ができていないことがバレバレなので見ていてすごく悲しくなってくるのだ。
「そういえば僕とちーちゃんみたいに言葉で会話しあっている魔族って周りに全然見かけないよね?」