贈り物
7日目
俺は大発見をしてしまった。昨日の夜、俺とクソだんごが死闘を繰り広げたあと、俺の服には小さな傷がついていたんだ。しかしどうだろう、朝ごはん調達の為に自殺をしたあとに傷のあった場所を見たがなんにもなかったんだよ。もしかしたら気のせいかもしれない、しかしこの発見は上質な布を確保するのに使えるんじゃないか?
「でもさ、君らが朝持ってきてくれる死体に着せてあった服を流用すればいいだけじゃね?」
いや、そうじゃないんだ。もしかしたら俺ら本体にもその設定があるかもしれないってところが大切なんだよ。
「おい、布の話どこいきやがった」
そんなのは話を進める上での些細な問題さ。
「いや、問題なのかよ。それに怪我とバックアップの関係は数日前に結果が出てたろ。怪我をした状態でバックアップをとると怪我も記録されるって。だいたい記憶や満腹度合いまで記録されるのにどうして怪我は記録されないんだよって話」
じゃあ服の修繕はどうやって証明するんだよ。
「見間違えじゃね?それか可愛らしい俺らの裸をさらすわけにはいかないみたいに主催陣が考えてるとか。第一体と身に付けるものじゃ物としてのレベルが違うだろ」
まあな、最後以外はなんとか納得したよ。でもさ、この国からしたら俺ら人間と服の間に価値の差はないのかも知れない。だって等しくゴミも同然に消費されていくんだぜ。みろよ、あの死体の山を、俺らと装備品の違いなんて質量位しかないだろ?
「それもそうだな。この雄大な自然を前にしていたらうっかり忘れていたよ。まあ、元雄大な自然だけど…」
そうだな…。じゃあおしゃべりはこのくらいにしておくか。今日も旨そうな肉をありがとな、毎日ご苦労様。また来るよ。
「うん、またね。更に研究して、もっと美味しいギュウニクを作って待ってるから…」
別に最後の別れじゃないんだけど、なんでこんなにシリアスティストなんだよ。
『コイちゃんどこ?コイちゃんどこ?コイちゃんどこ?コイちゃんどこ?コイちゃんどこ?コイちゃんどこ?コイちゃんどこ?コイちゃんどこ?コイちゃんどこ?コイちゃんどこ?コイちゃんどこ?』
現在昼過ぎ、マドガラスのヴォイスで頭の中がいっぱいになってる。なんだよこれ、俺の周りの奴には聞こえてないみたいだけど。
[念話・君に届け]を確認 ロード中
ロードが完了しました。
あ、また変なのが頭ん中に組み込まれた。爆散拳、もとい[身体強化]とおんなじか?それなら呼び出して使えるハズ。
今、俺の心の声が響き渡り、新たなる言語として覚醒する。マドガラスと話したい。マドガラスと話したい。マドガラスと話したい。…別に中二チックじゃなくていいよね。
[念話・君に届け]のコールを確認。
[念話・君に届け]を発動します。
そうそう、これだよ。これでマドガラスと繋がったのか?
『おーい、マドガラスー、聞こえるかー?あのなー、さっきからよー、どこどこうるさいんだけどー、俺なら死体山のてっぺんらへんにさー、いるからー、そこで話してくれないかー』
遠くにいる人にはよー、何故か語尾を伸ばして話掛けるだろー、そうゆうことー。
『わかった、今すぐそっち行くからどこにも行かないでね』
返信?早すぎ。あー、ホントに面倒臭い奴だな。俺はどこでミスったんだ?そもそもアイツとのイベントって回避できるような類いのものだったのか?
「はぁはぁ、やっと着いた。もしかして、待った?」
全然待ってないよ。本音を言うともっと待っていたかった。そういや確実にコイツ速くなってるよな。なんでだ?なんで俺の周りの奴らは皆強くなってるの?
「よかった、もしコイちゃんを待たせるようなことがあったら俺嫌われちゃうかなって思ったの。そしたら怖くなってきちゃって早くコイちゃんの顔をみたくなったから急いできたよ」
言いたいことは分かった。ただ日本語おかしくないか?疲れてるなら俺が膝枕してやるよ。
「マジで?」
おう、マジで。
「マ?」
マ。
「夢じゃありませんか?」
リアルです。
「そうですか」
そうなんです。
「へー」
ほー。
「よく考えたら夢だってことがわかったからいいや。それより俺が誰だかわかるか?」
えっ、誰だっけ。
「えっ、俺だよ俺」
あぁわかった。お前か。
「そうそう俺俺」
で、なんだよ急に。
「俺、ちゃんと俺してる?」
ん?
「あのな、俺って実はギュウニクなんだよ。俺の本体に作られた。まぁなんだろうか、俺の本体って頭が少しアレじゃない?だからお前にそのままの形の俺を食べて貰いたいらしくてさ。ちなみに生きたまま。流石に俺の本体自ら食べられにいくのはまだ恥ずかしいらしくてさ、だから代替として死体である俺の体をいじくり回してそのまま食べれるようにしたらしいんだ。ついでに言うと俺の寿命はあと三十分だ。わがままかもしれないけどよ、どうか食べてくれないか?お前に食べてもらえたら、俺も思い残すことは無くなるからさ」
ずいぶん長く語ってくれたけどさ、正直無理だわ。もし仮にオマエが物凄く旨かったとしても俺は食べないぞ。まずその見た目、人間じゃん。それがもう無理。わかるか?オマエを食べてるところを他所に見られたら一発アウトだ。俺は悪魔だとか罵られるだろうな。
次に生きたままってとこ。何だかんだ言って実はアイツは狂って無かったんじゃないか?って思ってだけど狂ってたみたいだな。生きたままはキツいだろ。せめて原形をとどめていない位のサイズにしたあと、軽く火を通してあったら俺は食べるよ。なんたっていつも食べてるギュウニクと何らかわりないからな。
但し、俺はオマエだけは食べないからな。そこだけは覚えて置いてくれ。
来い。
[身体強化]のコールを確認。
[身体強化]を発動します。
消えちまえやオラァーッ!
俺らは爆裂した。
なんの前振りもなく爆発するなって?だけどさ、知らない奴に食べてくれとか頭のイカれたこと言われたらやるしかないだろ。飽くまでも俺の意見だが。
いや、それにしてもマドガラスの野郎とんでもないこと始めやがったな。いつの間に生物学的なこと学んだんだよ。俺たち一ヶ月前まではジュニアハイスクールスチューデントだったろ?何がお前をそこまで駆り立てるんだ。
ぴーんぽーんぱーんぽーん
お?なんだなんだ?ついにあっちに戻れるのか?俺の周りの奴らも音のする方を探してキョロキョロしてる。
『第1学年の皆さんこんにちは、生徒会会長を務めさせて頂いておりますユドウフというものです。また、皆さんのレクリエィションは今日で最終日を迎えます。そこで私からのささやかなプレゼントを皆さまに贈りたいと思います。第1学年の皆さまは例年通り大した量の【】を獲得出来ていないようですね』
ん、なんて言った?クワッコウ?カワッコォ?なんだそれ。[身体強化]や[万物創造]のことか?
『ただ一部の生徒が初日に大きな成果を挙げたみたいですが。そんなことはどうでもいいんです。それよりも私から皆さまに贈るのはそんな【】の獲得権です。今から貴方達の周辺、ひとクラスにつきひとつのボスを配置しますので、文字どうり命を燃やしてボスを倒し、【】を獲得してくださいね?』
『それでは、皆さんが良いスタートを切れることを願って、さようなら』
リアルハイスクール
あなた達はボスがどういったモノか知っていますか?
それと会長、貴女は後で校長室に来なさい。