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天使へのお祝い言の葉 ~想いを込めて~  作者: 菜須よつ葉
2019.06.15 誕生日プレゼント
35/35

【プレゼント】 山之上 舞花さま

菜須よつ葉ちゃんへ


ポツ


「あれ?」


頬に水滴が当たって、私は不思議に思って空を見上げた。


今日は梅雨の晴れ間で、白い雲はところどころに見えるけど、頭の上は青空だ。


おかしいなー。そう思いながら前を向いたら、小学生くらいの男の子と目が合った。その子は私を見て、口をにーと開けて笑った。ちょうど歯が生え変わるのか、すきっ歯になっているのが見えた。その様子がかわいくて、私もニコッと笑い返した。


そうしたらその子は、手に持ったものを私へと向けてきたのよ。


ピュー


「つめたっ!」


水をかけられた私は声をあげた。その子はそれが面白いのか「きゃっ、きゃっ」と笑い声をあげた。


「やったな~」


男の子を捕まえようと手を伸ばしたら、男の子はするりとかわした。


「へへ~ん。つかまらないよーだ」


そう言って、路地のほうへと逃げていく。でも、少し走って立ち止まり、私の様子を伺うように見てきた。私はどうしようかと考えていたけど、男の子は水鉄砲を構えると、私のほうに向けて水を飛ばしてきた。その水が、今度はスカートにかかった。


「こらー」


そう、声だけ上げて軽く睨んだけど、そのまま動かないでいたら、その子はまた水を飛ばしてきた。


「こら、待ちなさい」


私はその子に注意をしようと思って、路地のほうへと足を進めた。男の子は私が動いたことで路地の奥へと逃げていく。それを見て、追いかけてまで注意をしようとは思えなくて、私はまた立ち止まった。そのまま向きを変えて通りに戻ろうとしたら、背中に冷たい感触がした。


振り向くと、男の子が水鉄砲で、私の背中に水をかけたようだ。


「きみ、いい加減にしなさいよ!」

「べー」


男の子は舌を出して、逃げ出した。私はその後を、本気で追いかけ始めた。


男の子はこのあたりを熟知しているようで、右に左にと道を曲がり、時にはどこかの家の裏庭ではないかというところを抜けていく。私もその家の人に見つかるのではないかと思いながら、恐る恐る通させてもらった。


走りつかれて、息を整えるために立ち止まった。気がつくと今まで来たことがないところに迷い込んでいた。男の子の姿も見えないことに気がついた。どうしようと途方に暮れていると、そばの家から大きな声が聞こえてきた。


「何をやっているんだ、お前は! それで、そのお姉さんはどこに」


扉が開いて、出てきた人と目が合った。男の子とよく似た青年が、扉を開けたところで固まったように止まってしまった。


「このお姉ちゃんだよ。ぼくとあそんでくれたのは」


男の子が青年の後ろから顔を覗かせて、私のことを指さした。それで我に返ったのか、青年は男の子の頭に拳骨を落とした。


「お兄ちゃん、いたい~」

「お前は、まずは謝りなさい!」


男の子は涙目で青年のことを見上げてから、私のほうを向いた。


「お姉ちゃん、ごめんなさい」

「僕からも、弟がご迷惑をおかけしました」


青年は男の子の頭を押さえるようにして下げさせながら、自分も頭を下げてきた。


「えっと、あの、大丈夫ですから、頭をあげてください」


ドギマギしながら答えたら、青年がそばに来て、まるでエスコートをするかのように、右手を掴んで背中にも手を回されてしまった。


「あ、あの」

「服が濡れてしまったのですよね。乾くまで、家で休んでください」

「いえ、もう乾いているから、大丈夫です」

「お詫びをしたいので、どうぞあがってください」

「お詫びをされるほどでは」

「喉が渇いていませんか。麦茶が良いですか。それともコーヒーにしましょうか。紅茶が良ければご用意します」

「いや、そこまでは」


グイグイと押されて、気がつくとリビングに通されてしまった。お母さんらしい人も出てきて、話を聞いたら、青年と同じように男の子の頭に拳骨を落としていた。


この後、アイスティーとマドレーヌ、クッキーをいただき、ここの場所がどこかわからないというと、駅まで送ってもらうことになった。


家の外に出ると、いつの間にか曇っていて、いまにも雨が降り出しそうに見えた。傘も貸してくれると言われた。


駅に着く前に雨が降り出してしまったので、借りた傘をさしてた。駅のところでお礼を言って別れ、電車に乗ってから気がついた。連絡先を聞いていないことに。


近いうちにあの家まで傘を届けに行かなければいけないなと、思ったのでした。


素敵なプレゼントをありがとうございます。

いいお誕生日になりました。

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