(軽度に)浪漫あふれる雨の日の通学
午前8時。
なんやかんやで朝食も終わり(三回ほど死にかけて)、オレとスズメは登校するため家の玄関に向かってい
玄関はオレから向かって右側に少し大きめの(だいたい胸元当たりまである)クローゼット型の靴箱があり、その上に「欲情した猫」が趣味で(勝手に)置いた綺麗な絵皿の置時計があった。
外が雨のせいか玄関は少し暗くスタンド型の電灯のヒカリが淡く光りどこか幻想的だった。
置時計のカチカチとした秒針の音がどこかファンタジー染みていた。
ザァァァという雨の弾ける音……
秒針の流れる機械音……
どこか気持ちを落ち着かせながら高揚させる。
がっ……
「困ったなぁ……(スズメ)本当に困ったなぁ……(あはは)」
スズメの紫がかかった赤髪がパサァと掻きあげられる。
「私が玄斗くんの家にやってきたときは雨降ってなかったから傘を用意してないや……」(ぽっ……)
「ああ、それなら」(クローゼットのくつ箱を開ける)
「傘さをさないと濡れるなぁ……」(ちら……)
「それなら……」
「さっきブラが汚れてる気がしたから今下着付けてないんだよねぇ……雨に濡れると透けちゃうんだよなぁ」(てれてれ)
「だからぁ……」
「このうら若き乙女が雨に濡れて少女のサクランボを露出なんて……それなんていうポルノ?」
「あのねぇ……」(げっそり……)
「反社会的内容なエロDVDも真っ青ななにか起きちゃいそうな気がするなぁ……」(ちらちら)
「あの……」
「あぁぁぁ……どうやって学校に行こう」
「だから傘が二本あるから一本貸してあげるって言ってるでしょう!」
「えい!」
ポキッ……
「な、なにするだぁぁぁぁぁ!?」(拳を握りしめながら)
某吸血鬼になる前のライバルキャラ張りのnd蹴りで綺麗に折られた傘。
平然としている幼馴染み……
これで言わなければいつ言う!?
「それ高かったんだぞ! ブランド物でもう売ってないんだぞ!」
「傘は最初から折れてたよ!」(キッパリ)
「折ったんだろ!」(ドン!)
「折れてた」(バン!)
「折った!」
「おれて……た」(ガシッ!)
「うごぉ!?」
く、くびがぁ……
「か・さ・はさいしょからおれてたよね……」(ギリギリィ)
「が、がはぁ……」
く、くびがしまる……(息が出来ない)
「ふふっ……♪」
スズメの大きかった瞳にハイライトが消え、泥のような濁りが浮かぶ。
目がぐるぐると回るの見て背筋がガクガクと震える。
「つかえるかさはいっぽんしかなかったよね?」(抑揚がない)
「……ぶくぶく」
「ねぇ……♪」(ぐるぐる)
「……」(ぶくぶく)
「ねぇ……ねぇ……」(ぐるぐるぐるぐるぐる)
「……」(ぶくぶくぶくぶく)
「くびのほねおるよ」
「……」(こくこく)
「よろしい♪」(パッ……)
「ごほぉ……ごほごほ……うげぇ」
口の中が酸っぱい唾で満たされる。
強い吐き気がお腹の中をグルグルと回る。
本気で殺しに来たな、コイツ……(胃の内容物が上がってくる)
「じゃあ夢と希望の「相合傘」をしようか!」
「な、なにがあいあいが……(ガチャン)え……?」
無機質な鉄の音にゾッとしなかった。
「なぜ手錠を……?」(左手を見る)
「こっちのほうもこっちに……ね♪」
ガチャン(自分の右手にも手錠をかける)
「これで「相合手錠だね?」
「……」(ガチガチ)
「これでずっといっしょだね……♪」(ニッコリ)
「に、逃げないから……手錠を」
「逃げるね!(ビシッ!) 君は逃走の手段を手にしたら絶対にに逃げる! 君はそういう人間だしそういう卑怯な人種だ!」(ドカン!)
こ、こいつ……
「後はこの手錠をかけたまま……こうすれば完璧♪」(むにゅうぅ)
「うぉ!?」
腕に二つの柔らかい肉の風船が当たりいやらしく歪む。
(これはなかなか……ってちがう!)
バッ……
「恥ずかしいからやめて!」
「トコトン拘束しないとね♪」
「オレは犬かなにか!?」
「犬じゃ私の欲求を満たせない!(カッ!) 玄斗くんじゃないと私を満足させられない! これは社会の常識よ! そう……(ぐるぐるぐるぐる)くろとくんじゃないと……まんぞくできない♪」
ガクガクガクガク……
「さぁ、行こうか……じごくまでずっと」
「はい……」
生きた心地がしない。
まるでこれから絞首台に昇らされる死刑囚の気持ちだ。
外に出ると雨はかなりひどかった。
狭い傘の中では嫌でも肩が濡れ、スズメの柔らかい身体が腕に絡み合う。(ドキドキ)
「あの……狭いんだけど」
「雨の中を一緒の傘で歩く……ロマンがあるねぇ♪」(うっとり)
「やっぱりコンビニかどこかで新しい傘を一本……うぎぃ!?」(ガッ……)
スズメの細い指が器用に首の呼吸する器官を掴み上げる。(マジで息が苦しい)
「かさはいっぽんしかない」(ぐるぐるぐるぐるぐるぐる)
つぶれる……くびのこきゅうするきかんが……つぶれるぅ……
「おかねもない……」(ギリィ)
「が、がはぁ……」
「ねぇ……?」(ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる)
「あ、あい……ゆるじでぐだざい」(じわぁ)
ついにオレの口から泡と一緒に慈悲の言葉が出た。(本気で恐い)
「さぁ、行こうか?」(ニッコリ)
「あ、あい……」(コクコク)
左手に地上、首に指をかけられさながら囚人を虐待する監修のような姿でオレは歩かされ続けた。
さながらポルノ小説の美人大学生を拳銃で脅し暗い淫獄へと堕とそうとするヤクザのように……
命からがら学校の校門にたどり着くとオレは生きてる素晴らしさを十四年間の人生で深く喜んだ。
「ついたついた!」(パッ……)
「が、がはぁ(ガクッ!)……ごほごほ!」
「私達の母校……獣字学院中等部♪」
獣字学院。
創立100年を超える伝統ある学校で小中高一貫のエスカレーター校である。
昨今の少子化がささやかれるこのご時世に珍しく中等部だけで在学生1000人を越えるマンモス学校。
部活に勉強にと毎年、数多くの著名人が生みだされてることでも有名である。
かくいうオレもある部でこの脅迫者と一緒に頑張ってるがそれはまた今度話すよ。
「さて……私はB校舎だから」
ようやく手錠が外れて「生」という実感を味わえそうだ。
「学校をサボって私のB校舎で一緒に勉強しない?」
「するわけねぇだろう! オレはA校舎なので必然的にスズメとはここでお別れだ。早く手錠を外して校舎に入れてくれ! というか今は8時20分。後10分で朝礼の時間だ。早く入らないと遅刻扱いされる。ウチは遅刻に厳しいんだそ! 遅刻者にはそれ相応の罰が与えられることくらい知ってるだろう!」
そう……罰が……
……
思い出すだけで恐ろしい……
一年前にしでかした(理由は想像してくれ)遅刻の罰は想像がしやすく怖かった。
想像しやすい恐怖。
それが一番怖いと初めてこの学校に来て最初に知った授業だった。
思い出すだけで身の毛もよだつ。
「さぁ……行くよ!」(グイッ)
「な、なんで手錠を引っ張るようにB校舎に入ろうとする?」(ぐぐぅ……)
「このまま一緒にB校舎に入るぅ!」(ガッ……!)
「オ、オレが遅刻する!」(グイィ!)
「いいの! 学校なんて行かなくたって! 君は将来、私が養うって決まってるから頭が悪くったっていいの! というか、いしなんていらない……いしなんかあるとわたしにさからいつづけるから、いしなんてすてて……わたしのあいがんどれいとしていきて……というかいきてるじっかんもなくわたしのものでめでられつづけてればいいの……わたしだけのおもちゃであれば♪」(クスッ♪)
「い、いいわけあるか! 今すぐ手錠を外せ!」(ジタバタジタバタ)
「キミの意思なんてどうでもいい……」(パシン!)
「っ……(気が遠くなる)ハッ! オ、オレの人権はどこにある!」
「そんなもの私の物に決まってるでしょう」
「「物」っていいやがったよこの人……あ?(視界がブレる) うごぉ!?(男の身体が雨で濡れた泥の叩きつけられる)いだいいだいいだいいだいいだい!」(腕をキメられる)
「……」
「おれるおれるおれるおれるおれるおれるおれるううううううぅうう!」(ぎりぎりぎりぃぃぃ)
「私の言うことを聞く?」(えへぇ)
「聞いてたまるかああぁぁぁぁあ!」(涙目)
「このあっっっっっぁああぁあぁぁぁ!」(発狂)
ゴキッ……
「うっ……?」
雷の音が響いた。
あくまで軽度に病んでるだけです。そう軽度に……
殺さないよう殺さないよう……
気持ちはヤンデレCDの気持ちで……
そう、殺さない程度にマイルドなヤンデレCDのように……
ていうか三枚目はマジでやばかったなぁ……