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妖銃戦姫  作者: 夢見るうさぎ
第一章 〜妖銃戦姫とトリガー〜
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流れ星 美少女フィギュア 降って来た

初投稿です。

何度も見直しはする予定ですが、誤字・脱字が見つかった場合は指摘して頂けると助かります。

 2××3年12月某日、世界中で多くの流れ星が観測された。

 それは流星群とも呼べる程に沢山の見事なものだった。

 しかし専門家達は皆、首を傾げた。

 誰一人としてその夜、こんなにも沢山の流れ星が降ると事前に観測することが出来なかったからだ。


 ある者は不吉な事が起こる前触れではないかと騒ぎ、またある者は神様が起こした奇跡だと祈りを捧げた。


 当たらずとも遠からず、それは世界にとっての厄災であり、一部の者達にとっては何にも変えがたい、奇跡に出会う為の祝福であった。




 世界中で流れ星が落ちた神秘的な夜が明けるといつも通りの朝がやってくる。昨夜はあまりにも現実離れした光景を見たからか、今日の仕事は休みだと連絡が来る事を期待したが、そんな事があるはずもなく、普通に出勤の時間になってしまった。


 いつも通りの通勤路を早足で歩く。

 今日は天気が良いが、そのお陰で底冷えする。こんな日はさっさと駅のホームで暖を取ろうと、もはや駆け足気味で進む。

 しかし私はふと足を止めた。視界の端に何か写ったような気がしたのだ。


 田舎に住んでいる為、道路の隣は田んぼや川や草むらが多い。端の方にトカゲやヘビがジッと動かずに居座っていたり、オモチャやビニールが落ちていたりするのもざらにある。

 トカゲやヘビは春になるとよく見かけるので驚きもしないが、オモチャやビニールは気を付けないといけない。

 近所の人達は犬の散歩の際にリードを着けない方が多いのだ。だから少し目を離した隙にビニール袋や小さなオモチャを食べて具合を悪くする事がある。それは飼い主の責任だが、具合が悪くなる犬には関係ないだろう。そこに美味しそうに落ちているのが悪いのだ。

 そんな理由で態々ゴミ捨て場に持って行く事はしないにしろ、犬が届かないような高い位置に移動させることを心掛けている身として、視界に写った何かはしっかりと確認しなければ気が済まない。

 今回もパンの袋とかそんな感じのものだろうかと思いながら隣の草むらに顔を向けると、予想外のものが落ちていた。


 精巧に作られた美少女フィギュアが空にスカートの中身を見せ付けるような体勢で転がっていた。土下座からの俯せのように腰を上げたまま上半身と腕が地面と平行にくっ付いている。

 かろうじて顔は横を向いている為、その瞼を閉じた精巧な顔は汚れていない。

 地面とのキスは避けたようだが、あまりにも可哀想な体勢である。同じ女としては同情が禁じ得ない。

 一体全体このフィギュアで遊んでいた子供、もしくは大きなお兄ちゃんはこの子をどんな風に扱っていたのだろうか。


 新鮮な朝の空気が若干澱んだ気がしながらも、すぐさま拾い上げて服に付いている砂を払う。

 服装も実に精巧に作られているようで、革の様な光沢を放つ黒のニーハイブーツとすみれ色の厚手のコートを着ていた。ボタンやデザインなど、高くても欲しいと思う程にシンプルだか可愛いらしく作られている。

 体勢も戻そうと思ったが、それは持ち上げた際に驚く程柔らかな動きでクニャリと直立に体勢を変えた。まるで本物の人間が力無く眠っているかのように不自然な程に重力に従って動いたのだ。

 最近のフィギュアは関節の動きが妙にリアルだと思いながら、髪に付いている砂も払おうと頭を軽く叩くと、小さな声が聞こえた気がする。

 ご近所さんが来たのかと思い、挨拶をしようと立ち上がるも、周りには誰も居なかった。

 不思議に思いながら手元に顔を向け、ヒュッと息を吸ったまま呼吸が止まる。


 フィギュアと、目が合った。


 髪と同じ銀色混じりの青色の瞳が此方を見上げていた。

 さっきまでコレは目を閉じていた筈だ。もしも地面と垂直にしたことで瞼が開く細工をしていたのだとしても、タイミングが遅すぎる。

 もしくは私が何処かに付いていたスイッチを押してしまったのかもしれない。いや、そうに違いない。


 そんな風にフィギュアと見つめ合ったまま思考していると、フィギュアが自然な動きで瞬きをした。そしてその小さな腕がフィギュアの腰を掴んでいる私の手に添えられた。


 私は喉が引きつったような音にならない悲鳴を上げ、そのフィギュアから手を離した。


 半ば空中に放り出されるような形で地面へと落下したソレは、地面スレスレで風に乗った紙飛行機の様にふわりと足から着地した。

 しかし両足が地面に着くと、コロンと転がる様に尻餅を着きそのまま仰向けに倒れこんだ。


「眠い、し・・・お腹が空い、て」


 そう言葉を発すると、瞼を閉じて動かなくなった。


 私は恐る恐る近付いてソレを上から見下ろすと、その小さな身体の胸部が僅かに上下するのが見て取れた。

 身長は目測で15㎝で、リアルな人の形をしている。そんな小さな身体にしては呼吸数が少な過ぎる気がする。鼠や子猫は呼吸数も心音も驚く程早い。

 何だろうこの生き物。いや、自動で動く最先端な人形だろうか。だが、言っちゃ悪いがこんな田舎にそんな物を買う様な人は殆んどいないと思う。


 混乱し過ぎたからか、取り敢えず写真でも撮って親に報告しようと、スマホを取り出す。そしてその画面に表示された時間を見て、思考が止まる。

 あと5分で電車が来る。

ここから歩いて凡そ10分の距離。走れば間に合う。いや、私の鈍足では間に合わない。だが、諦めたら会社に遅れる。

 私は地面で寝ているソレをチラリと見る。

少し考え、勢いよく引っ掴むとハンカチに包んで少し大きな通勤カバンにしまった。


 何年振りかの全力疾走と、カバンに入っている何かに心臓がドキドキと高鳴る。


 昨夜の流れ星はとても神秘的だった。だから今日も不思議な事が起きても良い気がする。


 だけど、取り敢えずコレは警察に届けよう。


 しかし電車に間に合わず、次の電車に乗った私は再度全力疾走して出社時間の2分前に会社に着いたのだった。


 誰のか分からないが、とても高そうな動く人形だ。持ち主ならきっと警察に連絡しているだろう。警察に届けるのは帰り際でも良いと思う。一応、元あった場所の近くにはメモでも貼って、警察に届けたことを知らせればいい。

 そう思いながら気もそぞろに仕事をこなす。




 お昼休憩になり、お弁当を取り出すついでにハンカチに包まれた物を確認する。

 まだアレは眠ったままだった。

 その事に肩の力が抜けた私は、そう言えばコレは眠る前にお腹が空いたと言っていたことを思い出した。

 人形、もしくはフィギュアだとは思うが、もしもの可能性を考えて、電池やオイルではなく普通の玉子焼きのカケラをハンカチの横にポトリと落とした。

 もしもこれがなくなっていたら会社を早退してでも警察に届けよう。

 玉子焼きを食べるのならそれは本当にただの人形ではないだろう。

 絶対に一般人の手にはおえない代物だ。




 いつも通りお弁当を食べ終わると、休憩終了時間になるまでソワソワしながらスマホを弄っていた。

 先程までは怖い怖いと思っていたが、食事をして落ち着いてくるとアレについての興味がどんどんと湧いて来たのだった。

 もしも玉子焼きがなかったらどうしようか。実は本当に昨夜の流れ星と関わりがあるのだろうか。もしそうならアレはエイリアンやUMAと呼ばれるものではないだろうか。それなら警察よりもテレビに出した方が良いのだろうか。

 そんな事を考えながらネットであのような人形が実在するのかを調べる。


 すると1つ気になるニュースを見つけた。

 それは昨夜の流れ星以降、世界各地で人形の様な生き物が落ちているのが発見されているとの記事だ。

 この数時間で既に150体以上が見つかっており、その数は更に増え続けているらしい。

 発見地を検索すると、日本でも6体発見報告があった。

 画像検索すると私が拾った物に何となく似ている美少女の画像が表示される。

 姿が人間に似てはいるが、あまりにも顔の造りが完璧過ぎる。シリーズ物として作られたと言われたら納得出来るだろう。


 休憩終了時間になり、事務室に戻る前にカバンを確認するとソレは眠ったままで、玉子焼きも同じ場所にあった。


 何となく腑に落ちないような気持ちになりながらも事務室に移動した私は、ニュースになっているのなら親に報告してから警察に連絡するのも有りかな、と思うのだった。

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