「4月16日」
今日は、火魔術について勉強してみる。
修行。火球のコントロールのことで何か参考になることがないか、探してみようと思う。
「あ、武夫さん!」
教室に入った瞬間に声をかけられた。
アーリャだ。
彼女も火魔術を勉強するのだろうか?
「はい、武夫さんが火魔術使いなので、私もそれに近づきたいと!」
嬉しいこと言ってくれるねえ。
と言っても、俺の通常の火魔術は手のひらに蝋燭のような小さな火を灯す程度だが。
「武夫さんも火魔術の勉強を?」
「ああ、火球のコントロールの仕方を知りたくてね」
「なるほど」
授業が始まった。
一通り火魔術の説明が終わった後に、ちょうどいいことに火球のコントロールの実技もやるそうだ。
「次、武夫君」
教師に呼ばれて、火魔術を使うことになった。
我が家秘伝のゴマ油を手に満遍なく垂らしてっと。
「おい、噂のごま油だぞ」
「よくあんなこと出来るよな、きったねえ」
生徒たちのヒソヒソ声が聞こえる。
うっせえ! ごま油ぶっかけっぞ!
イメージ、イメージっと。
ようしこの調子なら。
「…………。」
百発ほど打ったが一発も案山子に当たらなかった。
「ここまで外すとは、ある意味才能だね」
貴方もクレイン先生と同じことを言うのですか。
「次、アーリャ」
アーリャの番だ。
「おおおおおおお」
生徒の皆が驚きの声を上げた。
アーリャの火球は速度が速い上に、全ての球を案山子に当てたのだった。
「今日のMVPはアーリャだな」
教師もそのような発言をするほどアーリャは優秀だってことだ。
待てよ、アーリャがここまで出来るってことは
「アーリャ様、俺を弟子にしてください」
そのアーリャから習えば、俺も一流になれるってことだ。
早速、俺はスライディング土下座でアーリャの弟子入りを志願した。
「え、ええ!? 急にそんなことを言われても」
「お願いです。どうしても火球のコントロールが上手くなりたいんです」
火球のコントロールが上手くなれば修行も楽になるだろうという打算は隠して
「私も結構適当にやってるんですよ」
あれで適当とか何を言うんですかアーリャ様。
貴方ほどの名手はいないでしょうに
「わかる範囲だけでもいいので教えてください」
「うーん、そこまで言うのなら、武夫さんのお願いですし」
よっし、掴みはばっちりだ。
――――。
昼休み時間を使ってアーリャの教えの元、火球のコントロールのトレーニングをすることになった。
「まずはゴマ油手に垂らしっ「武夫さん」
急にアーリャに呼び止められた。
「ん?」
「試合でもそのゴマ油使ってるけど、何か意味あるんですか?」
「これがないと火魔術が上手く扱えないというか」
「なるほど。ではそれはそのままで。まずは見本を」
アーリャはそう言うと、集中してるのか目を閉じ念じるような顔で数秒。
「わお」
アーリャの手から連続で火火球が発射され、案山子に全て当たった。
「では武夫さんも同じようにやってみてください」
「オーケー」
俺もやってみた。
しかし
「全然当たらねえ」
火球は出る。だが案山子に当たってくれない。
「声を出してみましょう」
「声?」
「はい」
アーリャが言うには、声を出すことによって集中力が増すという。
「私も最初は声を出しながら練習していました」
「分かった。やってみる」
俺はひたすら「火球! 火球! 火球!」と技名を連呼してみた。
その結果。
「お」
一発当たったのだ。
「わあ。おめでとうございます!」
百発百中ではないものの。全く当たらなかったのが、一発当たった。
これは大きな進歩だ。
「この調子で練習していけば上手くなりますよ」
「そうだな。ありがとう。お礼にこの我が家秘伝のごま油をどうぞ!」
「もう武夫さんったらそれは結構ですよ。でも」
でもとアーリャが言ったので俺は戸惑ってしまった。
ごま油を上げるも冗談だし。冗談で終わると思っていたからだ。
「お礼として私と一緒にカフェについてきてくれませんか?」
お、カフェいいねえ。
俺コーヒーとかもいけるし。
「オーケーカフェね」
と了承しておいた。
「では修行が終った時間夜8時に”うますぎ―る”というカフェで」
うますぎーる?
何かどこかに出てくるレストランみたいな名前だ。
「あいよ」
ということで昼休み時間は終わった。
――――。
「お、武夫上達したな。火球を案山子に当てるとは」
「ありがとうございます。先生」
クレイン先生からの評価もバッチしだ。
アーリャに感謝しないといけないな。
――――。
そして、夜8時。
「あ、武夫さん!」
アーリャとカフェで会う。
「お、アーリャ」
適当に空いた席に座ってと。
「武夫さ「おい、貴様あああああ」
聞き覚えがある声。
振り返ってみると。
カオスがいた。
「お、俺の嫁とこんなところで会ってるとは貴様!」
俺の嫁?
「違うんです。武夫さん」
「アーリャちゃん「気安く呼ばないでください」
何だ何だ何だ。何が起こった。
「アーリャちゃん何でこんなやつに」
「行きましょう。武夫さん」
「アーリャちゃああん……」
アーリャに手を繋がれて、うますぎーるを出ることになったわけだが。
「カオスとアーリャって付き合ってんの?」
俺は早速疑問に思ったことを聞いてみた。
「いえ、彼はただのストーカーです」
なるほど。カオスはストーカーか。
カオストーカー。ぷっ。
「まあ、大変だね。あんなやつに付きまとわれて」
「君は俺の嫁に相応しい。俺とじゃないと幸せになれない。うるさいんですよほんと」
「だねえ」
「私には武夫さんという人がいるというのに。あっ」
今、何て言った。
「あ、い、今のは違うんです。武夫さんと予定という名のスケジュールを組んでですね」
「予定とスケジュールって一緒では」
「だからそのですね……」
沈黙の瞬間。
「あ、分かった。俺と魔術の話をしたいのに第三者に割り込まれて迷惑ってことね」
「そ、そうなんですー」
そうだよな。
大事な話をしたいのに。カオスというストーカーに邪魔されるのは迷惑だよな。
――――アーリャ視点。
危ない。危ない。つい本音が漏れてしまった。
武夫さんとはいづれ付き合いたいなとは思う。
けど今はそれが恥ずかしくて胡麻化しちゃった。
いつ告白しよう。
やっぱ今なのかな。
「武夫さん」
「ん?」
「今日は空が青いですね」
「今、夜だけど」
「あ……」
こんな調子で武夫さんと話して、結局告白できないまま。
別れてしまった。
もう今日はいいか。
アーリャ。いつかは告白するんだぞ!




