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桃太郎少女  作者: みいとそーす
第三章
3/5

食べること

読者のみなさま、申し訳ありません。


つい他の小説サイトと同じ感覚で書いてしまって、何回も投稿した内容を編集してしまいました。


以後、このようなことは致しませんのでご了承下さい。

風に乗って潮の匂いが一行の鼻を掠めた。


「海、であるか?」


この辺りは高い高い岩の壁に覆われていて、水の一滴も見えないが、確かに海の匂いがする。

天井には、旅立った後も変わらない青空が広がっていた。


足元の砂利は、少しずつ大きな物になっていく。


「かなり近いところから、波の音がします。


海鳥達の鳴き声も」


桃達は自分達が海の上に出来た巨大な岩の道を歩いていることに気づいていない。


足の下でチャプンチャプンと海の水が当たって音を立てていた。





四人はひたすら道を進んだが、見つけたものと言えば貝殻ばかりで鬼ヶ島へと繋がるものは何も見つけられなかった。


「見てください、こんなにたくさん見つかりましたよ。ととさまとかかさまへの贈り物です」


桃がましらの肩のうえで、吉備団子が入っていた袋の中を見せる。


(けん)がくんくんと中を嗅ぐ、キギシは特に興味を示さずその瞳にはただ月が映っていた。


ましらは顔の前に下ろされた袋を見て、飽きれた顔をした。


「なあにやってんだよ、貝殻拾う暇があればな、餌でも探せってんだ」


ましらは憎まれ愚痴を叩いているが、何だかんだいいいい奴なのだろう。


それの証拠に、ずっと朝から桃をおぶっている。


桃がえっへんとわざとらしく咳払いをして、ぴょんとましらの肩から飛び降りた。


「ましら、あなたは少し私を甘く見過ぎているようですね。


いくら見かけは子供でも、遊び気分で鬼退治の旅にでたわけじゃあありませんよ」


ほれと、桃は袋の口を大きく開いてましらに見せつけた。


犬はその間に入り覗き込む様にして見る。


キギシも横目でチラリとそれを見つめた。


「なんだ?やっぱり貝殻ばっかじゃねえか」


「違いますよ、探って見てください」


桃は袋をましらの顔に近づけるため、名一杯腕を伸ばし背伸びをした。


そのおかげでましらの背の高さに丁度良くなって、どれどれとましらは少し面倒臭そうに手を伸ばした。


けれども一秒もしない内に手を出して思いっきり振り回した。


「いって、いって、いってえなおい!」


桃はにこっとましらの指に手を近づけて、それを挟んでいるカニを引き離した。


キギシはそれを見て、つまらなそうに地べたに仰向けになって寝息を立て始めた。


「あれ、キギシさんもうお眠りでしょうか」


桃は袋の紐を結びながら、ひそひそと犬とましらに尋ねる。


「だろ、いちいち聞くな」


ましらは袋を桃の手から奪い取り、その奥の八重歯でカニを噛んで呑み込んだ。


カニのハサミの部分だけが岩の上に残る。


犬も重たい腰を持ち上げてましらに近づくと一匹足を掴んで口に放り込んだ。


それ見た桃は裾をきつく握り、キギシの方を見た。



寝ているのかと思いよく見て見ると、何やら右手が地面の上でもぞもぞと動いている。


そして口に運ぶ動作を何回もしていた。



「キギシさん、何をされているんですか?」


桃がゆさゆさとキギシの肩を揺すると、キギシの左手に桃の腕が掴まれた。


キギシの顔が桃の方を向くことはなかった。


「あんたは、知らない方がいい」


キギシは右手をそれ以上動かさず、今度こそ眠りについてしまった。


「キギシさん、キギシさん。


ご飯食べないのですか?」


桃はまた何度もキギシの体を揺すったりしたがもう起きることはなかった。




犬は腹一杯にかにを食べると、岩壁を背もたれにしてぐうすかといびきを立て始めた。


天井にはまんまるい月が、桃とましらを見つめている。二人はまだ何と無く眠れずに月を見上げてぼんやりしていた。


「ましら、お月様が綺麗ですね」


ましらは桃の顔をふと見ると、袋から貝殻を一枚取り出して親指でそれを弾いた。


ばしっと桃が自分に飛んでくる貝殻を捕まえる。桃の手の中で貝殻が粉々になった。


「嘘付け、月なんか見てないくせによ」


ましらは出会ったばかりの桃を全て見透しているようだった。


それを悟ったのか、桃はましらのとなりに腰を下ろして、その誰にも打ち明けなかった心の内を明らかにした。


桃はましらの持っている袋から貝殻を取り出して、月にかざした。


「本当は、悩んでいるんです。


鬼を退治することが、正しいのかそうでないのか」


月明かりが、薄桃色の貝殻に透けた。


ましらも気付かれないように、桃の真似をして貝殻を摘まんだ。


「何が正しいとか正しくないとか、そんなの俺らが決めることじゃねえだろ。


俺らは鬼に喰われちゃ生きていけねえ、だからやっつける、それだけだ」


さあ、寝よう寝ようとましらは腕をまくらにして寝っ転がった。


「確かに、私達は鬼をやっつけなければ生きては行けません。


でも鬼だって、私達を食べねば生きていけないでしょう。


向こうにだって、お子さんがいて奥さんがいて…守らねばならない者がいる」


ましらはぽりぽりと頬を掻いた。


「お前、親父さんになんて言われたんだ?


覚悟を決めろ、そう言われたんだろ?余計なことは考えるな。


お前は人間だ、なら人間として生きろ。


人間として、生きるのに邪魔な鬼をやっつければいいじゃねえか」


さあ寝るぞと、今度こそとばかりにましらは横を向いて眠りに入った。


桃もそことなりに横になって目を閉じる。




私は、生きるためにお魚を食べお野菜を食べる。


私達がそれらにしていることは、鬼と対して変わりはしない。


でも、お魚だって自分より小さい魚を食べるわ。



桃は考えれば考えるほど遠くなる答えに、頭を抱えた。


「…寝よう。


お休みなさい 、みなさん」













































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