森の奥の奥の奥?
この宿屋に泊まってもう5日が経ちました。
私の体調もすっかり良くなり、ジョーと二人で観光と買い物の日々です。
バイロンさんもジョーもアイテムボックスの魔法が使えるのですが、あまり量が入らないそうです。
私は精霊術なので、二人の10倍は軽く入ります。
おまけに、何度か使っているうちに形状まで変わってきました。
初めは袋に入ったものをそのまま収納していたけど、今ではタンスみたいに引出しがあり、細かく分類しています。
うんうん、便利だぁ。
バイロンさんのお仕事もそろそろ終わるみたいなので、そろそろ出発準備です。
これからの行程は、まず今いるクサミラ王国を出て隣のヨマール王国のソーラカの街を目指します。
ソーラカから王都マイルカへ向かって歩きます。
マイルカへ行く途中にヨカモの森への入り口があるそうです。
ヨカモの森は回りをぐるりと迷いの森で囲まれており、迷いの森を抜ける正しい道は一本しかなく、道を外れると迷いの森をぐるぐると回り続けるそうです。
そのヨカモの森の奥に精霊たちが住む森があり、女神様はさらにその奥に住んでいるんだって。
森の奥の奥の奥……どんだけ深い森なの?
まあ、行っていればわかるでしょう。
私はジョーと一緒に買い忘れがないか確認がてら、お店を覗いてぶらりウインドウショッピング(?)しています。
チラリと目の端に違和感が……。
三度目の違和感を感じた時気付きました。
この街に来た時に私を拐おうとした人がずっとついて来ているのです。
気持ち悪い……。
ジョーが、私の体調が悪い事に気き、すぐに宿屋へ連れ帰ってくれました。
ベッドで休んでいると、バイロンさんが帰って来ました。
ジョーがコスモに頼んでマーゴに連絡してくれたそうです。
二人とも、最近過保護です………でも嬉しいな………。
誰かに心配してもらうのがこんなに嬉しいものだったなんて……。
今まで二人だけで、助け合ってきたのにいなくなってしまったお母さん。
もっと、もっと私の言葉を声に出していけばよかった……。
大好きだったお母さん、もう会えないんだね…そう思うとぼろぼろ涙が止まらない。
お葬式の時だってこんなに出なかった…。
「ケイ、どうしたんだい? どこか痛いのかい?」
「ケイ、私たちが側にいるよ。」
バイロンさん、ジョー……。
「あのね、バイロンさんとジョーが心配してくれるのが嬉しかったの……そうしたらね、お母さんにありがとうっていっぱい言えばよかった…って思って……そ……そう…し…たら…ね………お……お母さ…ん…に会い…た…いな……って…ね………おも……おも……って………。」
泣いてグシャグシャになりながら、言葉にしたら、二人が優しく抱きしめてくれた。
何も言わず、私の泣き声だけが静かに響く……。
危篤の連絡が来てから今まで、張り詰めた心のままいたけれど、やっとお母さんの死を悲しめた気がする。
お母さん、私を産んでくれてありがとう。
私を愛してくれてありがとう。
私に沢山の思い出と幸せをありがとう。
今、私は幸せです。
でも、最近の私……泣きすじゃない?