ヨカモの森へ行っちゃいます
「(熊の)おにいさん、ナディアさん、ご馳走さまでした。」
ここに入る時に名前を呼んでいたもんね。
ちゃんと覚えているよ。
「スタン、あんたおにいさんって呼ばせてるの?」
「あー、いやぁー、話の流れで………。」
話の流れって…あの時の熊さんの目がマジで怖かったです。
「流れってあんた……、まぁいいわ」
えっ、いいんですかぁ?
「ところであんた、スタンとの出会いは簡単に聞いたけど、なんで1人でいたの?」
おぉーっと、矛先がこっちに向いたぁ……目が怖い……。
この2人、絶対に似た者夫婦だよ。
「えっと、ヨカモの森の近くにある街にいるセイレーンさんに会いに行きなさいとお母さんに言われたのです。」
ハピィをお母さんに見立てて、セイレーンさんは勿論精霊の事ですよ。
「それじゃ、お母さんは何処にいるの?」
私の体がビクッとなり、涙が滲んでくるのがわかります。この世界に来てから、お母さんの話を聞くと何故か涙が出てしまいます。
「ナディア!」
熊さんが怒ってくれているみたい。
それよりもっとまずい人達が頭の上で怒っています。早くここから出ていかなくちゃ。
「お…お母さんは亡くなりました。」
涙を溢さないように瞬きをしながら答えます。
「ご馳走になってお返しするものがなくて申し訳ないですが、先を急いでいますのでこれで失礼します。」
そう言って一礼して出て行きました。
そうだよね、私はヨカモの森へいかなくちゃいけないんだもん。
居心地の悪い所に無理にいなくてもいいよね。
唖然としている2人をよそにさっさとお店を出て行きました。
取り敢えず来た方向の逆に歩けばいいはずです。
「フレア、ユピィあんまり怒んないでね。」
「「でもママ!」」
うん、相当起こってるな。
ボンキュボンのナディアさん…急に機嫌が悪くなったよね、何が気にさわったんだろう?