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悲鳴

私は一人で知らない部屋の中に立っていた。


側にいるはずのフレアとユピィの姿がない。


ここは何処なんだろ?


窓から外を見ようとした時、誰かが部屋に入ってきた。


「フレアとユピィがいないんだけど、何処にいるか知らない?」


どうしたの? なんだか怖い顔をしている。


えっ? 何? どういう事? 何を言ってるの?


言われた言葉を頭が処理できない……。


恐くなって何時ものようにしがみつこうと手を伸ばした。優しく抱き締めてくれるはず……。


でも、彼から出てきた言葉は拒絶……。

手は掴む前に払われてしまった……。


どうして?


彼の後ろから綺麗な女の人……、誰?その人は?


えっ! その人が貴方の選んだ大切な人なの?

私を愛しているって言ったじゃない!


嘘だったのね……、やっぱり男の人はみんな他の人を選ぶんだ。

誰も私を愛してくれないんだ……。


今でも私を愛してるって言うの?

私がはっきりしないから、どちらかを選べないから貴方が身を引いたって言うの?


どうして? どうしてなの?


どうして貴方が身を引いたの?


どうして私に「幸せになってくれ……。」なんて言うの?


私は、私は、貴方を愛しているのに……。

貴方を愛しているのに!


どうして行ってしまうの?

嫌、行かないで!

私から離れないで!


あぁ、ドアが閉まってしまう!

もう二度と会えないの?



「いやあーーーーーー!!!」




バタバタバタ…………

バタン!


「ケイ! どうした!?」


バイロンさん……、どうしてここに?

だって……バイロンさんは……。


思い出しただけで大きな涙がポロポロ、ポロポロ。

後から後からポロポロ流れてくる。


「ケイ、ケイ、どうしたんだい?

何故泣いているんだい?

もう俺たちがついているから、怖い事はないよ。

安心して、だからもう泣かないで……。

ケイ、ケイ……。」


「バイロンさん……。」


「ケイ、声が出るのかい?」


声?


「ケイ、何か話してみて。」


「……ジョー……。」


掠れてはいるけど、本当に声が出ている。


「ジョー、バイロンさん、……私、声が出てる……。」


「あぁ、聞こえるよ、ケイの声が聞こえるよ。」


そう言ってジョーが私を抱き締めてくれた。


「良かった……、本当に良かった。」


そう言ってバイロンさんも私を抱き締めようとした……。

私は一瞬ためらった。

一瞬ではあったけど夢を思い出してためらってしまったのだ。


そのためらいはジョーとバイロンさんも気付いてしまい、私はバイロンさんの顔を見ることが出来なかった。


「旦那様、悲鳴が聞こえましたが、何かありましたか?」


「ハミルトンか……、ケイが……、ケイが話せるようになったんだよ。」


「うんまぁ! 本当ですか!?

ケイお嬢様、良かったですね。

本当に、本当に良かったですね。」


ハミルトンさんの後ろからひょっこり現れたクリスティンさんが、私を抱き締めようと側にきた。


「うん、クリスティンさんありがとう。」 


「うんまぁ、なんて可愛い声なんでしょう。」


誉められて恥ずかしいけど嬉しい。


「でも、こんな夜中にどうなさったんですか?」


「あのね、怖い夢を見たの…………。」


そう言うと、私をギュッと抱き締めて

「このクリスティンが来ましたから、もう大丈夫ですよ。

もう怖くないですからね。

さあ、もう一度寝てください。」


そして優しく布団を掛けてくれた。


「さあ、旦那様たちもケイお嬢様がゆっくり眠れるよう、お部屋へお戻りください。」


みんな部屋から出ていこうとしていたので、思わず近くにあった服を握り締めた。


「うん?  ……ケイ?」


「お願い……一人にしないで……。」 


多分無意識のうちに掴んでしまったのだと思う。

でも、出てきた言葉は私の本心だった。


「大丈夫、一人にはしないよ。

約束しただろう? もう離さないって……。」


「でも夢で……、身を引くからって……いなくなっちゃった……。」


「夢で?」


「うん。

他の人を選んだからって……もう私の側にいられないって……、いなくなっちゃった……。」


夢の話を理不尽だとわかっていながら思いつき怒りをぶつけた。


「いかないでって手を出したら、触るなって……手を払われた……。

私を置いて他の人といなくなっちゃった!

もう私のこと……愛してないの?

もう側にいてくれないの?」


次から次へと流れる涙を拭う事もせず、怒りをぶつけた。


「私を愛してるって言った人は、みんなみんないなくなっちゃう。

お父さんは私を捨てた。

お祖母さんは私を知ろうともしなかった。

お母さんは何時も側にいるって言ってたのに……離れないって言っていたのに……死んじゃった……。


バイロンさんは?

バイロンさんは何時まで側にいてくれるの?」


バイロンさんは私を抱き締めながら優しく頭を撫でてくれた。

何時も何時も、バイロンさんは、私が泣くと頭を撫でてくれる。

優しく何時までも頭を撫でてくれる。


「ケイ、何時までって……俺が死ぬまで、いや死んでも側は離れないよ。

ケイから離れると俺の方がケイが無事か心配で心配で、心が壊れてしまうよ。

ケイに触れて、やっと側にいるって確認出来て、心が落ち着くんだよ。

俺の人生はケイを中心に回っているんだよ。

ケイがいなければ俺は生きていられない。」


「バイロンさん……。」


「ケイ、愛しているよ。」


優しく耳元で囁いて、私の心が震えるようなキスをくれた。


何度も何度も、愛しているよと繰り返し囁きながら、私の唇と心を奪っていった。













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