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第二章

 ミミルとジュリアーノ、ヘルギは、あぜ道のような村のど真ん中を歩かされ、空腹の旅人ふたりは既に力つきて倒れんとしていた。

「ミミルよぉ。まだ歩くのかい」

 ジュリアーノが尋ねると、

「もう少しですよ」

 とミミル。

「だいたいなぁ。俺とジュリアーノは腹が減ってのたれ死にしそう、といったではないか! それをなんだ貴様は! カワイイのは顔だけか!?」

 ヘルギがキレてミミルをいじめようとするところ、ジュリアーノがあわてて彼を羽交い締めにする。

「押さえて先生。相手はカワイコちゃんでしょ;」

「てめーは女なら何でもイイくせに、でしゃばるんじゃねえ!」

 ジュリアーノは想った、そうとう腹ぺこだからキレているんだろう、と。

「ミミル、俺もさすがに限界がきてしまった。このへんで何か食べさせてくれるところはないか?」

 ミミルは周囲を見回し、それらしいところ、すなわち食事どころを探そうとするが、どこにも見あたらない。

「困りましたね」

 あっけらかんと言い放つミミルに対し、ヘルギはブチ切れ寸前。

 歯ぎしりするわ、意味不明なことを言い出すわで何を言っているか分かりませんがな^^;

 三人が立ち往生していると、ロングソードを背負った若者が通りかかり、ミミルに声をかけた。

「よお。ミミルじゃねえか」

「あ、ヨクルさん。ちょうどいいところに」

 首を傾げるヨクルだったが、事情を聞いて、持っていた弁当を快くヘルギとジュリアーノに差し出す。

 ヘルギが弁当のサンドイッチを受け取る直前、ヨクルの瞳が輝いた。

 ヘルギの左手にはめられたソロモン王の証に気づいたのだった。

「いい指環だな」

 ヨクルは心にもないお世辞を言った。

 ヘルギはそれを見抜いていたので、

「そう想うかね」

 と邪悪そうな笑みを漏らす。

「ああ、それ、売ってくれよ」

 ヨクルは気前よく金貨を出してきた。

 ヘルギはジュリアーノと顔を見合わせる。

「あいにくだが、こいつは売り物じゃあない。欲しければ別のを望むのだな」

 ヘルギはサンドイッチをほおばった。

 ヨクルはなぜかこの指環に執着し、ヘルギから離れようとしなかった。

「ミミル、あいつの素性は?」

 うんざりした口調でミミルに尋ねるヘルギ。

「ヨクルさんですか、お父さんは王都バルムンクに仕える英雄なんです。ヨクルさんも騎士になりたがっているようですが・・・・・・」

「ですが、なんだ」

「はあ。お父さんと比べられるのがイヤで、騎士になることを拒んでいるらしいんです」

「ふん、なるほど」

 ヘルギが歩きながらヨクルを振り返った。

「おまえにはコイツがなんなのか、わかっているんだな?」

 ヨクルは、

「さあ」

 と肩をすくめ、その様子を気に入らなく想い、ヘルギは舌打ちする。

 ――あいつのしっぽをつかめ。

 ヘルギがジュリアーノに目配せをした。

 ジュリアーノは片目を閉じて、ヨクルに話しかけている。

「ミミル、おまえはどうなんだ」

 ヘルギが指環をちらつかせ、

「コイツがなんなのか、おまえたちは知っているんだろう?」

「いいえ。私は知りません」

 ミミルの困った顔からは、ほんとうに何も知らないといった風に見えたのだが、ヘルギは疑心暗鬼に襲われ、疑わずにいられない。

 一方でジュリアーノは巧みな話術を活用して、指環の話しに持ちかけていった。

「なあ、どうしてあの指環が欲しいんだ?」

 すると今度はヨクルが尋ねてくる。

「それじゃあ、なんであんたらはあれを大事に持ち歩いているんだ。実はウチの家宝に、あれとよく似た指環があって・・・・・・」

 ジュリアーノはさりげなくヘルギに視線をはわす。

 ヘルギは首を横に振った。

「勘違いだろ。だってあれは」

 ジュリアーノが言いかけると、ヨクルは神経をたかぶらせ、

「いいや、間違いじゃない。ほんとうだ! あれは神の王の証! おれのじいさんが守ってきた指環なんだ」

「貴様ごときに扱える代物じゃねえんだよ、コイツは」

 ヘルギがふん、と鼻を鳴らす。

「こいつはある王者が所有していた、悪魔封じの指環。だがじっさいは、神封じでもある。様々な神を殺してきた、曰く付きの指なのだ。貴様のような青二才にこいつが使えると想うのか」

「おまえこそ、おれより歳がしたじゃないか」

 ジュリアーノもヘルギも、その言葉に苦笑する。

「俺はヘルギ=ストルルソン。かれこれ、千年近くは生きていることになるかな」

「先生は、不老不死なんだよ」

 ヨクルはそれを聞いて、青ざめていた。

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