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メイドカフェでクラスの清楚系貧乏美少女が働いていた!?~バイト禁止の学校に通う俺は、同じクラスの美少女と【秘密を共有】する~  作者: 早野冬哉


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37.顔合わせ

 調理実習があった週の日曜日。今日も昼から鈴が家に来ていた。


「鈴。今日からは前に言ってた裕太と慎吾も含めた四人で連携の練習も始めるぞ」


「うん……」


 鈴がガンドランに触れてから一週間。鈴は操作に慣れるのも早く、あることに特化した練習も、まだ未完成ではあるが順調だった。そこで、大会に出るメンバーでの、実戦に近い形式の練習に切り替えることにしたのだ。


「……おっ? 春馬もういるのか、早いな」


「おまたせ春馬、裕太」


 通話に裕太と慎吾が入ってくる。そこで俺は、二人に鈴を紹介するためにマイクをオンにした。


「裕太、慎吾。四人目のメンバーを紹介する。……山下鈴だ」


「山下鈴です。今回は初心者のわたしなんかをチームに入れてくださりありがとうございます」


 俺が促すように視線を送ると、鈴は淡々と挨拶を終える。すると、俺たちのムードメーカーである裕太がいち早く反応した。


「山下さん声めっちゃかわいくないっ?」


「えっ……?」


「山下さんは今春馬の部屋にいるんだろ? ……まさかオレより先に春馬に春が来るとはなー。羨ましいなおい!」


「よかったね春馬。オタクの春馬に彼女ができるなんて奇跡だよ!」


「いや、だから前に違うって説明しただろ……!」


 俺は二人の勘違いを否定しつつ鈴に目をやる。すると、ハイテンションな二人に呆気にとられて鈴の肩の力が抜けていくのが見えた。


 やっぱり鈴、緊張してたんだな……。


「あー、一応紹介するな。……声がうるさい方が裕太で、声が高い方が慎吾だ」


「おい春馬、声がうるさいは余計だろ! ……っとオレは西川裕太。プレイヤーネームはシンプルに『ガンナー』で、今はサッカー部に入ってるんだ。よろしく!」


「ボ、ボクは若田慎吾、です。プレイヤーネームは『グリムリーパー』。しゅ、趣味はパソコン弄りとアニメだよ。よ、よろしくね……」


「よろしくお願いします……」


 裕太は運動部全開のパワフルな声で、慎吾は陰キャオタク丸出しで自己紹介を終える。


「鈴。あの二人に敬語はいらないから」


「ああそうだな! 同い年なんだし、敬語はやめてくれっ!」


「うん。敬語だと連携も遅れるしね」


「わかりまし──わかった。努力するね……」


 こうして、大会に向けた四人での練習は始まった。


***


 翌火曜日。三時間目の移動教室が終わり、わたしが教室に戻る途中。階段を通る時に、上から声が聞こえた。


「……れマジっ!? じゃあ急い……いとっ!」


 この声って愛希の……。


 瞬間、わたしの脳裏には愛希が春馬に告白した時の光景が思い出される。


 ……ううん。大丈夫。


 頭の中に次々と湧いてくる苦い記憶を振り払って、わたしは階段に足を掛けた。そうして見えたのは、愛希と長谷田の二人だった。


「愛希に、長谷田くん……どうしたの?」


「あっ、鈴! 聞いて聞いてっ! 長谷田の話だと春馬の誕生日、明日なんだって」


「えっ……!? そうなの?」


「う、ん……それでおれ、誕生日プレゼント……何、あげたらいいか、わからなくて……それに、お祝いとか……するものなのかも、わからなくて……」


 鋭い目つきのまま、長谷田はモゾモゾと経緯を話す。


「そう、なんだ……」


 長谷田の話を聞いて、わたしは床を見つめ考え込んだ。


 春馬くんの誕生日……何か日頃のお礼をできないかな……。


「でも今って、アレがあるから春馬も忙しいよね? だから今年は、プレゼントだけにした方がいいかなって思うなー」


 愛希の言う「アレ」とは、ガンドランの練習のことだろう。正直、まだ長谷田に事情を話す決意が固まっていなかったから、愛希の気遣いはありがたかった。


「……? おれ、よくわからない、けど……プレゼントだけの方が、いいってこと?」


「うんっ。そうだね」


「金城さん、は……何を、渡す……?」


「うーんそうだなー……ここはちょっと攻めよっかなー?」


 愛希、何するつもりなの……?


 飄々とした口調の愛希は薄く歯を見せ、わたしに挑戦的な視線を送ってくる。わたしは春馬と一緒にいたいから、そのためにも愛希に負けるわけにはいかない。


 だけどわたしには、プレゼントを買うお金も時間もないし……。


「どうすれば──」


「おれは、どうやって、プレゼント……選んだら、いいかな?」


 思わず口に出してしまいそうになった弱音を、長谷田の疑問がかき消してくれた。そのことに胸を撫でおろしつつ、わたしは何かヒントを得ようと愛希の答えに耳を傾けた。


「んーそうだなー。……とりあえず、春馬がもらって喜びそうなもの──たとえば趣味に合うものとかってどうっ?」


 それも、わたしには無理だよ……。


 表には出さずに心の中で落胆するわたしとは裏腹に、長谷田は何か思いついたらしい。彼は普段よりもはっきりと話した。


「それ、いいね。ありがとう、金城さん」


「いいっていいって! 役に立てたならよかったよー」


 嘘偽りのない、明るくて眩しい笑顔を湛える愛希。彼女はわたしの横を通り抜けるその一瞬に、耳元で囁く。


「今回は恋のライバルとしての勝負だねっ。……だから、助けてあげないよ」


「……っ!?」


「長谷田も鈴も早く教室戻ろっ? そろそろ次の授業始まっちゃうよ!」


 甘い香りを漂わせ階段を降りていく愛希に、わたしは何も言い返せなかった。


 わたしはどうすればいいの……? プレゼントを買うお金も時間もないわたしが、春馬くんにできることって何……?


 その答えが見つからないまま四時間目の授業は終わり、昼休みになった。


「どうしたんだ鈴? なんかずっと考え事してるみたいだけど、何かあったか?」


「ううん……何でもないの……」


 昼休み終わりに春馬にそう聞かれても、わたしはうわの空で誤魔化した。


 それからも答えは見つからず、ガンドランの練習の時だけは使命感でなんとか頭を切り替えることができたが、わたしは夜眠ることができなかった。


 ……っそうだ。わたしは、わたしのできることをやればいいんじゃないかな……? それで春馬くんが喜んでくれるかはわからない……でも、何もしないよりはずっといい、よね……?


 時刻が深夜二時を回った頃。ようやくわたしは答えを見つけ、眠りにつくことができた。

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