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メイドカフェでクラスの清楚系貧乏美少女が働いていた!?~バイト禁止の学校に通う俺は、同じクラスの美少女と【秘密を共有】する~  作者: 早野冬哉


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35.調理実習②

「そう言えば、長谷田はどうして料理が得意なんだ?」


 俺は鍋で煮たカレーの具材にカレールーを入れながら、長谷田に聞いた。すると長谷田は目を細め、震えに震えた声で返事をくれた。


「おおお、おれ……料理、好きで……よく、家族に作ってる、から……」


「へぇー意外ー! 長谷田って料理好きなんだー」


「う、ん……むむ、昔から……」


「そうなんだー」


 このグループの中で唯一の陽キャである金城が話をつなぐ。その時、カレーにとろみが出始め完成が近づいた。


「あー、そろそろカレーできるから、誰か皿取ってきてくれないか?」


「わたし、取ってくるね」


「おれ、取ってくる……」


 鍋の様子を見てそう言うと、山下と長谷田が同時に立ち上がった。


「なら二人で皿とスプーンを人数分頼む」


「うん」


 そうして二人が食器を取りに調理台を離れてすぐ、金城が横から俺の顔を覗き込んできた。


「金城さん……近くないか……?」


 俺が金城と反対の方を向くと、金城は小悪魔的な笑みを浮かべ俺の正面に回り込んでくる。


 ……っ!


 俺は再び逆を向き、金城から目を逸らす。


「えーいいじゃん! だって鈴ばっかりズルいよ。あたしだって町川と二人になりたいのっ!」


「……金城さんが友達でいいって言ったんだろ? だったら友達の距離感でいてくれよ」


 俺は金城の接近をやり過ごそうとカレーを凝視する。すると金城は声のトーンを落として、ボソッと本音を呟いた。


「そうだけどさ……あたしだって、鈴みたいに町川と二人だけの特別な場所がほしいよ……」


 しょんぼりとした様子の金城に思わず顔を上げる。


「金城さ──」


「アハハ! やっとあたしの顔見てくれたっ!」


 俺が顔を上げた途端目に入ったのは、いたずらが成功した子供のように笑う金城の無邪気な笑顔だった。


 はっ!? ……ああそうか。俺は今、からかわれたのか……。


「心配して損した」


 視線を鍋の中に戻してぶっきらぼうな声を投げると、金城は茶化すように謝った。


「ごめんって! ……でもさっき言ったことはあたしの本音だよ。だから、今度は二人だけでゲーセンいこっ? 絶対だからね!」


 それはまあ、友達の範疇……なのか? いや、恋人レベルじゃ──。


「町川くん。これ、お皿……」


「ん? ああ山下さん。ありがとな」


 まあ、今はいいか……。


 皿を取ってきた山下の声に思考を遮られ、俺は考えるのをやめた。


***


「いっただきまーす!」


 盛り付けが終わり、俺たちは他のどのグループよりも早くカレーを食べ始める。


「んー! うまっ! やっぱ自分たちで作るとおいしいねっ」


 カレーを口にした途端、金城はずっと見ていたくなるような明るい笑顔を浮かべる。その隣では、山下も目元を緩め、おいしそうにスプーンを口に運んでいた。長谷田も、表情の変化はないがひっきりなしにスプーンを動かしてカレーを食べている。


 まあ、悪くないな。


 俺もそんなことを思いながらカレーを食べていると、ふと長谷田の皿を見て違和感を覚えた。


 なんか、にんじんめっちゃ残ってないか?


「……長谷田って、にんじん苦手なのか?」


「んっ……!?」


 その瞬間、スプーンを口に入れていた長谷田は肩を跳ねさせ目を見開いた。


「えっ、そうなのっ!? でもじゃあなんで長谷田はあんなににんじんの皮むくの上手いの?」


「えっ、と……う、ん。おれは、にんじんが……無理、だよ。けど、妹が……にんじん、好きで、よく……作ってる……」


「へぇーでも、その見た目でにんじん苦手とか、ギャップ萌えでかわいーじゃんっ!」


 金城のからかいに、長谷田は思いっきり目を泳がせ恥ずかしがる。そんな長谷田に、山下は優しい声色で声をかけた。


「長谷田くん。妹思いなんだね……」


「ってか、長谷田って妹いたんだな。兄弟は一人だけなのか?」


「う、ん……二つ下の、妹が一人、だけ……」


「なにそれ気になるー! 妹ちゃんの写真とかないのっ?」


 話題が変わり、落ち着きを取り戻した長谷田は、自分のスマホを取り出し調理台の上に置いた。


「……っ!?」


「……これが、長谷田の妹なのか!?」


「何この子……か、かわいすきでしょ!?」


 長谷田のスマホ画面に映し出されていたのは、まるで西洋のお姫様のようにかわいらしい少女だった。画面の中の長谷田の妹は、長谷田と同じ金髪の髪をふわりと漂わせ、温泉街を走っていた。


「な、名前は……加奈……」


「加奈ちゃんかー。いつか会ってみたいなー……」


「……う、ん……」


 ガチガチに固まって返答する長谷田は膝の上で強く手を握っていて、会話するのもそろそろ限界のようだった。


「まあ、とりあえずカレー食べないか? そろそろ食器片付ける時間だし」


「あっ、ホントだ」


 俺は半ば強引に会話を打ち切り、長谷田にそっと耳打ちした。


「長谷田。今日、だいぶ喋れてたな」


「ほんと、に?」


「ああ。ほとんど話したことない女子相手にそれだけ話せるのはすごいんじゃないか?」


「あり、がとう……」


 こうして、長谷田がコミュ障克服に一歩前進した調理実習は幕を閉じた。

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