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メイドカフェでクラスの清楚系貧乏美少女が働いていた!?~バイト禁止の学校に通う俺は、同じクラスの美少女と【秘密を共有】する~  作者: 早野冬哉


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25.和解

 放課後。俺は金城から来た「町川。今日の放課後空き教室に行って」というロインに従い、空き教室に来ていた。


 金城さん。結局何の用なんだ?


 俺は窓際に立ち、ロインの画面を見返す。そうしていると、ふいにガラガラっと音を立てて扉が開いた。


「金城さん。それで用って──」


 スマホから目線を上げた俺は、目を見開き言葉を失った。金城だと思って声をかけた相手が、山下だったからだ。


「山下さん……」


 あまりの驚きに、誤解を解くための説明が出てこない。今にも山下が走り去ってしまうかもしれないのに、俺は彼女の名前を呟くことしかできなかった。


 待ってくれ山下さん! 俺はもう一度山下さんと一緒に──。


「町川くん……」


 山下は俺の名前を呼び、扉を閉める。彼女は失くした宝物を見つけたように、安心と喜びが混ざった微笑みを浮かべた。それから山下は一歩一歩噛みしめながら、俺の前まで来る。すると山下は唇をきゅっと結び、頭を下げた。


「ごめんなさい……!」


「はっ!? なんで山下さんが謝る──」


「わたしの勘違いで町川くんにも愛希にも迷惑をかけたから……だから、ごめんなさい……!」


「顔を上げてくれ山下さん! そうじゃないだろ。謝るのは俺の方だ。悪かった! 俺が変な勘違いをさせたせいで山下さんを傷つけた」


 俺も山下に頭を下げる。それと同時に、山下は顔を上げながら自分が悪いと主張する。


「違うよ町川くん。わたしが早とちりしたのが悪い──」


 その瞬間、山下の後頭部が俺の額を捉えた。


「い……っぅ……」


「いっ……!?」


 俺の額と山下の後頭部はコツンと軽い音を立ててぶつかった。俺たちはぶつけた個所を押さえ、思いのほか強い衝撃にうめく。すぐに痛みが引いて山下の様子に目を向けると、ちょうど山下も顔を上げて俺を見た。


 狭い空き教室。手を伸ばせば届く距離で、俺と山下の視線が交錯する。


「ふっ……ハハッ!」


「ふふっ……ふふふっ!」


 俺たちは、こみ上げてくる可笑しさに耐えきれず笑いあった。


 小さな空き教室に笑い声を響かせてしばらく。ようやく笑いが止むと、俺たちは目を見合わせ、どちらともなく椅子に座る。


「山下さん。バイトの時間は大丈夫なのか?」


「うん……もう少しだけ時間ある」


「そうか……」


 ただの世間話をするだけで幸せがこみ上げてくる。訪れる沈黙も心地よかった。しばらくして、カチッと時計の針が動くと、山下は徐に口を開いた。


「……愛希から聞いたの。町川くんが愛希の告白を断ったって」


「やっぱり、見てたんだな」


「うん……でもどうして? どうして町川くんは愛希の告白を断ったの?」


「それは……」


 俺は視線を泳がせて口ごもる。


「金城さんの告白を受け入れたら、山下さんと会いにくくなるからだ」


 とは、さすがに恥ずかしすぎて言えなかった。代わりに俺は、無難な返答をする。


「金城さんとはほとんど関わりなかったし、金城さんのことよく知りもしないで付き合うのはよくないと思ったんだ」


「やっぱり、そうだよね……」


 ほんのりと頬を赤く染める山下は、それっきり口を閉ざした。


 そこでふと、俺は山下の分の弁当が残っていたことを思い出す。カバンから取り出して確認すると、保冷材はまだ冷たかった。


 まだ食えるな。


「山下さん。今日、昼ごはんは食べたか?」


「ううん。食べてない」


 返事をする山下は、何かに期待するように目を上げた。


「なら、弁当食うか? 保冷材もまだ冷たいし、まだ食べられると思うんだが」


 そう言って俺が弁当を取り出すと、山下は弁当箱を大事そうに受け取り、表情を緩めた。


「ありがとう……」


 山下は弁当の蓋を開け、箸を持つ。それから、手作りの唐揚げを小さな口でかじった。それから山下はゆっくりと唐揚げを味わい、呑み込む。


「やっぱり……おいしい」


 陽だまりのように温かい微笑みを浮かべる山下。彼女の目には、薄っすらと涙が浮かんでいた。


「そうか。よかった」


 俺も自然と表情が柔らかくなる。そうして唐揚げを食べる山下を見ていると、彼女は躊躇うように目を泳がせ、俺を見た。


「あの……町川くんも、食べる?」


「えっ?」


「あ……!? ううんなんでもないの。……町川くんだって昼休みにお弁当食べてるもんね。町川くんと一緒に食べたいなって思ったんだけど、ごめんね……」


 そう言って山下は耳の裏を触り、顔を逸らす。その仕草を見て、俺はカバンから自分の箸を取り出した。


「いや、俺も少し腹空いてたんだ。山下がいいなら、少しもらっていいか?」


 俺は、照れ隠しに前髪を触りながら山下の返事を待つ。すると山下は口元を緩め、はにかんだ。


「うん」


 そうして俺たちは仲直りし、二人で一緒の弁当をつつく。


 隣に山下がいる。その安心感とうれしさに当てられて、時間はあっという間に過ぎた。


「そろそろ行かないと……」


 山下は弁当を食べ終えると、名残惜しそうに俺を見る。


「そうか。バイト、がんばれ」


 俺は山下が気兼ねなくバイトに行けるよう、できるだけ素っ気ない声を出した。すると、山下は椅子から立ち上がり、カバンを取ろうと前かがみになる。


「うん。じゃあ、また──」


 その時だった。山下の足がふらつき、山下の体は大きく横に傾いた。


「山下さん!」


 俺は咄嗟に立ち上がり、山下の体を受け止める。だが山下は、俺の腕の中で気絶していた。よく見ると山下の目元にはクマができており、濃い疲労感を感じさせる。


「フゥ……ハァ……」


 ……とにかくまずは保健室に運ぼう。


 深呼吸をして自分を落ち着かせ、俺は山下をお姫様抱っこの要領で保健室まで運んだ。

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