表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メイドカフェでクラスの清楚系貧乏美少女が働いていた!?~バイト禁止の学校に通う俺は、同じクラスの美少女と【秘密を共有】する~  作者: 早野冬哉


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/41

20.ゲーセン

 放課後。俺は金城たちとゲーセンに来ていた。


 これでいけるのか?


 俺はしっくりこないなと思いながらもクレーンゲームのボタンを離す。すると、アームはウサギのぬいぐるみを捉えた。だが、ぬいぐるみはほんの少し持ち上がった後、すぐに元の場所に落ちた。


「町川っ、クレーンゲーム下手すぎー!」


 俺の隣で一部始終を見ていた金城が、すぐさま茶化す。俺は金城から目を逸らし、呟いた。


「いやまあ、やったことなかったし……」


「アハハ! だったらあたしがお手本見せてあげるよっ!」


 そう言うと金城は早速硬化を投入し、俺を押しのけてクレーンゲームの前に立つ。


「こうして……ここっ!」


 タンッ、タンッとボタンを操作する金城。彼女によって迷いなく操られたアームは、一直線にウサギのぬいぐるみを掴んだ。そうして持ち上げられたぬいぐるみは落とし口へと運ばれていく。


「よしキタっ! これはいったでしょ」


「すごいな……」


 勝利を確信した金城の姿に、俺は素直に感嘆する。だが、安定して見えたぬいぐるみは突如、ポトンと台上に落下した。


「うっそー……絶対取れたと思ったんだけどなー。やっぱ美知留みたいにはいかないかぁー」


「ん? 美知留って野原さんのことだよな。そんなに上手いのか?」


 のほほんとしたイメージの野原がクレーンゲーム上手だと言われてもピンとこない。俺が首を傾げていると金城が、近くのクレーンゲームに挑む野原を指さした。


「ほら、見てみ! 美知留すごいから」


 金城に促され、俺は野原がいるクレーンゲームに歩み寄る。すると、ちょうど野原が硬貨を投入したところだった。


「ん? 愛希どしたん?」


 俺たちが近づくと、野原の隣に立っていた芦田ひまりが言外に、


「二人っきりはもういいの?」


 と聞いてくる。


「あーいや。ちょっと美知留のクレーンゲームの腕を町川に自慢したくなっちゃってさー」


「ふーん……」


 ……ん? なんだ?


 芦田から一瞬、白い目を向けられた気がしたが、彼女は何事もなかったかのように野原の方を見た。


「いくぞぉー……」


 野原は気の抜けた掛け声で気合を入れる。彼女はポワポワした表情のまま、クレーンゲームのボタンを押し込んだ。


「見てて町川。美知留の必殺技が出るよっ!」


 得意げな笑顔を浮かべた金城が、俺の半そでの裾を摘み引っ張る。


 なんか少し照れ臭いな、これ……。


 俺は意識的に金城を視界から外し、野原の操作するクレーンゲームを見た。それは、四角い長方形の箱が透明な床の上に並べられているタイプだ。


「いけぇー……!」


 ふにゃふにゃした声とともにボタンから手を離す野原。彼女の手によって操られたアームは、正確無比に箱の角を突く。すると、アームの重みに押された箱がクルッと回転し、落とし口に大きくせり出した。


「すごっ……」


 イリュージョンスピン……だったか? 確か、押す場所が少しズレるだけで失敗するかなり難しい技だったよな。……それを一発で決めるのか!?


 やがて箱はバランスを失い、落とし口に落ちた。


「ねっ! 美知留すごいでしょ」


「ああ。めちゃくちゃ上手いな」


「でしょでしょ! あっ、でも、美知留に目移りしちゃダメだからねっ!」


 俺の懐に踏み込み、金城は挑戦的な笑みで下から俺を覗き込む。


「わかってる……それにそもそも、俺と金城さんは友達なんだから、目移りも何もないだろ」


「アハハ! 町川、説得力なさすぎっ!」


 金城から顔を逸らした俺を指さして金城が笑う。顔を逸らすと説得力がなくなるのはわかっていたが、学年トップの美少女が繰り出した上目遣いを直視できるほど、俺は強くなかった。


「ねー愛希、町川。次あれやろー」


 金城のもう一人の友達──無気力そうな半目が特徴的な高宮雪音が目で指したのは、レーシングゲームだった。


「オッケー雪音。やろやろっ! ほら、町川も行くよ!」


「ああ。わかっ──」


 俺の返事も待たずに金城は俺の手首を掴んだ。そしていたずらっぽい笑顔を浮かべ、俺をレーシングゲームのところまで引っ張っていく。


 なんかこれ、友達っぽくていいかもな……。


 そう思うと、俺の顔は自然と綻んだ。


「じゃ、順番決めしよっ! ここのは三台しかないからね」


 弾んだ声でそう言って腕まくりし、じゃんけんの構えを取る金城。彼女が見せる、裏表のない満面の笑顔に、俺は女子たちの間に混ざるという緊張さえも忘れていた。


***


「じゃ、町川。お先にー!」


 じゃんけんの結果、最初にレーシングゲームをするのは金城、野原、高宮の三人になった。その間、俺と芦田ひまりはガラガラに空いている音ゲーの椅子に座って順番を待つことにした。


「町川って、なんで愛希の告白断ったん?」


 椅子に座った途端、芦田が口を開いた。芦田の言葉は刺々しく聞こえたが、実際に彼女の表情を見ると、どうやら俺を責めているわけではないらしい。芦田はただ単純に疑問を口にしただけだった。


「町川って彼女いるわけでもないしょ? 他に好きな子でもいるってこと?」


「まあ……そうだな」


 確かに俺は、山下さんのことが好きなのかもしれない……けど、俺なんかじゃ釣り合わないってこともちゃんとわかってる。


 だから俺は、山下に告白するつもりもないし付き合えるとも思っていない。今の関係が一番だと、そう思っている。


「ふーん。そ……」


 芦田は俺から視線を外してスマホを取り出し、前髪を弄りだす。俺も会話が終わったと思い、レーシングゲームの様子に目を向けた。けれど、芦田はスマホを弄ったまま口を開いた。


「町川が誰を好きだろうと別にいいけど、愛希ともちゃんと向き合ってあげてよ」


 不愛想で刺々しい芦田の声。だがその中には、親友の恋路を気遣う優しさが紛れていた。そんな芦田に、俺も真剣に返事をする。


「ああ。わかってる」


***


 何戦目かのレーシングゲームが終わり、俺と金城の二人が休憩になった。


「いやー。町川ってこういうレースゲームも上手いんだねー!」


「まあ、何回かやったことあるからな」


 俺がぶっきらぼうに返すと、そこで会話が途切れる。電子的な音楽が鳴り響くゲーセンの中、俺たちの間には沈黙が訪れた。


 芦田さんにはああ言ったけど、金城さんに向き合うにはどうすればいいんだ……?


 俺は、隣で音ゲー台の丸椅子に座り、足をプラプラさせている金城を見て話題を考える。けれど、陰キャの俺ではまったく話題が思いつかなかった。


「……町川」


 俺の代わりに沈黙を破ってくれたのは金城。彼女は俺の名前を呼び、ポケットからスマホを取り出した。


「あたしとロイン交換しない? 友達、なんだし……」


「ああ……そう言えばしてなかったな」


 金城にしては珍しい、歯切れの悪い喋り方に戸惑いつつも、俺は自分のスマホの画面に友達登録用のQRコードを表示させる。


 それを金城が読み取ると、彼女はスマホの画面を見て喜びを噛み締めるように微笑む。それから金城はいつもの元気を取り戻し、明るい声で笑った。


「ありがとっ!」


 同時に、俺のスマホからピロリンッと通知音が鳴る。見ると、金城からは「よろしくね!」と書かれたウサギキャラのスタンプが送られてきていた。


 俺は、気分良さげな視線を送ってくる金城を一瞥し、「よろしく」とメッセージを送信する。すると、金城はトーク画面を見て笑った。


「アハハ! ここでスタンプ使わないの、めっちゃ町川っぽいね!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ