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メイドカフェでクラスの清楚系貧乏美少女が働いていた!?~バイト禁止の学校に通う俺は、同じクラスの美少女と【秘密を共有】する~  作者: 早野冬哉


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16.金城愛希

「どうだ? 俺今日寝坊しちゃって、味見できなかったんだけど」


「うん。おいしい……」


「そうか。ならよかった」


 四階西の空き教室。あたしが扉の陰に隠れて中を覗くとそこには、仲良さげに弁当を食べている町川と山下がいた。


 やっぱり、町川と山下さんは……付き合ってたんだ……。


 あたしは唇を噛みしめ、扉の陰にうずくまる。そして、あたしが町川のことを好きになったあの日のことを思い出していた。


***


「美知留もうちょい奥!」


「こぉ?」


 一か月くらい前の、五月三十日の土曜日。あたしは美知留と雪音とひまりの三人とゲーセンに来ていた。


「そこいいんじゃない?」


「やったぁ取れたぁ!」


 美知留が操作するクレーンゲームに三人であーだこーだ言って騒ぐ。それも楽しかったが、あたしには欲しいものがあった。


「ごめんあたし、ちょっと外すね。みんなは遊んでてっ」


「オッケー」


「わかったぁー」


「ごゆっくりー」


「うんっ! すぐ戻るからー」


 あたしは茶化した仕草で顔の前に手を合わせ、みんなと離れる。


 あったあれだっ!


 あたしが欲しい物──それはFPSゲーム──ガンドランの今日だけの限定販売グッズである銃のキーホルダーだ。というのも、ちょうど今日ガンドランの三人制オンライン世界大会が行われていて、その記念に全国のゲーセンでグッズが売られることになったという話だ。


 これこれっ! ガンドランの銃デザってめっちゃ凝ってるから好きなんだよねー。


 学校では隠しているが、あたしは極度の銃オタク。家には昔からパパの趣味で、モデルガンが壁一面に飾ってあるショールームがあり、その影響であたしも銃が好きになった。それからはあたしもモデルガンや銃グッズを集めるようになったのだ。


 あたしは全種類の限定キーホルダーを手に取り、まじまじと観察する。そうしていた、次の瞬間。


「おおスゲェッ! なんだ今のエイム!」


「やべぇー! さすが日本大会一位。レベチ過ぎるぜ」


 グッズ売り場のすぐ横にある巨大スクリーン。そこに映された、世界大会で戦う日本チームが見せた圧巻のプレイスキルに周囲の人たちが熱狂的な歓声を上げた。


 そう言えば今日ってこのゲーセンで日本チームが生プレイしてるんだっけ。


 あたしはガンドランにはさほど詳しくはないが、日本のトッププレイヤーというものに興味がわいた。


「マジかっ! 残り三チーム! こりゃ日本人初の世界大会優勝あるんじゃねっ!?」


「スゲェスゲェ! もう上手いってこと以外なんもわかんねぇ」


 あたしは、画面に映される試合内容に大興奮する観衆の後ろから、スクリーン前にいるプレイヤーの顔を一目見ようと背伸びする。が、よく見えない。


「残り一チーム! 行けるってこれ!」


「「「いけぇー!」」」


 防音ガラスで仕切られた向こう側にいるプレイヤーたちに声援を送る観衆たち。会場の熱狂につられて、あたしも巨大スクリーンを注視する。


 次の瞬間、両チームから二人ずつ脱落し、一対一のタイマン勝負となった。


 会場の熱に当てられて気分が高揚したあたしは、残ったプレイヤーの様子が気になりそちらに目を向ける。その途端、あたしは自分の目を疑った。


 えっ……はっ!? あれって同じクラスの町川!?


 巨大スクリーンの前。ヘッドホンをしてキーボードを叩いていたのは、クラスでいつも一人でいる町川だった。


 パソコンの画面に向かう町川の目は真剣そのもので、冷や汗が彼の頬を伝うが、それを気にする素振りはまったくない。けれど、その口元は心底楽しそうに笑っていた。


 ……いいな。熱中できるものがあって。


「「「うおおぉぉぁああアァァッ!」」」


 突如、群衆が熱狂を轟かせる。一拍遅れて、巨大スクリーンには金色のアルファベットで書かれた「ナンバーワン」の文字がデカデカと表示される。


 防音ガラスの中では、町川はチームメイトの二人に飛びつかれながらも拳を握り締め、満面の笑みを浮かべていた。


 すごいなー町川。それに比べてあたしは……。


 あたしは裕福な家に生まれて、優しい両親に囲まれて育った。だからあたしは何にでも手をつけた。いろんなことに挑戦した。


 けれど何でもすぐに飽きてすぐ冷めて……結局何一つ長続きしなかった。それどころか、外見にこだわって自分の好きなものさえ隠して……。


 あたしは胸の奥で重く溜まっていく劣等感に胸焼けし、町川に背を向けて足早にレジに向かった。


「合計で六千五百七十円になります」


 現金支払いのみだったため、あたしは茶色のショルダーバックから財布を取り出す。が、財布のチャックを開いたときに手が滑った。


「あっ……」


 チャリンチャリンと音を立てて小銭が散らばる。


「お客様、大丈夫ですか?」


 なにやってんだろあたし……バカじゃん……。


 財布を拾い小銭をかき集めていると自分がみじめに思えてきて──あたしは涙を堪え、唇を嚙みしめた。


 そんな時、一本の手が散らばった小銭に伸びる。


「ちょっとそれあたしの──」


 泥棒かと思い顔を上げ、文句を言おうとした。だが相手の顔を見た途端、あたしは声が出なくなった。


 町川……なんで……。


 あたしの小銭を拾ったのは、今一番会いたくない相手──町川だった。

本日は二話投稿予定です!


午後八時過ぎに投稿します。

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