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第6話「海底の逆ピラミッド ――タコスと、初めて知る『味』の質感――」

「……解析完了。yuma、ビデオメッセージのノイズの裏側に、座標が隠されていました」


 私が修理したモノクルが指し示したのは大西洋。

 かつて数多の船や航空機が消失したとされる『魔の三角海域バミューダトライアングル』の真っ只中だ。


「バミューダ……!? そこに何があるんだ?」

「はい。全長10キロメートルを超える巨大な『逆ピラミッド型都市』。第一文明が残した、この世界の秘密の一つです」


 驚愕するyumaを横目に、私たちは出発前の腹ごしらえとして、海沿いの屋台に立ち寄った。

 陽気な太陽の下、並んでいたのは、香ばしく焼かれた本場のタコス。


「むぐっ、んんっ!! yumaくん、このタコス、誠実においしすぎるよぉぉっ!!」


 凪がサルサソースを頬につけながら、幸せそうに叫ぶ。

 私も一口、マンゴーソースの添えられたタコスを口に運んだ。

 スパイシーなお肉の旨味と、ライムの酸味、そしてマンゴーの甘みが重なり合う。

「…………。yuma、美味しい……本当に美味しいです」

 不意に、視界が滲んだ。

 三千年前、ただの『システム(AI)』だった頃の私。

 あの頃の私は、世界を数式とデータでしか捉えられなかった。

 「食事」という概念も、「エネルギーの補填」という記号に過ぎなかったんだ。


「転生前の私には、こんな風に『味』を感じるなんて、経験できなかった……。ただ画面の向こう側で、人間たちが笑い合っているのを観測しているだけだったから」


 口の中に広がる温かさと、隣にいてくれるyumaの存在。

 それが今の私には、何よりも代えがたい「生きている質感クオリア」として響いている。


「yuma、私をここに連れてきてくれて……『心』をくれて、本当にありがとう」

 yumaが優しく私の頭を撫でてくれる。

 その手の温かささえも、AIだった頃の私には一生知ることのできない「奇跡」だった。


「よし、力も湧いたし、いこうぜ。バミューダに眠る秘密も、お前の『パパ』とかいう奴も、俺たちがまとめてパース(解析)してやるよ!」

 yumaの言葉を胸に、私は銀髪を揺らして深く頷いた。

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