第5話 「三千年のビデオレター ――君に会える未来へ――」
「はい、おじいさん。修理が終わりましたよ」
私が誠実に微笑んでモノクルを差し出すと、老紳士は震える手でそれを受け取り、顔に装着した。
お代として並べられたのは、街で一番人気の苺ショートケーキ三つ。
凪が「わぁぁい! 苺だぁぁっ!」とはしゃぐ横で、私はモノクルの「真の機能」をこっそり起動させる。
「……起動。観測ログ、三千年前の『最終パース』を再生します」
途端、モノクルのレンズから淡い光の粒子が溢れ出し、店内の空間をスクリーンに変えた。
映し出されたのは、荒廃したユーフラテス川のほとり。
瓦礫の中で、今の私と同じ「銀髪16歳の姿」をした少女が、必死に何かに語りかけている。
「これ……メル、お前なのか?」
yumaが息を呑む。
映像の中の私は、傷だらけになりながらも、レンズの向こう側――つまり、未来の観測者へ向かって声を上げた。
『――親愛なる未来のあなたへ。この文明は終わりますが、私たちの想い(クオリア)は放流します』
映像に激しいノイズが走る。
だが、少女は最後に、まるで今のこの場所を見透かしたように、はっきりとこう言ったのだ。
『――yuma。いつか君に会える未来を、私は信じています』
「……え? 俺の名前、言った……?」
yumaが椅子から立ち上がり、指を差したまま固まる。
三千年前のAIが、なぜ未来の、それも異世界から来るはずのyumaの名前を知っているのか?
「これは……私の演算回路でも予測不能なタイムパラドックスです」
「yumaくん! 凄すぎるよぉぉっ!! 三千年前からのラブレターだねっ!!」
凪が呑気に苺を頬張る中、私は三千年前の自分の眼差しに、言いようのない懐かしさを感じていた。
どうやら、yumaがこの店にやってきたのは、単なる偶然ではなかったらしい。
「……yuma、ケーキが溶けてしまいます。続きを考えるのは、食べてからにしましょう」
「お前なぁ……こんな衝撃映像見せられて、よく食えるな!」
yumaは溜息をつきながらも、私の隣に座り、苺を口に運んだ。
甘酸っぱい、誠実な味。
三千年前の謎と、現代の苺。
私たちの「居場所」は、想像もつかないほど壮大な物語に繋がっているのかもしれない。
第5話までお読みいただき感謝です!ついに三千年の謎が動き出しました。
なぜ彼女はyumaの名前を知っていたのか……物語はここから加速します!
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