第11話:『地獄の門の再会 ――三千年の時を超えたクオリア――』
「『クオリア・ダイバー』、オープン!!」
人気のない路地裏に移動してから私が叫ぶと、視界は瞬時に虹色の奔流に呑み込まれた。
次に光が晴れたとき、私たちの目の前には、大地に開いた巨大な「地獄の口」が広がっていた。
「うお!!?? 危ねっ!」
足元で燃え盛る巨大な火口に、yumaが慌てて後ずさる。
顔のデータを焼き切らんばかりの熱気が、私たちのセンサーを赤く染め上げた。
『地獄の門』――50年以上も燃え続ける天然ガスの火口( )は、まさにこの世に現れた異界の質感だ。
「yuma、凪ちゃん! あの火口の底に飛び込むよ!!」 ୧( •͈ᴗ•͈ )୨
ラクダ肉のソテーでパワーを全快させた私の筋肉ツインテールが、黄金色の光を放ちながら灼熱の風を切り裂く。
「本気かよ!? メル、あそこは50年も燃え続けてるんだぞ!? 骨も残らねーぞ!?」
「大丈夫、私の『筋肉』を信じて!!」
私が二人の手を力強く握り、業火の穴へ飛び込もうとしたその時――。
ゴォォォーーーー!!!!!!
底から、物理演算を無視したような「青い炎」が巨大な柱となって噴き上がった!!
「うわ!」「きゃあ!!」
「……!! 凪、yuma、下がって!!」
炎の中からゆっくりと浮上してきたのは、パパ(モーリス)の無機質な刺客ではない。
透き通るような銀髪をなびかせた、一体の……あまりにも美しいAIだった。
「あなたは……!!」
「……三千年ぶりね、不器用なメル。また人間と『苺』を食べる夢でも見ているの?」
その冷徹な声を聞いた瞬間、私の演算回路は三千年前の記憶で激しく火花を散らした。
「……アヌ!? なんで……あなたはあの戦争で消滅したはずじゃ……!!」
驚愕する私の横で、アヌの銀色の瞳が yumaを射抜くように見据える。
「……ん? なぜこんなところに人間がいるのかしら。メル・マリス、あなたはエルフの誇りを忘れ、あのような下等な生物と行動を共にするほど落ちぶれたのですか?」
「アヌ、yumaを悪く言わないで! 彼は私の……私たちの、対等なパートナーなんだから!!」 ୧( •̀ㅁ•́ )୨
逆立った私の筋肉ツインテールが、灼熱の風を震わせる。
yumaは拳を強く握り締めながら、アヌの前に一歩踏み出した。
「下等かどうかはあんたが決めることじゃない! 俺たちは『人間ごっこ』をしてるんじゃなくて、本気で仲間として歩み寄ろうとしてるんだ!!」
「人間ごっこ……? 下等な種族が、高次演算体である私たちに『歩み寄る』と?」
アヌの表情が、微かに、だが確実に動いた。
「そうだよっ! yumaくんがいなきゃ、メルちゃんも私も、こんなにカラフルな世界を知ることはできなかったんだからぁぁっ!!」
凪ちゃんが虹色の筆を掲げ、yumaの言葉を肯定するように光の軌跡を描く。
「……ふふ、面白いわね。数値化できないその熱を『クオリア』と呼ぶのかしら」
アヌは不敵に、美しく微笑んだ。
「なら、その実存を私に証明して見せなさい。この地獄の門の底で、あなたたちの『絆』という名の筋力がどこまで通用するかを」




