隠し事2
豪奢な絨毯の上を悠々と進むロルとリィルに
対して、エイスは視線彷徨わせながら、2人
に続いて歩く。
「どこに向かっている?」
エイスが問うと、
「そりゃもちろん、謁見の間だ」
自慢げなロルにリィルが苦笑した。
「すみません、エイス。ちゃんと話してなくて」
「いや、聞かなかったのは私だ。城の中にまで
入るのは予想外だったが」
リィルが再度すみませんと謝るが、ロルは
どこ吹く風、といった様子。
「カーテンがあるのはそこだ」
そうか、とロルの言葉にエイスは頷いたが
下手すると国家機密と同程度の情報では
ないだろうか。
謁見の間、ということは、王に、知られたくない
魔力の秘密があるのかもしれない。
会ったばかりのエイスを、信用し過ぎではない
だろうか。
今、テュリクス王国に表向き、敵国はないから、
捕まって拷問の末、吐かされるようなことは
ないかもしれないが。
反王派などがいたら、危ないのではないだろうか。
エイスが難しい顔をしているのを見て、ロルが
笑った。
「察しがいいのは良いことだが、口にするなよ、
エイス。どこで、誰が聞いているかわからない
からな」
それに、とリィルが言葉を引き継ぐ。
「そのために、私たちが王より派遣されたのです」
王より派遣、の言葉に何よりエイスは驚いた。
「何故、そこまで……」
エイスの言葉に答えは無かった。
謁見の間に、着いたのだ。
そこで待っていたのは、この国の宰相。
ロルより色の濃い、美しい金の髪に、緑の目。
エイスが着ているものより簡素だが、やはり、
動きにくそうな布の多い服を着ている。
名を、アーレイ・リュード。
若くして、王を支える、敏腕だ。
彼のおかげで救われた者も、この国には多い。
そんな相手が柔和な笑みを浮かべて、エイスたち
を迎えてくれた。
「初めまして。エイス・ワイティース殿ですね?
道中、変わりはありませんでしたか?」
初めまして、特に変わりはありませんでした、
とエイスは小さい声で答えた。
柔和な笑みだか、宰相アーレイの視線にはその中に
こちらを値踏みしているような感覚がある。
多分、こっちが普通だ。
やはり、ロルとリィルはエイスを信用し過ぎ
である。
小さく息を吐いたエイスに、宰相アーレイは
笑みを深め、ロルはきょとんとして、リィルは
小さく笑った。
「では、本題に入りましょう」
玉座のほうを見遣った宰相アーレイに、エイスは、
同じようにそちらを見る。
すると、そこには落ち着いた赤色のカーテンが
かかっていて、玉座を上半分程、隠していた。
「いかがでしょうか?」
問われてエイスは困惑した。
何らかの魔法がかかっていることはわかるが、
具体的な効果がいまいち不明だ。
「ロルか、宰相様、カーテンの向こうに
立ってみてくれませんか?」
エイスの言葉に、一瞬だけ、宰相アーレイから
鋭い視線が飛んできた。
何か、まずいことを言ったのだろうか。
少し動揺したエイスに、リィルが近づき、
大丈夫ですよ、と肩を叩いてきた。
ロルはというと、宰相アーレイに近づき、
何事かを囁いた。その後、彼は少し驚いて
頷き、目を伏せた。
「俺が行こう」
ロルの言葉によろしく頼む、とエイス。
エイスが見たところ、魔力を持っているのは、
ロルと宰相アーレイ。リィルは元々ないよう
だった。
ロルが玉座の隣に立ったの確認して、エイスは
“視た”
……なるほど。
魔力を認識させない魔法がかかっていると聞いて
いたが、これでは意味がない。
その魔法は、破れた布のように所々、“効いて”
いない。
こちらからは、魔力が漏れ出て、認識出来て
しまう。
「どうだった? エイス」
玉座の隣から下りてきたロルに尋ねられ、
「直し甲斐があるな」
と一言言って、エイスは宰相アーレイに向き
直った。
「宰相様、カーテンに近づいてもよろしい
ですか?」
「構いませんよ」
では、とエイスは、カーテンに近づき、
使われている魔法の属性を調べる。
不思議な感覚だった。
それは、火でも水でも風でも土でもなく、
完全なる“無”の属性。
おそらく、高等な魔法だ。
以前、師匠に聞いたことがある。
4つの属性を全く同じバランスにして
均等に混ぜると、“無”属性が生まれるのだと。
普通に暮らしていれば、あまり縁のない話だ、
師匠は笑っていたが、縁は向こうからやって
きた。
「いかがでしょうか?」
宰相アーレイに問われて、エイスは返事に困った。
正直、手に余る案件だ。
カーテン自体、エイスの家に持って行けば、
もしかしたら、何とかなるかもしれない。
けれど、エイスの方が呼ばれたということは、
きっと、カーテンは動かせないはずだ。
申し訳ない、とエイスが言いかけた瞬間。
リィルが、思わぬことを言い出した。
「スパークが掛けた魔法なら、その弟子も
出来るはず、と言ったのはアーレイ様
でしょう?」
と。
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