隠し事1
馬車の中に長い沈黙が下りた。
けれど、それが答えのようなものだった。
「……何を、どこまで?」
エイスの問いに答えはなかった。
「師匠の、スパーク・ホワイトの行方を
知っているなら答えてくれ」
またも、ロルとリィルから返ってきたのは沈黙だ。
これでは知っていると言っているも同然だった。
「ロル、リィル、頼む」
エイスが頭を下げると、リィルが口を開いた。
「エイスは今の私たちを信用していますか?」
エイスは、瞬きを何度かした。
「仕事の依頼人として、嘘はないはずだ。
ファインが店に通したからな。言っていない
ことも多そうだが。」
エイスの返事にリィルは頷いた。
「そんな私たちが何を言っても、エイスは
信じられますか?」
聞かれて、エイスは返事に困った。
正直、誰が相手でも、少しでも師匠のことを
知っているなら全て信じてしまいそうなくらい
に、情報を欲していた。
自分で出来る範囲なら、もう、師匠の情報は
集め尽くしたと言っても過言ではない。
それでも、ある日突然、どこかへ出かけて
帰って来なかった、以上の話が見つからなかった
のだから。
「信じたい、と思っている」
エイスは思ったままを答える。
「わかりました。では、今、答えられる範囲で
構いませんか?」
「それで構わない」
エイスが頷くと、リィルは、一呼吸置いて、
こう答えた。
「確かに、私とロルは、あなたの師匠の
行方を知っています」
「だが、今、言えるのはここまでだ」
ずっと黙って聞いていたロルがそこで、リィルの
言葉を引き取った。
「この先は、依頼の仕事が終わった後にして
欲しい。仕事の成否に関わらず必ず、話すと
誓う」
ロルの真剣な様子にエイスは、少し間をおいて
わかったと伝える。
師匠の行方を知る者がいて、それがわかると
確約されているだけでも充分だった。
今まで何の進展もなかったのが嘘のようだ。
その後は、途中の街で食事を取ったり、
馬車の中で順番に休んだりしながら、
順調に進み、予定通り、夜には
王都ロレストゥールに到着した。
そして、エイスたちが下ろされたのは
それなりに地位がありそうな貴族の
館の前だった。
「お疲れ様でした、エイス」
「何事もなくてよかったな」
二人の言葉に不穏なものを感じで、エイスが問うと
港町クロスポートから王都の間では、交易品を
狙った賊が出ると言われる。
「ま、出たとしても返り討ちだ」
「賊に遅れをるような鍛え方はしていません
から」
微笑む二人に敵に回さなくてよかったと心から
思うエイスである。
もちろん、エイス自身も賊など相手にならない
だろうと思っているが。
「それで、この邸は?」
「もちろん、今日の宿だ」
「ロルが持っている別荘のひとつですよ」
もはや、身分が高いことを隠そうともしなく
なっている2人に、エイスは大きくため息を
吐く。
夕食後、あてがわれた部屋でエイスは、
途方に暮れていた。
馬車の椅子もそうだったが、ベッドの寝心地が
良過ぎる。
家の固いベットが恋しくなって来た。
しかも、明日はいつもの服ではなく、
これを着ろと謎に装飾が多い、良い生地の
服を渡された。
一体、どこに連れて行かれるのか、不安しかない。
しかし、ベッドの寝心地が良過ぎて、ぐっすり
眠ってしまったエイスである。
翌朝、エイスは、再び、途方に暮れた。
朝食後、湯で体を洗われ、髪を整えられ、
昨日渡されていた服を着せられ。
共にいるのは、いつもと違い、王都の騎士隊の隊服
によく似た服に身を包んだロルとリィル。
二人に連れてこられたのは、なんと、
王都ロレストゥールの中心にある城。
このテュリクス王国の王がおわす場所である。
どういうことだ? と、問えば、ロルは
ここに直すためのカーテンがあるという。
二人の格好も問いただしたいところでは
あるが、エイスはまずは依頼の品だと
考えるのをやめた。
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