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隠し事3

「これを師匠が……?」


カーテンにかけられた魔法に、一瞬だけ驚いた


エイスだが、師匠ならば別におかしくはない、と


思い直した。


エイスの師、スパーク・ホワイトは、本人曰く


爺さんなのだが、どう見ても20代前半。


魔法で若作りしていると自分でもよく言っていた。


高等な無属性の魔法も使えたかもしれない。




それよりも、とエイスは、ロルとリィル、


宰相アーレイを改めて見回した。


ロルもリィルも明らかに失言だったという顔


で、宰相アーレイも難しい顔をしている。


エイスが気がついてしまったからだろう。


師、スパーク・ホワイトが掛けた魔法ならば


本人に頼めば良い。


けれど、スパークの行方を知っている二人が


いるのに、その弟子のエイスに依頼が来たと


いうことは、師はおそらく、もう……。


急に目の前が暗くなってきた。


すまん、という言葉が音になったかどうか。


「エイス!!」



ロルの叫ぶ声を最後に、エイスは気を失って


しまった。




次にエイスが目を覚ましたのは、最初に


案内されたロルの別荘だという館の中。


あてがわれた部屋のベッドの上だった。


こんな時なのに、ベッドの寝心地は相変わらず


良い。


再び、シーツに潜り込もうとして気がついた。


ベッドの脇で、いつもの服になったロルが椅子に


座ったまま、眠っている。


まさか、ずっとついていてくれたのだろうか。


そういえば、あの布の多い服も着替えが済んで


いる。


世話をかけてしまったな、とエイスがつぶやくと、


ロルがぱちりと目を開けた。


「エイス! 目が覚めたのか」



ああ、とエイスが返事をした途端、ロルは


床に伏すようにして頭を下げた。


「エイス、すまない。まだ、明かすつもりは


 なかった」

 


まだ、ということは、いずれはわかることだった


のだ。ならば、そんなふうに謝ってもらう理由が


ない。


そう、エイスが告げると、


「違うんだ。俺たちは……」



と、ロルは、悲しそうに、苦しそうに、


言葉を詰まらせた。


「ロル?」


「悪いな、エイス。やっぱり、ちゃんと話したい」



リィルを呼んできても良いかと問われ、エイスは


うなずいた。


その後すぐに、いつもの服になっていたリィルが


現れ、迂闊な発言でしたと、やはり、謝ってきた。


エイスが気にしないで欲しいと返すと、リィルも


また、ちゃんと話したいと、メイドを呼んでお茶を


用意させた。



「ところで、エイスはあなたの師が何者か


 ご存じですか?」



リィルの質問にエイスは首を傾げる。


途端に、ロルとリィルがスパーク……とつぶやいて


大きく溜め息を吐いた。


エイスがどういうことだろうと、もう一度、


首を傾げると、2人は即座に立ち直って、


話を始めようか、と姿勢を正す。


「じゃあ、これを見てくれ」



ロルがテーブルの上に置いたのは、半分にかけた


小さな水晶。


「これは……」



エイスは見た瞬間、それが何か理解した。


自分のバースデークリスタル。


杖に付いている欠けた分の残り半分。


大事な人に渡す、故郷の慣習にならって、


師匠スパーク・ホワイトに預けていたもの。


現実が重くのしかかってくる。本当に、


師匠はもういないのだ、とエイスは実感した。


「大丈夫ですか?」



リィルの言葉に我に返ったエイスは、どうして、


ロルがこれを? と尋ねる。


「スパークから預かった。エイスに渡してくれと」



そうか、とエイスは下を向いた。


溢れそうな涙を2人に見られたくなくて。


「エイス、本当に大丈夫ですか?」



気づかうようなリィルの声が優しい。


きっと、2人には、もう、バレている。


ロルからは、上等な素材のハンカチが


差し出された。


素直に借りて、エイスは涙を拭う。


そのあと、改めて、小さな水晶を見た。


「エイス、これを杖にはめてみてくれ」



ロルの言葉を意外に思いながら、エイスは


言われた通りにしてみる。


すると、杖にはめた小さな水晶が光り、一瞬だけ


巨大なドラゴンの影が見えたあと、人の姿をした


誰かが、そこに立っていた。


銀の長い髪に、赤い目。体のラインが目立つ、布を


最低限しか纏っていない白いローブ。


そして、彼女は、エイスに後ろから抱きついた。


「やあっと、喚んでくれたわね、かわいい子!」



エイスが驚いて固まっていると、


「ところで、私のかわいい子を泣かせたのは、


 だあれ?」



と、目が笑っていない笑顔で、部屋の中を


見渡した。

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