表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/5

ギャルな神様も一緒に来ちゃった!

 強い光に包まれて、余りの眩しさに目を開けることもできない。光が落ち着いたと同時に感じたのは強い浮遊感と、落下し始めている重力だった。


「うわぁ~っ!!!」


 落下しながら自身にかけていた結界を強化する。これで落下の衝撃に耐えられるだろう。落ちながら考える。長い……。長すぎる!! どれだけ高いところから落とされているのだろうか!


 転送される直前に見た王女様の高笑いする姿、そこに寄り添い微笑みを絶やさない聖騎士のおマッチョ様、遠巻きに眺めていた舞踏会のために集まっていた貴族たち、主催である国王陛下や王妃様、そして教皇様を筆頭とした神殿の面々――。

 

 誰一人として俺を庇う者も意義を唱える者もあの場には存在していなかった。満場一致で、元平民の神子の存在が邪魔だったのだろう。


 何せ今回の舞踏会は国に張っている結界を最強に補強した神事を執り行った僕に対する慰労会だったはずなのだ。国最強の結界は向こう500年は持続するだろうと言われるくらい強固なもので、これさえあれば魔物や他国からの脅威におびえる必要はないのだ。


 今回のこの神事で僕の役目はお払い箱だと秘密裏に話し合っていたのだろう。いつまでも平民に傅く(フリだけで実際は蔑まれていたけど!)のは耐え難い屈辱だったということ。


 しかも王女様が使った異世界転移の魔法陣は、禁術書に載っていたものだ。僕は神子としてあらゆる魔法を覚えるために、使ってはならない禁術書にも目を通していたから知っている。


 本来であれば、王宮の書庫で厳重に管理されている禁術書を何らかの方法で閲覧したのだろう。あそこには結界が張ってあって、許可を得た者しか入室することが出来ない仕様になっている。まあ神子である僕は例外で、自由に入室出来るのだが……。あくまでも知識を増やす目的であって、神子でも禁術に手を出すことは禁じられている。それをあの王女様は行使した。


 ――これまでの10年間は一体何のためにあったのだろう? 貴族は嫌いだけど、孤児院育ちの僕は平民の皆の優しさを知っている。だからこそ皆のために、平和な国づくりのために尽力してきたというのに……。こんな結果はあんまりじゃないだろうか? 殺されるよりはマシなのかもしれないけれど、こんな場所から落下している現状、殺されるよりひどい様に思うのは気のせいか? 

 

 まあ大方、神子である僕の命を直接奪う勇気はなかったのだろう。平民出身ではあったけれど、神子としての力は申し分ないほどだったわけだし。気に入らなくても神に愛されし愛し子に手をかけるのは憚られたようだ。


 だからって追放は許されるのかと言えば違うと思うけど! だって元の世界の神様、僕に着いて来ちゃっているし! 神様ありきの結界が、神様なしで持続できるとは思えない。


 一瞬だけ絶望を感じていたけど、すぐに後悔することが目に見えているし、もう元の世界について考えるのはよそう。


 そんなことをつらつらと考えていたら陸地が見えてきた。漸く落下から解放されそうだ。


 ズドーン!! と大きな地響きを轟かせて地上に舞い降りた僕は、傍から見たらクレーターに佇むとんでもなくヤバいやつだろう。幸いなことに目撃者はおらず、林の中の開けた場所のようなところに降り立っていた。結界のおかげで無傷ではあるけれど、急激な落下から胃袋が刺激されて胃液をその場に戻してしまった。内容物がないのは舞踏会前から何も口にしていなかったから。これで満腹だったら、もっと悲惨なことになっていたに違いない。


「神様、僕に着いて来ちゃって良かったんですか?」


 僕が横でホバリングしている、前世で言うメジロのような鳥に声を掛ける。メジロと違うところは、両目の下に、昔のギャルを思わせるハートのラメが三つずつ張り付いているところだ。


「アタシに聞いてるぅ?」


 この場には僕と神様しかいないんだから、神様に話しかけているのでなければ誰と話していると思っているのだろう?


「勿論そうですよ」


「ジャンっちを追放するような国に、アタシがいる必要なくね?」


 しゃべり方までギャルなこのメジロは元の国の唯一神なのだが、僕も神子じゃなかったら絶対信じられない。まあ、僕以外の人間の前に姿を見せることはなかったし、神殿にある神像はもっと厳かな感じの女神像だったから、誰も本物の神様がこんな派手なギャルメジロだとは思はないだろう。


「てかさ、マジありえなくね? こんだけ頑張ってめっちゃ強い結界張ってもらってさぁ、速攻バイバイってぇ! これまでもうちの愛し子のジャンっちを大切にしないのムカついてたけどぉ、堪忍袋の緒もプッツンだよぉ」


 どうやら神様は激オコな様子だった。目の前に自分より怒っている人がいると、急激に冷静になるのはなんでだろう?


「まあそうなんだけど、悪いのは今回の舞踏会に参加していたような貴族たちや教会関係者だけで、平民の皆にはとっても良くしてもらってたから、国が滅びるのはちょっと嫌だなって」


「大丈夫ぅ~! ジャンっちが心配する必要ナッシング! アタシ抜け目ないからぁ~!」


 口調からちっとも安心できる要素はないが、神様が言うには、国に張った結界は跡形もなく消え去るけど、善良な平民たちに神子を蔑ろにするこの国から神は去ることにした事実、神子が異世界に追放されたことや、これまでの神子に対する貴族たちの態度なんかを全部暴露して、この国を捨てて他国に移住するように神託を授けたそうだ。その時に、僕にひどいことをした連中だけ国外に出られないような結界を掛けなおしたというのだから、本人の言うように抜け目がないのだろう。


 ドヤ顔をしているように感じられる神様(メジロだから正直表情は分からない)にちょっぴり引きつつ、平民の皆は救われるのだと胸をなでおろしたのだった。

お読みいただきありがとうございました。

もし宜しければブックマーク、☆評価、リアクションをしていただけたら励みになります!

よろしくお願いします(^^♪

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ