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Stars and Stripes: 僕らの内戦留学  作者: 電脳太郎
18/18

やまと発進す

◆ その日、日本は戦争を選んだ


西暦2030年。

日本政府は、正式に旧アメリカ合衆国南部地域への「自衛的軍事介入」を発表した。


「アメリカの空白地帯を、日本の安定した行政のもとに置くことで、国際秩序の回復に寄与する」

そう説明されたこの作戦は、表向きには人道的支援を装いながら、実質的には領土獲得を目的とする侵攻だった。


その旗艦に選ばれたのは――かつて太平洋を駆けた旧アメリカ戦艦「アイオワ」。

日本によって接収・改修されたこの艦は、今では新たな名を与えられていた。


「やまと」。

かつての象徴が、再び海を渡る。


 



◆ やまと艦上


艦橋には、三人の人影があった。


「全砲門、整備完了。推進炉、安定中。状況、良好」

整然とした口調で報告するのは――佐藤千代、29歳。

階級は海上自衛隊・三等海佐。医学博士でもある彼(彼女?)は今、軍艦の中枢を担っていた。


「了解。あとは天気とタイミングだけだな」

隣で片膝をついて双眼鏡を覗くのは――梶原雷蔵、29歳。

階級は陸上自衛隊・特別技術士官。無人機部隊と戦術兵器の運用責任者。


「で、作戦前にこの艦の主砲の薬莢で乾杯ってのは、やっぱダメか?」

第三砲塔の影から顔を出したのは――二宮由紀、29歳。

階級は……不明。籍はあるが、書類上は「特例行動要員」。

軍規の範囲で唯一「飲酒許可」が出ている謎の存在。


「おい由紀、戦艦で酔うな。今回は海の上で本気の戦争だぞ」

雷蔵が苦笑しながら言う。


「わかってるって。でも、あたしたちにとっては、“帰ってきた”だけじゃん?」


「……そうだな」

千代も静かに頷いた。


「また、あの場所へ」


 



◆ 作戦名:ヤマト・クロッシング


ミッションはシンプルだった。

テキサス州に残る複数の無政府地帯に強襲上陸し、拠点を確保。その後、日本式の行政モデルを導入し、実効支配を進める。


反発はある。国際社会の非難もあった。だが、かつてこの地で生き延びた彼らにとって、それは単なる“続き”に過ぎなかった。


「アメリカは、もう“国家”じゃない」

雷蔵は言った。


「あるのは瓦礫と火薬と、置き去りにされた子供たちだけだ」

千代が言った。


「だから、私たちがもう一度“秩序”を持ち込む。酔っぱらいの足でもね」

由紀が言った。


その言葉に、やまとのクルーたちは誰も反論しなかった。


彼ら三人は、かつて“この国に見捨てられた存在”だった。

だが今は違う。国家が彼らを選んだのだ。


 



◆ 出撃


艦内スピーカーが鳴る。


《全乗員へ。これより“ヤマト・クロッシング”作戦を開始する》


《目標、旧アメリカ合衆国・テキサス州南部。現地時間0700に上陸開始》


《君たちは、かつての敗者ではない。君たちは、未来を奪い返す者だ》


汽笛が鳴る。重い、深く響く音。

「やまと」はゆっくりと東京湾を後にする。


艦首には日の丸。

その下で、三人は黙って空を見上げた。


「そういや雷蔵、あの時言ってたよな」

由紀が言う。


「ん?」


「“俺たち、何をして帰ってきたんだろう”って」


「ああ。あの夜の公園か」


「答え、見つかった?」


「いや……でも今なら言えるかもな」


「なにを?」


「“ここから始める”ってさ」


 



◆ 上陸:再び戦場へ


テキサス州・旧ヒューストン外縁。

すでに無政府ゲリラの抵抗が始まっていた。ドローン、手製ロケット、機関銃。


だが、迎え撃つのは旧戦艦の主砲と、精密誘導兵器と、経験を積んだ「生き残り」たちだった。


由紀は上陸用装甲艇の中で酒瓶を掲げた。


「乾杯しようぜ、お前ら。これは、あたしたちのリベンジマッチだ!」


雷蔵が笑い、千代が頭を抱える。


「戦地で乾杯するやつ初めて見た」

「合法的にやってるからタチが悪いんだ」


銃声が響く中、三人は走る。撃つ。指揮を飛ばす。


爆発音の向こう、誰かが叫んでいた。


「ジャパニーズが来たぞ!」


「ヤマトのやつらだ!」


だが三人は止まらない。


彼らの“戦争”は、まだ終わっていないのだ。


 



◆ 最後に


日が落ちた廃墟の街で、三人は焚き火を囲む。


「なあ、俺たちってさ、結局どこまで行くんだろうな」

雷蔵がぼそりと呟く。


「国家の意志に従う限り、終わりはない」

千代が答える。


「でもさ、それでもあたしは……やっぱり、戦って良かったと思ってる」

由紀が火を見つめながら言った。


「何のために?」


「わかんない。でも、たぶん、“誰かのため”ってやつ」


「かっこつけんなよ、アル中」


「うるさい、元ミリオタ。千代、言ってやって」


「僕はどっちの味方でもないよ。僕は……今も、僕の戦いをしてるだけ」


 


火が、静かに揺れていた。


夜は深い。だが、朝はやってくる。


三人の戦いは、ここで終わらない。

彼らは、“帰国者”ではなく、“開拓者”になったのだから。

読んでいただきありがとうございました

これでこの小説は最終回を迎えました


新しいAI小説を電脳太郎として出します

次回作は「南洋学園、働かざるもの青春するべからず 」です

投稿時刻本日11時50分に本作最終回と同時に投稿します


先日SNS blueskyにてアカウントを作成しました

名前は電脳太郎で@dennoutarou.bsky.socialです

次回作の告知やアンケートなどしますのでフォローしていただけると幸いです


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