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Stars and Stripes: 僕らの内戦留学  作者: 電脳太郎
15/18

奪還:戦艦アイオワ

ロサンゼルス港――サンペドロ湾。


その静かな水面に、ひときわ巨大な影が浮かんでいた。

USSアイオワ――第二次世界大戦を生き延び、幾度の近代化改修を経て、ついには博物館として老朽化した戦艦。


しかし今、それは再び“艦”として生まれ変わる可能性を与えられていた。


「見ろよ……あんなデカブツ、動かせるのかよ」


遠望鏡をのぞいた雷蔵が、震える声で言った。


「動かすんじゃない。奪うんだよ」

由紀が言った。


「不可能かどうかは、やってから判断する主義だ」

千代はいつも通りの冷静な表情だった。



作戦名は「ラスト・クルーズ」。


● 時間:夜明け前(敵の警戒が緩む時間帯)

● 目的:戦艦アイオワを敵勢力から奪い、即応可能な状態に復旧

● 敵:民兵化した州防衛軍+ナドリコ(国防再興団)混成部隊


「制圧するんじゃない。最短ルートで艦橋を抑える。旗艦コードさえ入手できれば、残りは制御で奪える」


指揮を執る佐伯レンジの言葉に、隊員たちはうなずいた。


「そしてその突入班リーダーが――君たちだ」



03:28、作戦開始。


コリアタウンから出発した5台の武装トラックが、港へ向けて出撃。

三人は先行偵察チームに合流し、潜入ルートを確保した。


「どうする? 正面突破もあるぞ」

雷蔵が言う。


「いや、下水道ルートがある。汚いけど、確実」

千代が端末を操作しながら答える。


「どっちも臭いけど、命よりマシね」

由紀がブーツをはき直す。



03:57、下水口より潜入。


艦に併設されたドックの裏からアイオワの艦底部へと侵入。


「懐かしいにおいだねぇ、雷蔵」

由紀が鼻を押さえながら言う。


「なんで俺がここ知ってる前提なんだよ。俺は戦艦のマニアであって、下水のマニアじゃねぇ!」


「うるさい。集中して」

千代が遮る。


彼らの頭上、夜明けが迫っていた。



艦内に突入した瞬間――


「敵反応、前方3、後方1、天井2!」


千代の声と同時に、雷蔵が手榴弾を投げ込み、由紀がスモークを展開。


「突撃ッ!」


訓練された体で雷蔵が敵を次々と倒していく。

その手には**自作のM4カスタム“アイアンモングレル”**が握られていた。


「これが戦艦の艦内戦ってやつか……」

由紀は銃を手に走りながら、口元に酒を含んだ。


「飲むな! 撃て!」

雷蔵が怒鳴る。


「飲むことで正確になる人種もいるのよ。そういうの、アル中って言うの」

千代がさりげなく言いながら、医療ドローンで敵を麻痺させていく。



04:28、艦橋に到達。


「誰もいねえ……と思ったら」


待ち構えていたのは、ナドリコの小隊長――デボラ・マクニール大尉。


「ようこそ、日本人。ここはお前たちの“帰る場所”じゃない」


彼女の手には、小型核爆弾の起爆装置。


「こっちはもう終わってんだよ。お前たちだけ逃がすわけないだろ?」


「……あんたも家族を失ったのか?」


由紀が訊いた。


「失ってねえよ。家族に殺されたんだよ。正義の名でな」


静寂。


千代が歩み出る。


「なら、ここで終わらせよう。一緒に沈むってのは、趣味じゃない」


「口だけか?」


「違う」


千代は即座に催涙ガスを散布。


混乱の中、由紀が横から飛び蹴り、雷蔵が装置を撃ち抜く。


「制圧!」



04:42、艦橋確保。

戦艦アイオワ、再起動開始。


「エンジン始動……約1時間。航行は可能だ」


佐伯レンジから通信が入る。


「君たちのおかげだ。あとは――誰が“残るか”だけだ」



由紀は、手にした日本のパスポートを見つめた。


「……ホントに、帰るんだな」


「でも、どこに帰るんだ?」

雷蔵が言う。


「祖国って、今でも“故郷”って呼べる?」


千代は一言だけ返す。


「選べる余地があるうちは、選ぶべき」


そのとき、背後で銃声が響いた。


ドンッ。


「!?」


ミアコが倒れた。

港の残存兵が、最後の抵抗として投げた銃弾。


「やめろ!!」


雷蔵が走り、由紀が叫び、千代が即座に止血処置を始めた。


「意識はある。大丈夫……でも、時間がない」



そして――朝日が昇った。


戦艦アイオワ、港を出航。

太平洋へ向けて、ゆっくりとその巨体を動かす。


船尾では、アジア系レジスタンスの仲間たちが手を振っていた。


別れか、未来か。

それは、まだ誰にも分からなかった。

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