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Stars and Stripes: 僕らの内戦留学  作者: 電脳太郎
14/18

その名は“東洋戦線”

地下に広がるレジスタンス拠点――コリアタウン・シェルター。

薄暗い通路に、電力の限界でちらつく非常灯。水の滴る音。小さな子供の泣き声。


だが、その地下都市には確かに希望の気配があった。


「アジア人だけで固まってるって、最初は違和感あったけど……なるほどね。ここはもう“国”じゃなくて、共同体”だ」

千代が地下図書室の資料を眺めながら言った。


由紀はその横で、どこか落ち着かない様子だった。


「……なんかさ、うちら浮いてね? どっから見ても外様っていうかさ」


「当然だ。向こうはずっとここで戦ってた」

雷蔵が言う。

「俺らは半分観光気分で始まって、今さら帰る段になってようやくマジになってる。そりゃ信用されねぇさ」



彼らがいるのは、「東洋戦線(East Pacific Line)」と呼ばれるレジスタンスの本部だった。

構成員は約300人。日系、韓国系、中国系、東南アジア系――多国籍ながら、連帯は強かった。


「言葉が違っても、文化が違っても、一つだけ共通してたんだ」

佐伯レンジは説明した。


「『この国に家族を壊された』という怒り。それだけが、俺たちをつないでる」



その夜、三人は食堂でそれぞれの“自分”と向き合うことになる。



「密造酒、飲むか?」


そう声をかけたのは、日系三世の少女・ミアコだった。十七歳、物静かな顔に、目だけが異様に強かった。


由紀は缶を受け取り、静かに聞いた。


「なんで戦ってるの? 女の子が、銃持ってさ」


「家族、全員連れてかれた。日系ってだけで」

ミアコは言う。

「もう何も守るもんないから、せめて“理由”だけでも欲しかった。だから銃を取った」


由紀はしばらく黙っていたが、ぽつりと返した。


「うちはさ、酒蔵が全てだったの。親も祖父も、酔っぱらって死んだけど」

缶を傾けて、少し笑う。


「でもね、戦争ってのは……シラフじゃ見てらんないんだよ」




訓練場では、雷蔵が韓国系傭兵のジャン・ユンホと火器談義をしていた。


「マークスマンライフルならM110。だけど、俺はAK派」


「嘘だろ、あんなもん精度ゴミじゃん」


「でも壊れねぇ。俺たちは“勝つ”んじゃなくて“生き延びる”のが先だ」


雷蔵は黙った。


「お前は、何のために武器に詳しくなった?」


「……理由はない。ただ“好きだった”だけだ」

「でも今は、“好き”がそのまま“生きる術”になった」


「……悲しい話だな」




そして千代は、医療室で義肢をつける子どもに消毒を施していた。


「チヨは医者なのか?」


そう話しかけたのは、中国系の軍医・ファン博士。

「君の技術はすごい。だが、なぜ戦場に?」


千代は言う。


「場所がどこであれ、人が死ぬのがイヤだったから。戦争中は、知識だけじゃ足りないんだ」


「それでも、君は戦っている。立派だ」


千代はふと笑う。


「いや、立派じゃない。逃げずに残ってるだけ。それだけだよ」



その夜、三人は同じ部屋に戻った。


「……ここの連中、根っこは全部“復讐”でつながってる」

由紀が言った。


「でも、それだけじゃアイオワの奪取作戦はうまくいかない」

雷蔵が続ける。


「情報も兵力も、足りてない。技術者も少ない。あの艦を動かすには、奇跡が要る」


「奇跡は、起こすもんだよ」

千代がいつもの無表情で言った。

「必要なのは、一点突破の作戦と、信頼できるバカ」


「つまり、俺らだな」

雷蔵が笑う。



そして――作戦会議。


佐伯レンジが三人の前に艦の設計図を広げた。


「奪取作戦は72時間後。この戦いで、俺たち“東洋戦線”が生き残れるかどうかが決まる」


「決行部隊のリーダー、お願いできるか?」

そうレンジが問いかけたとき、三人は顔を見合わせた。


「やるしかねぇだろ」

雷蔵が言い、


「しらふじゃ無理だけどね」

由紀が続け、


「僕は保健委員ということでついていくだけ」

千代が静かに微笑んだ。



ロサンゼルスの空に、また一発の銃声が響いた。


戦いの足音は、もうすぐそこに迫っていた。

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