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Stars and Stripes: 僕らの内戦留学  作者: 電脳太郎
13/18

ロサンゼルスへ

アメリカ大陸を東から西へと横断し、三人はついにその都市へと辿り着いた。


ロサンゼルス。


霧がかった空、ひび割れたフリーウェイ、倒壊したハリウッド看板。

そこにはもはや“映画の都”の面影はなかった。


「……えぐいな、こりゃ」

雷蔵が車のフロントガラス越しに外を見ながら呟いた。


「これ、もう戦後の都市だよ」

由紀は酒瓶を抱えたまま、眉をひそめた。


「いや、“戦中”だね」

後部座席の千代が言った。


「この都市、複数の勢力が入り乱れてる。中央政府残党、州防衛軍、ギャング、そして……移民系のレジスタンス」



市内へ入るため、三人はオンボロの装甲車を路地に停め、徒歩で進んだ。


建物の壁面には様々なスローガンが落書きされていた。


“No Borders, No Peace”

“K-Town Holds the Line”

“CHINATOWN RESISTS”

“GO HOME OR DIE”


「街ごとに支配勢力が違うっぽいな」

雷蔵が警戒しながら歩く。


「ウチの留学先、この都市のどっかだったんだけどね……」

由紀がぼそっと呟いた。


「今から履修申請しても、教授は死んでるよ」

千代のドライな一言。



そのとき、遠くで銃声が響いた。


ドンッ!ドンッ!


「まずい、近い」

雷蔵がすぐさま路地裏に三人を引き込む。


すぐ目の前を、**アメリカ国防再興団(National Defense Renewal Corps)**の兵士たちが駆け抜けていった。

彼らは星条旗の腕章をつけていたが、その顔つきはやつれており、もはや正規軍とは呼べない風体だった。


「“再興団”……ロサンゼルスにも出てきてるのか」


「通称“ナドリコ”。現政権の直轄傭兵部隊ね。略してクズ」

千代が小声で説明する。



三人が隠れていた路地裏に、いきなり声がかかった。


「動くな。手を上げろ」


銃を構えた若い女性兵士がいた。

アジア系。制服はばらばらだが、腕章にはK-TOWN RESISTANCEと書かれている。


「日本人か?」


「……まあ、そうですけど」


由紀がなんとなく挙手しながら言うと、彼女は少しだけ顔を緩めた。


「よかった。あんたら探してたの、日本人だって聞いてたから」


「は?」


「ユキ、ライゾウ、チヨ。あんたらでしょ?」


「名指しかよ!」



彼女の案内でたどり着いたのは、コリアタウンの地下シェルターだった。

そこには、アジア系移民の若者たちが集まっていた。


日本人、中国系、韓国系、ベトナム系。

国境を越え、アイデンティティの狭間で、それでも手を取り合った者たち。


その中央で、指揮を執っていたのは――


「やあ、遅かったね」

白衣を羽織った日本人の若者。落ち着いた口調、冷えた眼差し。


「僕は佐伯レンジ。ここでアジア系レジスタンスを統括してる」


「レンジ?あんた……軍人?」


「元・国際救援医師。だけど今は、ただの戦う移民さ。……ところで君たち――」


彼は三人の顔をじっと見て、言った。


「君たちを“日本に返す”任務を、僕が預かっている」



その夜、地下シェルターの小さな会議室で、三人は戦艦の設計図を見せられた。


「これが……アイオワ?」


かつてロサンゼルスのサンペドロ港に停泊していた戦艦「USSアイオワ」。

退役艦でありながら、いまや最も現実的な“脱出船”として復元が進められていた。


「君たちの力が要る。あの艦を奪取し、整備し、日本へ逃がす。……生きて帰りたいだろ?」


由紀が黙っていた。


「帰って、どうなるかわかんないけど……でも……」


「帰らなきゃ、ウチの酒蔵が潰れるからな」

雷蔵が肩を叩いた。


千代がポツリと言う。


「いいよ。あの国もろくなとこじゃないけど……でも、“選べる場所”があるってのは、幸運だと思う」



翌朝。


作戦決行まで48時間。

三人は、最後の戦場へ向けて、歩き出した。

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