お前、トウモロコシで動くのかよ
西部荒野のど真ん中。
三人は小さな町に立ち寄った。名を**「ポプコーン自治区」**。
ポプコーン――すなわちトウモロコシでできた自治体である。
「まず名前からヤバいのよ」
由紀が顔をしかめながら言う。背中には密造酒入りのリュックが揺れていた。
「ここ、全部トウモロコシでできてるな……」
雷蔵が町を見回す。
街灯もトウモロコシ、電柱もトウモロコシ。
モーテルの看板に至ってはこう書かれていた。
“WELCOME TO POPCORN AUTONOMY ZONE - SWEET OR SALTY?”
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「この町……空気がバター臭い……」
千代が鼻をひくつかせた。
三人は食料と情報の補給を兼ねて、唯一のレストラン「Kernel House」に入る。
中はすでに異様だった。
「お客様、お口はキャラメル派?それとも塩バター派?」
店員が真顔で訊いてくる。
「うちは…バーボン派なんだけど……」
由紀が顔をひきつらせながら密造瓶を出そうとするのを、千代が押さえる。
「ここではそれ、死刑だよ」
「えっ」
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食事はトウモロコシ一色だった。
コーンブレッド、コーンスープ、コーンヌードル、コーンタルタル、トウモロコシの漬物。
デザートにコーンプリンにコーン飴がけ。
「おまえら、アメリカ壊れても、こういう方向に突き抜けるのやめろよ……」
雷蔵が涙目で呟いた。
由紀はコーン酒らしきものに興味を示したが、味は「ガムシロップ+生米+絶望」だった。
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そのとき、外で大きな音が鳴った。
ドゴォォン!!
「……爆発音?」
「いや違う。ポップ音だ」
外に出ると、町の中央広場で何かが膨らんでいた。
「え……でっかいトウモロコシ?」
いや、違う。これは――
コーン・メカだった。
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「緊急放送!ポプコーン自治区防衛隊からの発表です!」
「トウモロコシ密輸の疑いにより、外来者は全員処刑されます!」
「なんで!?お酒だよ!?とうもろこしじゃないよ!?」
「それが問題だって言ってんだよ由紀ィ!」
巨大なコーン型ウォーカーが轟音をあげて歩き始めた。
「こいつ……蒸気で動いてる!?いや違う……」
千代がスキャナーで分析する。
「動力源、ポップコーン」
「お前、トウモロコシで動いてんのかよ!!」
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雷蔵が叫んだ。
「よし、やるしかない。迎撃準備ッ!!」
「どうすんのよ!あんなヤバいやつ相手に!」
「俺たちには、これがある!!」
彼が取り出したのは――
“NRA倉庫で拾った謎兵器・トウモロコシスナイパー”
「使い方は……不明!」
「なんで持ってきた!!」
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雷蔵はスナイパーライフルを構え、引き金を引いた。
――ポン!
撃ち出されたのは、ホカホカのバター付きコーン。
「……は?」
メカは一瞬立ち止まり……手を伸ばしてコーンを食べた。
「ちょっと待って、理性あるの!?」
そして、満足げに座った。
「……あれ、倒しちゃった?」
「まさかの……満腹オチ……」
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町長が駆け寄ってきた。
「ありがとう、旅人たちよ!奴は空腹になると暴走する“コーン・エレメンタル”だったのだ!」
「それ言えよ!!!!」
「お礼にこれを持っていってくれ。我が町が誇る究極の兵器――」
“トウモロコシでできたUSB”
「使えねえ!!!!」
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こうして三人はポプコーン自治区を後にした。
「次は……もうちょっとまともな町に行こうな……」
「アメリカ、マジで終わってんな……」
「でもさ……ちょっとだけ、楽しかったよ」




