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Stars and Stripes: 僕らの内戦留学  作者: 電脳太郎
10/18

神の終わる場所

カリフォルニアの山岳地帯にそびえる、黒くそびえ立つ塔――神の脊椎ザ・スパイン

人工神経網が山中に張り巡らされ、衛星と接続された複合施設は、新世界の心臓として脈打っていた。


突入部隊はたった3人。


アル中、ミリオタ、性別不明の天才。

コードネーム「Stars and Stripesの三バカ」。



「よし、作戦を確認するぞ」

雷蔵が装備を整えながら言った。


「俺が正面から突入して敵を引きつける。

千代は裏からネットワークを掌握、ミナミは中央制御室で“神の声”の上書きを担当。

突入後30分でブロードキャスト開始だ。タイムリミットは……」


「19分34秒。そんなに余裕ないよ」

千代がドローン端末をいじりながら、無感情に答える。


「……待って、わたしはまだ“神の声”の台本書けてないんだけど!」


「アドリブでいけ、神だろ?」


「神をナメるな!!」



神政軍の機銃陣が火を噴いた。


ズダダダダダッ!!


「うおっ!マジで正面突破って馬鹿だろこれ!!」

由紀がボロい装甲車の上から絶叫する。


「でも酒は手放さない」

「死んでも手放さない」


「さすがだなあんた」雷蔵が感心したように笑う。



爆音の中、千代は通信施設の地下階に滑り込む。

ラップトップを接続し、人工神AMN-02から奪った神経コードを挿入。


パスコード:MyGodIsAFraud


接続完了。

メイン・ブロードキャストチャネル取得中……

残り時間:12分47秒。



「ミナミ、制御室までもう少し。急いで」

「わかってる、でも……」


ミナミの脳裏には、教主――自分の父親の姿が浮かんでいた。


あの日、診察室の奥で、父は言った。


「人間の感情は病気だ。私は、君を使ってそれを治療する」

「お前は、私の神になる装置デバイスだ」



扉の先、中央玉座室に父はいた。


教主――元・神経生理学者にして、精神医療の権威。

人類を「感情のない世界」に導くため、自らを神へと進化させようとした男。


「来たか、ミナミ。やはり君だった。君以外に、神を名乗る資格はない」


ミナミは震える手でスロットを持つ。


「お父さん……私は神にならない。

私は、不完全な人間のままでいたい」



「それが罪だ」

教主の瞳に、演算光が宿る。


背後の神経装置が唸り、塔全体が震え始めた。


『ブロードキャスト開始まで残り9分』

『全衛星同期モード、移行中』


「千代!」

「こっちはOK!でも神経核を直接制御しないと“声”は止められない。ミナミ、やるなら今しかない!」



教主がケーブルを身体に突き刺す。

「見よ、これが新世界の光だ!!」


光が爆発した。


だが次の瞬間、ミナミの声が響いた。


「わたしは、神じゃない。

わたしは、人間として、人間の言葉を、世界に伝えます」


ミナミはAMN-02の記憶コードを教主に逆流させる。


教主の視界に、ミナミの記憶があふれだす――


雷蔵との無茶な訓練、由紀の吐瀉物にまみれた夜、千代の冷たくて優しい知識。

三人で笑った、くだらない日々。



「なんだ……これは……こんな、くだらない記憶で、世界を……!!」


「そうだよ。くだらないから、生きていけるんだよ!」


AMN-02の残留人格が教主の意識を侵食していく。


「私の中に……彼女が……」


『神経系崩壊。演算不能。』

『ブロードキャスト、内容上書き。』



そして、世界に向けて流れた“神の声”はこうだった。


「こんにちは、Stars and Stripesの三バカです。

今日はね、教主の電波ジャックして、世界に言いたいことあるんだ」


「神なんていらねえ!」

「人間で十分だ!」

「不完全だから、歩けるんだよ!」



神の脊椎は崩壊した。


教主は沈黙し、施設は自壊。

三人はギリギリで脱出し、山の影に身を投げ出す。



「やった……のか?」


「やったわ。少なくとも、神政州にはもう“神”はいない」


「酒うめえええええ!!!!」


「それ、ただのアル中」



夜が明ける。

一行はトラックの荷台に揺られながら、次なる戦場へ向かっていた。


千代が言う。


「……次はどこ行く?」


ミナミが空を見上げた。


「アメリカ全部を、元に戻しに行こう。不完全なままの、あの国に」

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