第6話:転送?転移?アマテラスは天才の子!
天界で会議が行われる一方、地上ではアマテルが転移の真相を語る……
< 転移の真実・天照の才能 >
──早朝6時30分頃/地上・シェアハウスの居間──
外はまだ薄暗く、居間の照明ライトの明るさが際立つ。
スマートモニターからは、天気の不安定さを知らせる報道が流れている。
「もうこんな時間……これはまずい……!」
何がまずいのか、地上に太陽が見えない──つまり、やばい。
「人類を滅ぼす訳にはいかない……」
はぁ〜、と大きくため息を吐いたアヤカは、自分の運命を呪うように立ち上がった。
……何か「別のフラグ」が立ったかも。
この状況を、天界に黙っているわけにはいかない。アヤカは心を鬼にして声を張った。
「アマテル! みんなに知らせるからね!」
だが、当の本人──アマテルはというと、呑気にお茶をすすっていた。
「みんなが知ったところで、どうにもならないよ~」
なぜ?……アヤカは目を細めた。
「転移してきたんだから〜」……転移!?……思わず耳を疑った。
聞き間違えたと思ったアヤカは、必死に確認する。
「転送じゃなくて?……転移?」
「そう♡」その返事はあまりにも軽く、そしてあっけらかんとしていて、頭が痛くなった。
はあぁ?……この子、何をしでかしたの。アヤカは慌てて問い詰める。
「ど、どうやって? 転移装置なんて作ったの?」
するとアマテルは、ポケットから小さな宝石のような丸い石を取り出した。
「これよ、きれいでしょ〜」
照明の光があたるたびにキラキラと輝いている。
この石は、何?……アヤカは眉をひそめた。
「天之瓊矛の玉よ」
あっさりと言い切るアマテル。
そう簡単に言うけど、それが、どうして転移に関係するの?
アマテルによれば、昔、岩戸で転移ゲートを発見して、転移の再現を試みたけど、何かが足りなかったのだという。
「それで、神殿にあった"天之瓊矛"をたまたま調べたのよ〜」──イザナギが別天津神から授かったという神器……何もない空間に"国産み"をする力。それは、科学では再現できない"神の力"だ。
アマテルは、この矛の装飾玉に先代たちの力が、まだ少し残っていることを調べあげ「一時的な空間制御に使えるかもしれない」と自分のベッドに組み込んだらしい。(軽く言うけど伝説級の神器よ……それを扱えるのもすごいけど)
「500年かかったけど、できたのよね〜(笑)」
笑ってるけど、500年!?……アヤカは突っ込む気力さえなくなってきた。(この子は、本当に神の力に選ばれた存在なのね……)
「だから、神格が高いって言ったでしょ♪」とアマテルが笑った。
アヤカはしみじみと思った。やはり、この子……天才だわ。私と違って神の力に愛された特別な神。アマテルが産まれた時から抱いていた想い。そして、アマテル出生の秘密を知る天界でも限られた存在である私……。
アヤカはアマテルに問いただす。
「でも、太陽がないと、みんなパニックを起こすでしょ?」
思い出したくもない、あの"天岩戸"事件。あのときも大騒ぎだった。あれに比べれば……いや、どっちも最悪かも。
「大丈夫じゃない〜、外見てよ、明るいよ☆」
気楽すぎるアマテルの一言に、アヤカは即座に窓の外へ目をやった。
……確かに。
ついさっきまで薄暗かった空が、今はちゃんと明るくなっている。
うん、あれ……奇跡かな?
「カネさんがどうにかしたんじゃない?」アマテルは気軽に呟いた。
カネ……か。
やはり大臣のオモイカネには連絡をした方がいい。
アヤカは、もはや手に負えないこの状況を丸投げしようと決意した。
「カネに連絡するからね……」静かにそう呟いた。
彼女はモニターのチャンネルを、天界通信へと切り替えた。
パッと画面が天界チャンネルに切り替わると、その右端には「太陽神・失踪中」のアラートがズラリ……まるで株価の速報だ。
「やっぱり……結局、騒ぎになってる」
アヤカは呆れ顔でアマテルを見た。その視線にも気づかず、ぶつぶつ何かを言いながら、サンドイッチをもぐもぐ。……この子、本当に何も気にしてない──少しイラッとした感情を抑え、急いで天界政府へ連絡をとる。
まずは外務省チャンネルに繋いだ。
オペレーターに言伝をすると、パチパチと入力する音が響く。
そして、しばらく待たされた。……10分……いや、実際には数分くらいかもしれない。
《ただいま、各大臣は臨時閣議中です》
《緊急連絡とのことで、直接お繋ぎしますか?》
「……ええ」
また面倒な場へ足を踏み入れてしまった。アヤカは若干後悔していた。朝からなんでこんな事態に……本当に厄介なことに巻き込まれたものだ。
《では、お繋ぎします》
画面が切り替わると、長い会議卓を囲んで神々が一斉に座していた。会議室のぴんと張り詰めた緊張がこちらにも伝わる。
地上のシェアハウスの気の抜けた空気とは違う、まるで別世界だった。
── つづく ──
最後までお読み頂き有難うございました。
ぜひ、続きのエピソード「第7話」をご覧ください。
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