第5話:謎の女神"吾屋"の秘密を追う?
会議を追い出されたワカトシがとった行動とは……
< 彼の心に魔が差した >
会議室を叩き出されたあとも、ワカトシはその姿を忘れられずにいた。
神々が一斉に緊張したあの空気……誰よりも存在感があった。
──その女神の名は、「吾屋」というらしい。
「……気になる……」
「……調べよう。いや、調べねばならぬ!」
そう口にした瞬間、彼の心に魔が差した。
目的はただひとつ──天界政府の極秘ファイルへのアクセス。それは、彼の仕事の"役目"から考えるとかなり逸脱した行為だ。
しかしあれだけ、会議で極秘情報を聞いてしまった彼は止まらない──いや、ぶっちゃけあの美女が何者か、ただ知りたいだけである。
ワカトシは、意気揚々と政府人事データベースに「吾屋」と打ち込み、検索ボタンを叩いた。
「……」
「……」
──このファイルは最高機密レベルです。アクセス権限がありません。
(くそっ、やはり……人事情報は無理か!)
次に過去の神事記録や降臨ログなどを検索した。
「……」
「……」
──アクセス権限がありません。
(また、空振りか……)
ワカトシは仕方なく、自分の所属する末端部局のログイン画面に切り替える。人事記録は諦めて、部署に保管されている彼女にまつわる身辺情報を調査した。
……だが出てくるのは、「天界ビューティー特集!」「女神の美白ケア10選!」「おしどり神夫婦の密着スクープ!」など、ゴシップレベルのどうでもいい記事ばかり。
「ちがう、そうじゃない……俺はもっとこう、正体とか過去とか……」
そうやって片っ端から開いていた時だった。
一つだけ、ロックがかかったファイルに気づいた。
《 主任権限/秘文書-第6ファイル_吾屋惶根 》
……これは。
……あやしい……これは期待できる!!
しかし、パスワードが掛けられている。
「……」
「……」
──パスワードが違います。
(まさか……誕生日じゃないよな……)
彼は"まさか"と思いつつも、主任の誕生日を入力した。
パスワード入力……『1124』
「!?」
……空いてしまった。
(パスワードの使い回し! ザルすぎる!!)
ついにワカトシは、情報へたどり着いた。
恐る恐る中身を見る──「資料:吾屋惶根ランキングファイル」
「ら、ランキング……?」
……目を通したワカトシは、5秒で頭を抱えた。
【吾屋惶根 殿堂入りランキング】──天界オリオン調べ
「天高原で最も美しい女神」──初代1位(殿堂入り)
「天高原で最もナンパされた女神」──初代1位(殿堂入り)
→ 大昔はそんなに有名だったのか?
「隣に立たせてはいけない女神」──初代1位(殿堂入り)
「割烹着が似合わない女神」──初代1位(殿堂入り)
→ どうやって統計取ったんだコレ……
「声を聞くと背筋が伸びる女神」──初代1位(殿堂入り)
「最も顔に性格が出ない女神」──初代1位(殿堂入り)
→ ちょっと、恐れられてたのか……オーラかな?
「口噛み酒をしてほしい女神」──初代1位(殿堂入り)
「素足で強く踏まれたい美魔女神」──初代1位(殿堂入り)
→ ちょっと毛色が変わったな……誰の性癖だ?
「"それで?"と言われたい女神」──初代1位(殿堂入り)
「やたらと"元〇〇"が多い女神」──初代1位(殿堂入り)
→ もう、意味がわからない……
* * *
「天界で最も歴史を█████████████████
えっ!?
最後のこれ……墨消しされてる?
よりによってここだけ"のり弁"状態……
ワカトシは背筋をぞわりとさせた。
バカみたいなランキングだったはずなのに、最後の一つだけ様子が違った。
「やっぱり……謎が多い……女神だ……」
彼はそっと端末を閉じた。
この瞬間、また一つ秘密を知ってしまった──若き神が増えたのだった。
── つづく ──
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