第一章(6)
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狩ってきた獲物の大きさを自慢してくる男を適当にあしらい、洗濯の合間に井戸端会議をしているおばさんたちの横を通り過ぎ、小川をまたいでしばらく行くと、辺鄙なところに出た。
さて、例の男子はどこにいるんだろう――。
ミノカは思う。考えてみれば、トワリがどこにいるか、予想がついていたわけではなかった。そもそも、遠方から使者に同行してきた、という立場を考えると、客人用の屋敷にいる可能性だってある。そうなれば、自分のような庶民は会うことができないだろう。
(安請け合いしてしまったけど、本当に会えるのかな――)
などと思いながら、ミノカは辺りをぶらぶらと散策してみた。
すると、向こうの方。がらんとした広場の一角で、這いつくばりながら地面をじっと目を落としている男子がいた。ミノカには、彼の取っている行動が奇妙に映った。おそるおそる近づいてみる。
「こんなとこで何してるの?」
と、聞いてみた。男子はしばらく何も答えなかったが、やがて素っ気なく、
「――土を見てる」
と答えた。そのくらい分かる。知りたいのはその理由だ。男子はさらに呟くように言った。
「ここいらではいい土がとれるんだな。砂利や小石が少なく、粘性が高い」
彼は地面の土を手に取って、揉むようにする。一体何をしているのかと、ミノカは疑問に思った。
「このムラで使われてる壺や器を見てみたが、殆どひび割れもなく、しっかりしてるものばかりだった。相当いい土を使ってるんだろうと思ったんだ。――このムラでは土器づくりにどこの土を使ってるんだ?」
「えっと――この先にある川の辺りに土器づくりに適した土が堆積しているから、それを使ってるらしいけど」
突然尋ねられ、ミノカはしどろもどりになりながら答えた。聞きかじりの知識だった。ミノカもムラの一員として、土器の類の製造に関わったことはある。しかし、まだ子供であるため、詳しいところまでは知り得ない。原料となる土も、男たちが運んできたものを使わせてもらうのみであった。
「なるほど――。ここいらは川上で標高も高いから、風や水の流れで、細かな砂や石は下の方に運ばれていってしまう、というわけか。ただの地面でもこれだけの質なんだから、土器用に使われているのは、もっといい土なんだろうな。おもしれえ、ここに来てはじめての発見だ!」
そんなことをぶつぶつ言いながら、男子は四つん這いの状態で辺りを動き回り、地面の土を触ったり眺めたりしている。
どうやら、この男子が、噂のトワリのようだ。
会ったら、イチコが傷つけられた以上のお返しをしてやろうと思っていたミノカだが、彼の行動や話の内容が意外すぎて、出鼻を挫かれてしまった。ただ、這いつくばって土を弄っているトワリの背中を眺めながら、眉をひそめて呟いた。
「……変なヤツ」




