6
小学生の楽しみと言ったらなんだろうか?
皆でゲームとかして遊んだことだろうか…。
彼氏彼女が出来て嬉しい時だろうか…。
クラブ活動を一生懸命にしている時だろうか…。
分からない…というか覚えていない。
ラグビーも…僕にとってはあの人への憧れだけで終わっていたのだろう…。
それが僕の前世だ。
ぱちーんと頬を叩かれた。
痛いんだけど…それ以上の痛みを知っているからかそんなに痛くない。
「お前、舐めんなよ!」
「え?舐めてええん?」
「アホか!」
「アホです」
渡辺美弥ちゃん。
小学5年生の頃から急激に背が伸びて女子一番の背の高さ。
それでいて気が強くてね~、もう負けん気が強いんですよ。
6年生にもなると170センチですよ。僕は140くらい。
そんでもっておみ足が太くてね~。
それを気にしてスカートの下にはジャージを履いてるんです。
一部の女子には煙たがられてます。一部ね。
でも、クラスカーストの上位である学年のマドンナ舞ちゃんとお友達なので、美弥ちゃんもクラスカーストの上位者でもあるのです。
「うっざ!」
「何がうざいのか教えてくれぇ!」
「うっざ!!!」
私、下村崇、小学6年生。
現在学校のクラブ活動の授業中です。
卓球部で人数も少ないです(卓球台も少ないです)。
女子へモテる為の何たるかの教えを乞うために、美弥ちゃんに懇願しております。
いやね、3年生と4年生の時に同じクラスだったんで喋れるんだよ。
ただ、男友達みたいな感じだったんだよね。
あ、丸ちゃんには振られました。
恋、実らずで御座います。
亮ちゃん?
知らない子ですね。
普通に喋るけれども…。
それと膝の怪我は軽傷で済みました。
絆創膏をペタリ位の擦り傷です。
いや~、真面目に練習していて良かったよ。
前世のテクニックも披露出来てようございました。
細かすぎて誰にも称賛されないんだけどね…へへっ。
「美弥ちゃん…いや、美弥さま。お願いで御座います。僕の何がいけないんですか!?」
「知るかよ!舞、ちょっと来て!」
あぁ、止めて!
メンタル小心者は複数人相手だと我を出せないんです。
気軽にお喋りさんになれません。
「え、何?さっき叩いた音聞こえてんけど?って何怒ってんの?」
カースト上位の学年のマドンナ、舞ちゃん登場。
因みに僕はクラスカーストは中くらいだと思いたい。
誰かの悪口とかは言わないし、誰かを虐めたりもしないし。
喋り易い奴って思われてるくらいだと…思いたい。
それと、卓球部は緩いので殆どお喋り部隊で構成されております。
「別に怒ってへん。こいつムカつくんや!舞も言ったってや!」
「え?なに?なに?」
舞ちゃん、僕と美弥ちゃんを交互に見ては「?」って感じになってる。
まぁ、そうでしょうねぇ…。
「いやね、そのね」
「おい、さっきまでハキハキしとったやん!」
美弥ちゃん…何でそんな怒ってんの?
「あ~待ち待ち。美弥、落ち着きや」
出来る女、舞ちゃん。
ぶすっと不貞腐れた美弥ちゃん。
あ~これはこれは…怒ってますねぇ~。
だってメッチャ睨まれてますもん。
「で、たっちゃん。何言うたん?」
「え~。その~」
蹴らんでください…。
つま先で蹴るんは止めてぇ…。
あかん、舞ちゃんもそんな見やんといてぇ…。
恥ずかしいやん…。
「実はですね。僕は、その~」
何か言い辛い…。
…何か舞ちゃん…妙にうきうきしてません?
何か…変な勘違いしてませんか?
「こいつがな、どうやったらモテるんか教えてくれって言いに来よってん」
おぉい…美弥ちゃん…。
「ほぉほぉ。それで?」
…やっぱり勘違い起こしてそう…。
更にうきうき感が上がってますやん…。
「でな、自分で考えたらええやんって言ってん。そしたらこいつ、私がモテるから秘訣を教えてくれって言いだしよってん!メッチャ腹立つわ!」
「あ~」
だってさぁ…女子面からカッコいい~って言われてるんだぜ、美弥ちゃん。
男相手にも物怖じしないもん。
舞ちゃんちょっと困惑顔に変身しました。
意味分からんって顔に書いてあります。
「すぅ…あのですね?」
何か勘違いとかありそうだから…一から説明しました。
ええ、もう。
自分で何を言ってるか分からんようになったけども…。
ええ。
女子面からモテる美弥ちゃんカッコいい!
同性からもカッコいいと言われる秘訣は何ぞや?
僕も真似すればモテるんかなぁ?教えて!
意味分からん。
けどまぁ、舞ちゃんの優秀さには参りました。
分からなくなったところは質問してくれて、それに答える感じで両者に納得してもらいました。
言葉足らずって駄目ですねぇ~。
「分っかんにくい言い方しよって…」
美弥ちゃん呆れてました。
「あ~でもな。それってちょっとちゃうんよ…」
舞ちゃんはなるほどねってなってから女子の暗黒面をまぁ…教えてくれました。
美弥ちゃんへの妬み僻みの隅々を…ね。
「これだけとちゃうけども…。そう言うてたからってさ、女の子の言葉をそのまま鵜呑みにしたらあかんで?」
「こわっ…マジっすか?」
「せやで。たっちゃんが思う程…思てる以上にって考えた方がええで」
「そうやで。大体、そんなん言いよるん加藤とかやろ?」
「お、正解。…ごめん、聞かんかった事にして?」
「あかんわ。たっちゃん減点ね」
「うぅん…」
凹みます。
「何してるん?」
ここで裏切り者、枝田くん登場。
正座してる僕をガン見しないでください。
…蹴らんといて、美弥ちゃん。
「こいつが悪い」
「う~ん。まぁ…う~ん」
「?」
カースト上位に囲まれたらねぇ~どうしようもないねぇ~。
お~い、誰かぁ~助けてくれぇ…。
「たっちゃんイケずしたんか?」
「してないっす」
「キモイ」
「あ、それ。キモイってさ、何をキモイって言ってるん?」
「はぁ?…なんとなくやで?」
落ち着いた美弥ちゃんの答えがこちら。
な ん と な く
えぇ…。
結構傷つく言葉の上位に来るんですよ?キモイって…。
「…そや。今日皆で遊ぼや」
「はい?」
マドンナ舞ちゃん、何を仰っておりますのん?
「うち来てや。な、マサもええやろ?」
「別にええけど…」
「美弥もさ。遊ぼや」
なんすかねぇ…嫌な予感がひしひしとくるんですヨねぇ~。
「たっちゃんは絶対やで」
「えぇ…いいよぉ…」
何されるんですかねぇ…。
明日の吊し上げの予行演習か何かでしょうか?