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僕の鼻は少し潰れていた。


(赤ん坊の頃うつ伏せで寝ていたからじゃない?)


そう母さんが言っていたのを思い出したから、赤ん坊の時は仰向けで寝る様にしていた。

冗談じゃなくて、真実だった。

今の僕は父さんに似た顔立ちだった。

鼻もね。


「男前やな~」


父さんは酒が入るとよくそう言っていた。

潰れた鼻の時も。

ってか、父さん若いな。

それもそうか…。

三十年以上…だもんな。


「父さん、お代わりいる?」


「もういらん。腹一杯や」


あれからまたも数年。

痛かった記憶を少しだけ回避していた。

これから先のも回避しよう。


「崇。ありがとう」


普段から母さんの手伝いをしているからか、母さんから感謝の言葉を良くもらうようになった。

良くできた息子を演じていた。

何故だか分からないけど…少しだけ罪悪感もあった。


「うん。兄ちゃんは?」


「いる」


僕は兄ちゃんの器を受け取ってはご飯を盛ってく。


「そんなにいらんわ」


「分かった。これくらい?」


減らした茶碗を見せては確認する。

兄ちゃんの昔は大食漢だし…。


「おう。そんなもんや」


「はい」


茶碗を受け取った兄ちゃん、ご飯をかき込んで食っていく。

昔は農家から直接米買ってないから…食費がね…。

なんで今こんなこと考えちゃうんだろうな…。


「崇はもう食べへんの?」


「食べる」


自分の茶碗にもご飯を盛る。結構盛る。

身体を少しでも大きくしたいから、ご飯は多く食べるようにしている。

お菓子を減らしてご飯を食べる。

いや、お菓子も食べてご飯も…。

家計を圧迫してしまう…あかん。


「向かいの中さん。引っ越しするんやって」


「そうか~。崇の友達やろ?」


「うん」


中家とは子供付き合いだ。

一人っ子の亮ちゃん。

背も高くて足も速い。

将来はモテる男だ。


「よう遊んだのにな~」


「聞いた話、ちょっと離れるくらいだって。○○駅の近くだってさ」


「あそこ?近いやん」


父さんはお酒片手にテレビに夢中。

母さん、兄ちゃん、僕はお茶を片手に談笑。

昔っからこんな感じだった気がする。

多分。


「同じ小学校だって言ってた」


「なんや、そうなんかい」


兄ちゃんは自分の大きくなったお腹を叩きながら大きくゲップをしてた。

たまらず母さんぺチンとお腹を叩いてた。


「行儀ようしなさい」


「へ~い」


小学四年の兄ちゃん。

背も高いし横も大きい。

ガキ大将では無いけどそんな感じのポジションらしい。


中学生で喧嘩ばっかりの思春期に、高校では体格を生かして相撲の全国選手に入ってた。

まぁ、素行の悪さを注意され、卒業するための相撲だったそうな…。

鍛えてないのにそれだから…おかしい兄ちゃんだ。


「げっぷ」


「兄ちゃん、食べ過ぎたん?」


「全然。まだまだ食える」


すっと兄ちゃんの近くにお菓子を一つ置く。

パッとそのお菓子を口に放り込む兄ちゃん。


「崇」


ぺチンと僕も叩かれる。

美味そうにお菓子をぼりぼり食べる兄ちゃん。

もう少ししたら兄弟喧嘩でぶっ飛ばされるんだっけか?

何が原因か…そんな記憶があるような無いような…。


「崇、もう無いん?」


「うん。それで最後やで」


「そうか…」


しょげるなよ…。

どんだけ食べるんだ…。

いや、それくらい食べないと大きくならないのかな?


「母さん、お菓子は?」


ぺチンと叩かれる。

それが答えだ。

うん、何か…良いよな。


後日ぶっ飛ばされた。

くっそ痛かった。

原因が僕とはね…。

プリンくらい良いじゃん…。

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