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小話3
夏休みが始まって、久しぶりに舞と遊びに行く約束をした。
お泊りとかの連絡はあっても、遊びに行くなんてなかったしな。
いつもメンバーの梅も志保は来れへん言うてたらしいけど。
どうせ梅は相変わらず拓と遊びに行っとるやろ。
この辺田舎やし、どこで遊びに行ってるん?
やっぱ電車で遠乗りせんと行けんとこかな。
今度聞いとこ。
志保はタツキと別れてから気落ちして…なんて事無かったし。
ていうか、別れて直ぐ別の誰かと付き合ってる事にびっくりしたわ。
どんな神経してるんや…。
「で、何しにどこ行くん?」
「ん?あれ、言ってなかった?練習見に行くの、マサの」
「え?なんで?」
別にデートとかじゃ無いからラフな格好で来た。
ジーパンにそこそこ厚手のシャツ。
舞もそこそこラフな格好やけど麦わら帽子って…あんた。
「今日は天気良えからね。あ、でも見る時は日陰に行くよ」
「いや、そうじゃ無くて。なんで?」
「ふふ。今日の練習にタカも誘ったんだって。久しぶりに見たいでしょ?」
「え!?聞いてないんだけど?」
「あれ?言ったと思ったんだけど…」
待て待て。
いや、待て待て。
えぇ~。
「12時まで練習らしいから、その後ご飯食べに行こうって言ったよね?」
「そうやっけ?」
「そうそう」
…おぉ、久しぶりに見れるんだ…やりぃ。
「ふふ。そう言えば美弥ってあの時から一目惚れやもんね」
「…わるい?」
「ぜ~んぜん。むしろ拗らせすぎてて面白かった」
「うるさい。もう昔なんやからええやん」
「照れるなよ~。そういうとこ可愛いのよね」
「うるさい」
あ~も~…ちゃんと聞いとけばよかった。
髪の毛変じゃないかな…。
今からでも着替えに…。
「そんなに慌てなくても…。大丈夫だって」
「いや、でもさ」
「大丈夫大丈夫」
くそ~。
私も舞みたいにもう少し背が低かったらな…。
「ほら行こ。あ、途中でコンビニ寄っても良い?」
「何か買うの?」
「飲み物買うだけ。美弥も買っといた方が良いよ」
「まぁ、この暑さやしね…」
ニュースで最高気温は35度を超えるって言ってたし…。
「でもさ、タカも練習なんて久しぶりやろ?バテるかもね」
「それは無いわ。私が知ってる限り体力バカやで」
「そうなん?」
「そうやで」
「へ~」
「…なにその顔、変な想像してるやろ?」
「うん」
「あほ」
「え~普通やよ?」
「ふ、普通なん?」
「え?ん?」
え、なにその顔。
「あのさ、美弥」
「なに?」
「その~タカとは上手くやってるよね?」
「当たり前やろ!」
「うん、だよね。うん」
「え?なに?なんなんその反応?」
「気にしなくて良えよ」
「いや、気になるやん」
「まぁまぁ、ほな行こか」
「舞!なんなん…」
木陰で涼みながら見てたタカらの練習はぶつかってばっかやった。
タカはバック持ってぶつかられて、その後一人一人に何かを話してた。
ここからでも見て分かるように、アドバイスしてたんやと思う。
だって、タカにぶつかってた人が次にぶつかりに行く時強くなってるように見えた。
素人目線もええとこやけど…。
「終わったみたいやね」
「…そうやな」
「やっぱかっこええよな」
「…うん」
小学生の時に、舞に連れられて同じような練習風景を見た。
そこで同じクラスやったタカを見た。
印象としてはいつも落ち着いてて余裕ぶっこいてる変な奴。
背は低いけど友達多いし。
私にも普通に喋りかけてた…ていうかほとんどの子にも喋りかけてた。
モテたいモテたい言うてるけど、あの時タカを好きな奴って結構おったで。
言わんかったけど。
背の低いタカが年上やろう大きい相手にぶつかってた。
小さいから負けるやろ…って思ってたけど、タカは強かった。
大きい相手を放り投げる様な勢いでぶっ飛ばしてた。
一番小っちゃいのに、めっちゃ格好良かった。
それからやろう、自然にタカの事を目で追ってた。
いつもと変わらず普段から誰彼喋りかけてて、公然とモテたいなんてほざいてて。
クラスで告って自爆しとったアホな奴やな…って思ってたけど。
でも、なんでか見てしまってた。
自分の気持ちに気付けたんって、舞に言われてからかな。
正直ありえへんって思ったけど…。
でも、見ていると顔が熱くなるし、心臓バクバクになるしでタカを見れなくなっていた。
ただ、なんでやろか。
タカとは普通に喋れたんよな。
いや、ツンケンしとった自覚はあるけど…。
「美弥ちゃん来とったんやね」
「うん」
「ありがとうな」
「…ええよ」
まだ砂ついてるやん。
後ろ向き、ほら、払ったるから。
…うん、この気持ちって全然変わらんな。
まだドキドキしとる…。




