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僕は過去の…僕になっていた。
意味が分からないけど…。
下村崇、転生しました。
自分に…。
ギャン泣きしてしまった自分から早数年。
一人で歩いても問題無く、家の周りをうろついている。
「ここ、こんな風景だったんだ…」
近くに建っている筈のショッピングモールが無く、だだっ広い田んぼとあぜ道。
古臭く残った工場跡。
小さいスケート場。
土地開発が全くされていない過去の風景で、遠い未来の自分では思い出せない風景だった。
「僕、こんなに興味が無かったんだ…」
思い出せない今を見つめながら…黄昏ている。
自分が当時、何に興味を持っていたのかは全く思い出せない。
「懐かしい…って言って良いのかな?」
とゴチていると後頭部を軽く叩かれる。
「どこいってんだよ。おかあさんおこってるぞ」
少し横に大きい子供の…今の自分にとっては大きい兄に怒られる。
「ごめんね」
僕の手を握って引っ張ってくれる、頼れる兄だ。
「だまってでていくなよ?」
「分かった」
これも懐かしいのだろうかは分からない。
昔の記憶で残っているのは…痛い記憶だけだ。
縄跳びでぐるぐる巻きにされて引っ張られて頭からこけた記憶。
自転車を乗っていたらタイヤの間にボールを入れられて文字通り飛んだ記憶。
これぐらいかな?
いや、少林寺拳法の映画に感化されて石壁を殴って泣いた記憶…もあったな。
キョンシーとか、喋るゴリラの真似事とかもしてたっけ?
懐かしいな…。うん、懐かしい。
「きもちわるい。にまにましてさ」
「うん、兄ちゃん。ありがとう」
「いいって」
小さい兄弟ならでは…なのかな?
少ない言葉でも何となく伝わるんだよ。
「たかし。つぎはおれにいえよ」
「うん」
頼もしい兄の握る手がちょっと強くなって痛かったけど…新しく思い出にしていこう。
痛い記憶は…勘弁して欲しいけどね…。