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(明るいなぁ…)
眠気眼を少しづつ開いていく。
(知らない…いや、懐かしい天井…)
某セリフを言ってみたかった。
けど、そうもいかなかった。
実家の天井だから。
(おかしい…。古臭い蛍光灯になってる。新しいのに変えたはずなのに…)
釣り下がった蛍光灯。
一度落下して壊れたから新しいのに買い替えた。
誰も怪我しなくて良かったと、家族で話し合っていた。
首を少し動かしてみる。
(炬燵が無くなってる…いつもあるのに…)
リビングには年がら年中こたつ有りだった。
なのに無くなっている。
どころか敷布団すら無かった。
(どういう事?両親は此処で寝ているのに…)
父も母も、部屋を持っていない。
家が小さいからか、僕と兄だけ部屋があった。
後は父の仕事道具置き場だ。
建築関係の父は色んな道具を持っていたから。
(???)
たばこの黄ばみが染みついているはずの部屋が真新しく見える。
僕や兄が小さい頃に破いた襖が綺麗なのもおかしい。
(掘り炬燵にもなっていない…)
起き上がろうにも身体は動かせず…混乱する思考だけが動いている。
ぐるぐると渦巻いていく感情が昂っていく。
(何がどうなっているの?訳が分からない…)
とうとう堪えきれず…涙があふれ…叫んでしまった。
「あ~!!あ~~!!」
(僕…なんで泣いてるんだろう…)
答えは直ぐには出なかった。
けど、ヒントは直ぐにやって来た。
年若い母が、若かりし頃の母が慌てて駆けつけてくれたからだ。