宮廷魔導師
王城に連れてこられたルーナ。第二王子ランスの側近になるべく、すでに存在する主席宮廷魔導士と力比べすることになる。やはり、王子の側近ともなると主席レベルの実力がなければ、すでにいる家来たちに示しがつかなかったのだ。そして、現在の主席宮廷魔導士との戦闘がなじまった。
その日からルナは帰って来なかった。報告を受けて、ギルドは騒然としていた。
アンジェのパーティは依頼の案件は達成していたが、エイルとレイセルが無傷でアンジェとリガロは重症、またもイレギュラーの出現に周囲は困惑していた。
ルナが戻って来なかった事についても噂になっていた。
『あの子どうしたのかしら』『あの深傷を負った状況で出て行ったから死んだかも知れないな』『でも、あの子がイレギュラーを討伐したんでしょう?』『実力は確かだったという事だな』
エイルは慌てていた。
「誰か、ルナがどうなったか知りませんか?」エイルはギルドマスターを問い詰める。
ギルドマスターは経緯を話す。
エイルがオーク討伐にでた所、ルナが自宅でアサシンに襲われて大怪我した事、その後ギルドにエイルの行き先を聞きに来て、辛い思いをした事など説明した。
「うむ、お前の居場所を探す為に、居合わせた王太子と取り引きしたんだ。エイルの居場所を教える代わりに、何でもするって契約してたから・・・」
「では、ルナは王城に連れて行かれたという事ですか?」
「可能性はあるな。」
その頃、ルナは王城の豪華な一室に寝かされていた。アサシンに襲われて受けた傷は全く治っていない。
レオンとの契約は、レオンの首席守護騎士などの側近となる事であった。
「この傷ではきっと役には立たないと思いますが、、、」
「ルナ嬢、そのおびただしい数のアクセサリーは魔封装備ですよね。それもかなり強力なものですし、そこらで手に入るようなものではなく、一つつけただけでも普通の魔術師なら動けなくなるほど強力な代物です。貴女は本当はかなり高位の魔術師か賢者、又はそれ以上の立場の方ですよね。」
「・・・」
「私の勘ですが、何処かの国の王族の方ではないですか?」
「違い・・・ます。」
「予想では、例えば魔法大国のアンブロシアあたりでしょうか?」
「!っ・・・」
「図星でしょうか?では首席宮廷魔術師では如何でしょう。出自は隠しておきます。安心して下さい。」かなり素性がバレてきていた。
まずは、現在の首席宮廷魔術師と御前試合を行う事になった。
御前試合当日、首席宮廷魔術師テンセントは、不機嫌な顔をして闘技場に顔を出した。
ルナは車椅子に乗って休んで待っていた。
「本日は宜しくお願いします。」
「・・・あぁ」
御前試合開始である。城内はとんでもない条件の御前試合で満席である。
テンセントとルナは真ん中に進んでいく。試合は間も無く始まった。
「ファイヤー・ストーム」炎の竜巻きがルナを巻き込んで行く。
「ファイアー・ボール」ルナは初期魔法で対応する。
初期魔法ファイアー・ボールは、上級魔法ファイアー・ストームを吹き飛ばしテンセントに向かって迫る。
ルナの魔法は高効率であるため初期魔法でも上級魔法を凌ぐ破壊力を持っていた。
テンセントは危険を察知して規格外の初級魔法を受けずに避ける。
ルナからは攻撃しない。
「スーペリア・エアブラスト」強力な貫通力を持つ風魔法を放つ。
「ダークネス・シールド」攻撃魔法は影に飲み込まれて消えた。完全にテンセントの魔法を相殺している。
「アイシクル・レイン」
「ダークネス・フィアーズ」闇の波動が氷の矢を全て消し飛ばす。
「スクリュード・ストーン・バレット」
「エアナイフ」高速回転する石礫を打ち込んで来るが、風の刃で切り飛ばす。
「メテオ・ストライク!」テンセントは周囲の状況も配慮せず極級魔法を放った。
ルナは顔をしかめる。会場を壊すつもりか。
「ミニマム・ブラックホール」ルナの極級の暗黒魔法で対応。巨大な隕石を圧縮して飲み込み、施設を巻き込むような大爆発を防いだ。
テンセントはことごとく魔法を防がれてしまい、頭に血が昇って正気を失っている様だ。初めてルナが先に動く。
「ダークネス・スパイク・ケージ」地面から暗黒の槍が何本も突き出しテンセントを檻に閉じ込めた。
ルナは母国に居場所がバレないように、地味で、過去にはあまり使わなかった暗黒魔法を中心に使う事にしていた。
基本的にマナの使用効率に優れるルナは、基礎魔法でテンセントを上回ってくるのだが、メテオ・ストライクは強大な破壊魔法であり、闘技場で使うにはかなり危険な魔法であった。
ルナはテンセントを黙らせる事にした。
「インペリアル・ミュートオーダー」
テンセントの全魔法を瞬時に無効化、封じてしまった。
この魔法は格下の魔法士にのみ有効である。テンセントにこれ以上危ない魔法を使わせない目的で使用したが、ルナが格上である証明にもなるので一石二鳥なのであった。
ルナは首席宮廷魔導師に就任する資格を得たのである。
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