魔力爆発
ついにエリシオンにたどり着いた紅の賢者シーベル。アポロンにボロボロになったルーナを見せられ逆上する。しかし不利な状態にからの戦闘には無理があった。絶体絶命のシーベルとルーナの運命は追い込まれていく。
シーベルは、ボロボロになりながらもエリシオンに到達した。
左腕は肩から欠損し、全身切り刻まれ、右足は大腿部から骨折しており実際は立っているのもやっとであるが、魔法で身体を宙に浮かせて正面から進んでくる。
「ようやく、ここまで来たか・・・褒美に面白い物を見せてやろう。」
アポロンは魔法を硬く封じるケージに閉じ込められ、ボロ雑巾のようになったルーナを目の前にもってくる。
「貴様!許さん!」なんの情けもなく晒されたルーナの身体を見てシーベルは逆上した。
全身真紅の電撃を身に纏い物凄い速度でルーナを閉じ込めたケージに迫る。
しかし待ち構えた10柱にも及ぶネームドエンジェルが一斉に攻撃を集中して浴びせる。
殆どの攻撃は電撃で防がれたが、空間魔法を操る大天使が放った空間断層がシーベルの残った右腕まで切り落とした。
流石の紅の賢者も立ち止まってうずくまる。
「お願い!逃げてベルぅ!」ルーナは泣きながら叫ぶ。
「もう私の事はいいから早くにげてぇ!」危険を察知したルーナは身体に突き刺さった神槍を掻きむしりながら遠隔の治癒魔法を飛ばすがケージに遮られて届かない。
一斉に無数の神槍が突き込まれる。シーベルは、全身槍に貫かれて動かなくなってしまった。
「いやああぁぁぁ!!ベルぅ早く、早く逃げてよぅ・・・」流石にシーベルは生き絶えていた。
「神よ・・・私は貴方達にどんなに卑劣な扱いをされても、耐えて来ました。今もこのままなぶり殺されても良いと思っていたのにぃぃ・・・・・・絶対許さない!!」ルーナは覚悟を決めた。
胎内の内側へ内側へと魔力、神聖力が急速に収束して行く。自らの身体を触媒に胎内で魔法を爆発させるのだ。
『まだ・・・まだ足りない・・・。私の悔しさを満たすまで、全然足りない。』ルーナの身体は淡いピンク色に輝き、エリシオン周囲を満たすマナを物凄い勢いで吸収して膨らんで行く。
「不味いな・・・誰かそのボロ切れを止めろ!!」籠の中に閉じ込められたルーナに一斉に聖槍が降り注ぐ。
ザクザクと錆びたズタ袋を突き崩す様に更に無数の槍が突き立てられる。
飛び散る血飛沫・・・余りの凄惨な風景に心ある神や天使達は顔を背けたその瞬間、周囲全てが光に包まれた。
そして何よりも強固であった筈の絶対の鳥籠が一瞬にして破裂した。
中は自らの魔力爆発に耐えて立ち尽くすのはルーナであったが、魔封じの鳥籠を破壊してなお更にマナの膨張は続いている。
ルーナは全てを破壊する為にマナの集中をやめないのだ。
ルーナを串刺しにしていた聖槍は既にルーナのマナに焼き切られルーナを拘束するものは何も無い。
ゆっくりとルーナは生き絶えたシーベルへと歩き出す。傍にペタンと座り込むと抱き起こす。
「コンプリート・リザレクション!」ルーナや母メルティアのみが使用できる最強の蘇生魔法が放たれる。
・・・・・・・・・なにも起きないのだ。シーベルが生き絶えてから30分を経過し、蘇生させうる極限時間を超えていたのだった。
「あああああぁぁぁぁぁ!!」悲鳴とも叫びともつかないルーナの声が響く。
一旦収まっていた環境マナが再びルーナの胎内に急速に集まり出す。
周囲に放たれる淡い桃色の光は鋭さを増し極限へと至った。
全てを包んだその光はエリシオン全てを灰燼と変えて、吹き飛ばした。
さあ、週に一回は投稿しようと頑張っています。ぜひご閲覧お願いします。