対人機械兵器
魔塔で対魔道機械兵器に襲われ痛手を負ったルナは、戦闘を一段落して帰路についた。しかし、ルナほど巨大な魔力を内包したターゲットは他にはいない。帰る途中を大量の機械兵器に待ち伏せされ、余力のない中ルナはまたも襲われる。今度は十分な魔力の余力もない。抗うが捕まってしまうルナであった。
「ルーナ嬢、大丈夫ですか?深傷を負っていますね。でもまさかルーナ嬢の魔力に釣られて5機もの機械兵器が魔塔に侵入して来るとは、、、」胸とお腹から結構な出血が見て取れる。
「ヒールバースト」アーシエラの治癒魔法が瞬間で傷を治癒する。
「ありがとうございます。楽になりました。これ古代魔法ですか?私達の治癒よりも苦痛解除の効果が高いのですね。興味深いです。」ルーナはかなりの出血があった為フラフラである。
「ご迷惑をおかけしました。まさかルーナ嬢を狙って襲ってくるとは思いませんでした。でも貴女が5機も敵を撃破してくれたから街の被害も少なかった。ありがとうございました。」
「思ったより対人用機械兵器の対応が難しかったです。」
「やぁさすがだと思います。歴代最速のランカー冒険者は伊達ではありませんね。本来Aランク冒険者が対応に困るほどの敵ですからね。この件はギルドに報告しておきます。」
「では、今日は失礼します。」ルナは夜中になってようやく帰路についた。今回は初めての敵との戦闘であり魔力の消耗も激しかった為疲れ果てていた。
ルナは帰宅の途中に銀色の子狐を拾った。子狐は酷い怪我をしていた。機械兵器の攻撃に巻き込まれたのだ。
「可哀想ね。今治してあげるね。」子狐を抱き上げると、マナを集中して治癒魔法をかけた。
ふっと顔を上げて周囲を見渡すと最悪の事態が起こっていた。気配を消して侵入した対魔法師用の機械兵器に囲まれていたのだ。
「ま、まだ敵が残っていたのね・・・」かなり不味い状況である。
今回はスライム型で液体金属で造られた特殊な対魔兵器である。全部で20機以上居る。液体状の敵は小さな核を破壊しない限り倒せない。しかも先程の戦闘でかなりの魔力を使っていた為もう使える魔力が殆ど無くなってしまっていた。現状のルーナは、マナハーベストで魔法効率をかなり上げないと魔法自体使えない程なのだ。
今回、対人機械兵器は魔力を持つ魔導師を探知して狙って来ている。総魔力量が膨大なルーナは格好のターゲットと認識されたのだ。
金属スライムは身体の一部を細長い槍の様に硬化させて攻撃してくる。音さえしない。
必死に細剣で捌きながら逃げようとするが、囲みの一画を崩さない限り逃げられない。
ルーナは更にマナを希薄化した上で魔力を研ぎ澄まして行く。
「フロストノヴァ!」最強レベルの氷結魔法が一閃迸る。
「パキキィィッ」周囲の金属スライムは一瞬にして凍りついて崩れ落ちて行く。
血路を切り開いて必死に逃げる。
「きゃああぁぁぁ・・・」ルーナの悲鳴が上がる。
スライムではなく混じっていた機械蜘蛛数機がルーナを突き刺し宙に掲げていた。
ルーナは串刺しにされ意識朦朧としている。もう戦う力も残っていない。子狐に使った魔力分が命取りになった。