第一皇女
ルナはレオンとバーンに囲まれて、ルナの生い立ちについていろいろ質問されていた。ルナはかなり二人に心を許していた。ついにその出自について語られる。信じられないというよりもあまりに非現実的な話に、レオンとバーンは驚く。そして、語られたその危険な追手とは、ルーナの元婚約者であった。
「ルナ?君の出自を教えて欲しい。事情があるのは分かっている。決して口外はしないから教えてくれないか?」バーンがルナに問いかける。
「父上が王位を退いた。私達もこれから身の振り方を考えなければいけない。私は君無しでこの先を考えるのが難しいんだ。君の事、教えてくれないか?」レオンは完全にルナを護るつもりでいるのだ。
「・・・」ルナは暫く黙り込む。
確かに、二人が口外さえしなければ、問題は無いのだが、母国の追手がレオンやバーンに危害を加えないと言う保証が無いのだ。
「ダメです。」小さく呟く。
「もしかして、俺たちの事を心配してる?大丈夫!俺たちは自分で自分の身は護れるさ。」バーンは事もなげに言う。
「ダメです。あなた達は私の追手を舐めています。おそらく追手として派遣されるのはマスタークラスの中でも最強の戦士が送り込まれるので逆らったら殺されます。」
「でも、バレなければいいんでしょ?」
「でも、バレたら国ごとただでは済まないと思います。誰が来るかも予想できるので、、、彼が来たらただではすみません。」
「もう、そこまで話したのなら喋ってしまった方が良いですよ。」かなりバレてるのに隠そうとするルナが微笑ましくて笑ってしまうレオン。
「だって殿下達がしつこく聞いて来るからぁ・・・分かりましたっ!お話します。」
すこし頬を膨らませて怒った顔をするが、そこがまた愛らしいのだ。彼女の全てが彼らを惹きつけて離さないのだ。
「私はルーナ・メルル・カルバリオン・ド・アンブロシア・・・アンブロシアの第一皇女です。」
「王族だとは思ってたけど、まさか第一王位継承者だったとは・・・」
「でもどうして国を出てきたんだ?」
「私はずっと女王になるため頑張って来た。でも結局は誰もが私ではなく、双子の妹セイラを愛した。ずっと頑張って来た私ではなくセイラを評価したんです。どうでもよくなっちゃった。」
「信じられないなぁ、ルナを差し置いても愛される皇女って想像できない・・・魅了のスキルでも持ってるとか?」バーンは少し冗談混じりでルナをフォローする。
「もともと、女王候補として威厳を保たないといけなかったから、周囲には厳しかったんだ。きっと可愛くは無かったんだと思う。」
「うーん、可愛いから女王ってことも無いだろう?」
「だから、それだけじゃないの!妹は私より先に一次覚醒しちゃったから、魔力素養は妹の方が上なの。魔法大国のトップは最強の魔導師である必要があるの。」
「覚醒した魔導師なんて見たことも無いから別次元の話しですね。」アンブロシアでは一般的な『覚醒』と言う爆発的急成長は、他の国ではほとんど経験する事は無いのだ。
だから今まで女王候補として努力してきた私と覚醒した妹と、どちらが上かをかけて戦った後、国を出て来たの。結果はどうでもよかった。私はもう自由になりたかったの。」
「それで、どっちが勝ったの」
「かたちの上では私が勝ったんだけど、、、本当は私の負け。殺す気があれば私が死んでた。」
「おいおい、恐ろしい妹さんだね。」
「でも、自由になる為に国をでてきたならそうすればいいさ。俺たちが力になってやるよ。」
「・・・そのまま私を放っておいてくれれば良いのですが、見つかったら連れ戻されてしまうかもしれない。」
「でもおかしいですね。魔法大国の魔法探知なら転移魔法の痕跡を追跡されたらすぐに居場所はバレるでしょう?」
「ええ、だから苦労しました。ここに来るまで何十箇所も転移を繰り返して痕跡をばら撒いてきたんです・・・痕跡がある全ての街に私が居る可能性がある訳だから、全部の街を探し尽くすのには彼でも時間がかかるはずです。」
「彼って・・・誰だい?」
「恐らく、今も血眼で私を探しているはずの追跡者は私の許嫁だよ。」
「許嫁が居たのか。」
「うん、でも仲は良いとは言えなかったかな。寧ろ冷たかったかなぁ」
「強いのか?」
「とても強い・・・過去にあった伝説の聖戦で神の率いる軍勢を一人で撤退させたと言う話が残っているの。」
「シーベル・シエラス・ラーゼクロウ・・・大賢者にして剣帝の称号を持つアンブロシアでも5本指に入る戦士よ。」
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