Episode6 未来から来た少女
あの事件の後、ほのかは恵理に今まであったことを全て話した。
恵理はほのかの話を最後まで静かに聴くいていた。
話を終えると、ほのかは静かに呟いた。
「怒らないの?」
「そりゃぁ、私にも言えないことがあるのかと思って、少し引っかかったけど、何か事情があるんだろうと思った。それに、ほのかに何かあった時は私が守ってみせる。」
恵理もまたほのかが意識を失っている時にあった出来事を話した。
ほのかがその話を聞いて驚きを示したあと、2人は顔を見合わせて笑いあった。
「もう結構遅いね。」
「そろそろ帰ろっか。」
夕焼けが美しく輝く空の中2人は家に向かって途中まで一緒にゆっくりと足を運んだ。
そんなことがあった後も、2人の関係は変わらなかった。
いや、2人しか知らない秘密を共有できたことで寧ろ以前にもまして関係性が深まっていった。
それから2週間後。
「おっはよう、恵理ちゃん!」
「ほのか、おはよう。相変わらず朝からテンション高いね。」
「えへへ。恵理ちゃんもいつも通り可愛いよ!」
恵理が顔を赤らめる。
恵理の家はそこまで経済的に恵まれておらず、あまり無駄なことにお金を使えなかった。
よって、普段着もあまり洒落た物を着ることができない。
強いて言えば学校の制服くらいだ...
だから、2週間前、魔法少女に変身して女の子らしい恰好ができた時、凄く嬉しかったんだ...
でも、それよりも嬉しいのはほのかに褒めてもらえる時。
大切な人から褒められるのって、何だか凄くあったかい気持ちになる。
「ほのか、最近1組に転校してきた子のこと知ってる?」
「うん、知ってるよ。確か白石...」
「白石梨乃!」
「そうそう、それだ!」
白石梨乃がほのかたちの学校に転校してきたのはごく最近のことだった。
美人で鼻が高く、整った顔立ちをしていた彼女は天候初日にクラスメートの目を引いた。
更に、優しい性格でスポーツ、音楽、勉強に至るまですべてが万能。
まさに「優等生」という言葉を体現するような存在だ。
よって彼女の名前が学年に知れ渡るのは早かった。
「凄いよねぇ。美人なだけじゃなくて、勉強もできる上に運動も音楽も完璧だなんて。格好良い!私もああいう風に慣れたらなぁ!」
「ほのちゃんは今のままで良いんだよ。すべて完璧じゃなくても人の気持ちを想える優しい今のほのちゃんが私は好き。」
ほのかは一瞬立ち止まって恵理の顔を見上げた。
「ありがとう、恵理ちゃん!」
白石梨乃がこの世界に来たのは約1週間前のこと。
彼女は気が良く聞き、頭が良くて活発な子どもであり、若くから将来を期待されていた。
ファンタジーの世界では時期王女の候補ともいわれ、順調な人生を送るかと思われた。
だが、運命が彼女の行く手を阻んだ。
人間の想像力が徐々に失われファンタジーの世界の住人が徐々に消えていっても幸い彼女は最後まで生き残った。
だが、遠い未来の彼方で彼女は人生の中で初めての挫折を経験することになる。
デストロイアとの決戦の敗北...
ファンタジーの世界の中でも少数の選ばれた存在である彼女でも、デストロイアには手も足も出なかった...
デストロイアは言った。
「ファンタジーの世界の時期王女候補の力はこの程度か。大した事ねぇな。これで世界は俺のものだ。」
「待って。」、梨乃が涙ながらに訴えたとき、彼女の心を守っている精霊、ミラクルスピリットがでてきて言った。
「もう手段は選んでいられない、梨乃、過去に行くよ!」
「でも...」
「ほら、早く!」
デストロイアが「させるか!」と叫んで空中から紫色の光線を発射する。
その攻撃により時空を移動している最中にとてつもない衝撃が走ったが2人は無事に過去へと辿り着いた。
もしそこに人がいれば空中から降ってきた2人を見て驚いたことだろう。
「イタタタ... ミラク、大丈夫?」
ミラクというのは梨乃が付けた名だ。
ミラクルスピリッツ、略してミラク。
「うん。大丈夫!そんなことより早くデストロイアを見つけなくちゃ。」
「うん。」、梨乃は大きく頷いた。
デストロイアに負けるまで梨乃は敗北を味わったことがなかった。
常に優等生街道をひたすら走ってきたからだ。
だから、知らなかった。
負けるって、こんなにも惨めなことなんだって...
でも、ここで挫けていたらデストロイアから世界を守ることなんてできない。
今、私にできることを精一杯やろう、そう心に誓った。
これが、梨乃とミラクが未来からこの世界の過去にやってきた経緯であった..