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夢物語~sin of happiness  作者: finalphase
第4章 儚き不幸
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Episode31 叶わぬ恋

平林莉子が二階堂翔也に告白したのはあれから3日後のことだ。




翔也はサッカー部のエース的存在であるクラスの人気者だ。




顔も良いし、勉強もそこそこできる。




2人きりの教室の放課後、勇気をもって彼女は彼に想いを告げた。




冬の冷たい風が吹き抜ける夕方の教室の中、莉子は1人で泣いていた。




告白は、あっさりと断られた。




届かぬ恋だってわかってた。




高望みだってわかってた。




なのに、どうしてこんなに悲しいんだろう。




物音がする。教室のドアが開く。




焦る。誰か来る。




振り向くと同じクラスの岡本雄一がそこに立っていた。




「大丈夫?」




心配したのか声を掛けてくる。はっきり言って、ありがた迷惑だ。




「あ、あんた何かに心配されなくても大丈夫よ」




弱みを見せまいと慌てて涙を拭う。




目の前の雄一という男はクラスの中でも特にパッとしない存在だ。




運動神経も普通、学力も普通、とりわけイケメンでもない。




でも、今は話を聞いてくれる存在がいるだけで嬉しい。




莉子は半ば無意識のうちに今日あったことを雄一に話し始めた。




雄一は黙って話を聞いてくれたいた。




自分の胸の想いを一通り吐き出すと、彼女の気分は安らいだ。




非常に痛快な気分で、彼女は自身の最期を覚悟していた。




手鏡を取り出して見つめる。




鏡の中には認知症の母親とそれを看病する息子の姿がある。




「不幸を奪うのはこれで最後にしよう」、そう思って鏡に向かって念じる。




けれど、何故だか、不幸は奪えない。




鏡の故障を疑った彼女は自分自身で認知症の母親の心の中に侵入してみる。




「その悲しみ、莉子が奪ったげるわ。」




やはり何も起こらない。




何回も試してみる。




焦る。やはり何も起こらないのだ。




そうこうしているうちに幸福の戦士たちが駆けつけてきてしまった。




「全員揃えば、あんたなんて敵じゃないわよ。」と梨乃。




ほのかは平林莉子という女の瞳が気になった。




半ば潤んでいるように見えたから。




それに、まだ不幸も奪っていないみたいだし。




莉子は黙って呟いた。




「一ノ瀬海翔、あんたは好きな人とかいないの?」




「はぁ?」




海翔は一瞬意味が分からないという顔をしたが、少し考えてから言った。




「いることにいるが、おめぇに向かって言ってどうするってんだ。」




そう言ってほのかの方にほんの少し、ほんの少しだけ視線を向ける。




この彼の微妙な動作には白石梨乃1人以外気付かなかったようである。




「ふぅん。海翔の好きな人って、そうなんだ。」




梨乃は心の中で意地悪く笑う。




「まぁとにかくだ、おめぇと会うのはこれで最後だ。」




そう言う海翔を莉子が手で制した。




手鏡から包丁を取り出す。




皆が警戒する。




それを自分の方向に向ける。




それを阻止しようとほのかが走るが、間に合わない。




彼女は包丁を自分の胸に深く、深く、突き刺した。




そして手鏡と共に消え去る。




「ちょっと、待ってよ!」とほのか。




その日の夜、ニュースが流れた。




「本日午後6時半頃、月夜市の自宅にて、月夜女子高校の1年生が胸部に包丁を刺し、病院に緊急搬送されましたが、亡くなりました。警察は現場の状況などから、自殺の可能性が高いとみて、捜査を進めています。」




ほのかはテレビを見つめながら絶句する。




ついふと声を漏らす。




「何で、どうしてこんな...」

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