Episode16 新たな刺客
月島伊吹はアミュレッタスクを初めて使用した、この前の闘いのことを思い出していた。
あれから、特別なことは何も起こっていない。
だが、心の中には常に不安が渦巻いている。
何しろあの力を使う度に、大事な何かを失うことになるのだ...
それが何かが分からないから余計に、これから何かを失うことが怖い。
しかも、人々の心の中から不幸を奪う度に、自分が怪物を生み出していたなんて...
伊吹は確かに幸福になりたいと願ってはいるが、それの目標を他人の不幸を奪ってまで達成しようとは思わない。
伊吹は、いつも良く行く近くの公園のベンチに腰掛けて思いを巡らせていた。
その時、ふと後ろから声を掛けられた。
「あの、もしかして、バカ、あほ、ブス、月島、月島伊吹さん?」
「そうだが? 何か用か?」
「あの、そろそろ、俺に、バカ、バカ、ブス... 不幸を奪う出番を譲ってもらいたい...」
「何というか。訳ありっぽいな。良いよ、譲ってやんよ、俺はこれ以上他人から不幸を奪う気はねぇしな。」
「あ、バカ、ブス、死ね、ありが、とう・・・」
丁度高校生くらいの青年はお礼を言うと伊吹に背中を向けて去っていった。
その時、両手で包める紙状の壺のようなものに口を当てて何かを叫んでいたことが伊吹にとっては印象的だった。
実はこの青年、もとい上条たくとの元にデストロイアが訪れたのは丁度1か月ほど前のことなのだ。
青年には深刻な悩みを抱えていた。
トゥレット症候群・・・それは、音声チックを伴い、複数の運動チックが、1年以上継続する、精神神経疾患のことである。
音声チックは咳払いや奇声など、運動チックは瞬きや顔をしかめる動作などが、本人の意思に反して起こってしまう症状のことを言う。
音声チックが酷くなると、汚言症などにもつながる。
この音声チックによって発生してしまう自分の大声を外で緩和するため、彼は「叫びの壺」というものを持ち歩いていた。
これがなければ外には出れない。つまり、それは彼にとって大切な、いつも持ち歩いている必需品なのだ。
デストロイアは彼のもとに訪れ、「俺がお前を幸せにしてやるから、人々の不幸を取り除く仕事をしないか?」とそそのかしたのだ。
伊吹が自分の手で不幸の残骸を作り出していると知った時、彼女が人々から不幸を奪うのをやめるだろうと想定していたデストロイアは、伊吹が事実に気づき次第、上条たくとに役目を変わるよう働きかけていたという訳だ。
伊吹が人の不幸を集めるのをやめようと思った瞬間、デストロイアから貰っていたセンサーが反応してたくとの足をここまで運ばせたのだ。
たくとは頭の中で世界中の人の心の中をイメージし、その1つに目を付けた。
「その不幸、バカ、ブス、死ね、俺が、奪ってやる。」
初回なのでまだお試しの段階だという気持ちもあり、彼は軽い不幸を選んだ。
「デストロイアの手先が現れた。」
セイちゃんがほのかに言う。
恵理と湊音も心の異変を察知した。
3人が心の中に入り込む。
「みんな、行くよ!」
「マジカルトランスフォーマー!」
「スタイルチェンジ!」
ほのかの掛け声により、3人が同時に変身する。
「あぁ。ブス、ブス、バカ、あ、あれが、デューグリュックか。」
「また新しいデストロイアの手先?」
「そのようね。」
「速く不幸の残骸と蹴りをつけましょう!」
「マジカルソードブレイク!」
「マジカルツインレインボー!」
3人の必殺技によって不幸の残骸は案外あっさりと姿を消した。
「ブス、バカ、デュ、デューグリュック... 今日のところはこれくらいにしておこう。」
「誰がブスよ!」
ほのかたちの反応も気にせずデストロイア新たな手先は姿を消した。
その頃、過去の世界にて、デストロイア、イデア、ミラクの3人は求めている物に近づきつつあった。
3人ともそれぞれ別の場所でそれらしい花を見つけたのだ。
しかし、良く似た花が近くに並んで咲いている。
がくが上向きの花と下向きの花...
どちらか一方がフォーアッシュフラワーで、もう一方がフーリッシュフラワーである。
しかし、今のところそれを見分ける手掛かりはなく、3人はそれを模索中なのであった。




