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夢物語~sin of happiness  作者: finalphase
第2章 不幸な側面
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Episode12 現代社会の病

望月湊音は、近所の図書館で蔵書検索をしていた。




発達障害、注意欠陥多動性障害、アスペルガー症候群など、彼の知りたいワードを次々に検索する。




自分のパソコンやスマートフォンがあればそのようなことに関する論文を検索できたかもしれないが、彼はまだそれらの物を持っていない。




また、それほど博識ではない彼にとってはそれらの論文を読んで理解することは難しいだろう。




よって、結果的に、湊音が自身の知りたいことを図書館で探しているのは、最善手だと言えそうだ。




湊音がその障害を抱えているのが発覚したのはちょうど去年の夏頃だった。




日頃から忘れ物が多く、授業にも集中できず、人間関係も全く上手く行かない。




これが湊音のメンタルに支障をきたし、結果的に自殺未遂にまで至った。




幸い、命に別状はなく、後遺症も残らなかったが、この状態は流石にまずいと思い、両親と相談した結果、心療内科を受診した。




結果として注意欠陥多動性障害と自閉スペクトラム症を併発していることが明らかになった。




世間一般では、ADHDやASDなどとして知られる発達障害の1種である。




湊音がこの障害が厄介だと思う点は、何といっても複数の症状が併発していることが多いというところである。




例えば、注意欠陥多動性障害は代表的な症状として不注意と多動性が挙げられる。




また、自閉スペクトラム症の主な症状としては「人間関係が苦手」、「こだわりが極端に強い」ことなどが挙げられる。




どちらか一方を持っているだけなら、周囲の人間も症状を理解しやすく、早期発見も可能である。




しかし、これら2つの障害が併発していると問題がなかなか表面化しにくく、両者の異なる特性によって自己矛盾が起こることもしばしばある。




「落ち着きがない」という特性と「部屋は常に綺麗でなければならない」というこだわりが併存する場合、「部屋が散らかっているのは大嫌いだけれど片付けは苦手」という人間ができあがるというように...




これらの症状に学習障害や発達性強調運動障害が重なってくると問題はさらに複雑化する。




ただ、湊音の症状としては注意欠陥多動性障害が優勢なので今は薬を飲んで定期的に通院するようにして治療に努めている。




この症状は現代社会においては、不利に働くことが多い、というのが湊音の体感である。




注意欠陥多動性障害は、人類が狩猟民族だった時には有利に働いたのではないか、という説がある。




なるほど、確かに、そう考えることもできるかもしれないが、現代社会において狩猟民族として優秀であることは全く意味をなさない。




時代が違えば、求められる能力も違うのだ。




その頃、月島伊吹は公園のベンチに座ってゲームをしている男の子を見つめていた。




自分が小学生だった頃は公園まで来てゲームをすることなどなかった。




「時代が変わったんだな。」、そう心の中で思いながら、目の前の少年の心の中に入り込む。




「君の不幸、俺、いや、私が奪ってあげる。」




少年の不幸を奪ったがそれは大した量ではなかった。




実はこの少年、家でダラダラ寝ていると母親に「早く宿題をやりなさい。」と言われて不貞腐れてこの公園に来ていたのだ。




望月湊音はいち早く少年の心の異変に気付き、そこに入り込んだ。




注意欠陥多動性障害には発想力が豊かで落ち着きがないという特性がある。




この特性は、少なくとも、人類の心の異変に気付くには少し有利に働いた。




「スタイルチェンジ!」




湊音はデューグリュックに変身すると不幸の残骸に向かって剣を振りかざした。




いつもより何倍も小さかった不幸の残骸はたちまち光となって消え去った。




少し遅れて南瀬ほのかも少年の心の中に入ってきた。




中を見て状況を飲み込むと、「あはは、遅かったか。湊音君、仕事速いね!」




そう言って、ウィンクをすると外の世界に出ていった。




湊音はほのかが出ていくのは見つめながら、ふと将来のことに思いをはせた。




「俺はこれからどう生きていけばいいんだろう...」

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